反応度係数

(ある原発心配論者に)
論点はもんじゅのボイド反応度係数が正なら暴走可かということでした。多分あなたは答を知っていらっしゃると思います。私の文がボイド反応度係数正イコール暴走可能性大と言う風に取れるようでしたら、出力係数正イコール暴走可能性大と言う意味であると訂正して下さい。高速増殖炉ではナトリウムボイド反応度係数がある条件で正である事はご指摘の通りです。しかし出力係数は負で殆どPWRなみですね。ナトリウムの沸点よりはるかに低い温度で操業されます。だからボイドの意味が軽水炉などとは比較にならぬほど軽い。
安全について更に科学的な指標は確率的リスクアナリシスの結果である事もご承知なのでしょう。私がチェルノブイリの話で引用した桜井さんは安全解析の専門家で、開発慎重派の立場で発言している方です。旧ソ連型原発とわが国の原発とを、安全上同一に論ずる事は出来ないと言う私の話の根拠は、むしろ氏の話の炉心溶融確率にあります。この技術は高度の専門知識とデータを必要とし、巨大システム対象であるため、大勢の専門家が組織的に十分に時間を掛けて実施して始めて結果に信憑性が出る。私は真似事程度ながらある核プロセスの安全解析を手がけた事がありますが、全く退屈で辛抱辛抱の作業でした。技術者たちのこの労苦の結果をあなたは信じますか。ところでわが「もんじゅ」の安全解析はどうなっていましたっけ。
あなたの年末の発信で、あなたが原発県にお住まいである事を知りました。実は私もその通りで、もしもチェルノブイリ・ライクの事故があれば、風向きによってはただ事では済まぬ位置におります。お宅もそうでしょうが、弊県でも風光明美だが過疎な地帯を開いて原発を設置しています。
その風光明美なんですが、背景を作る松林が、全域かどうかは分かりませんが少なくともよく行く公園では、ここ二三年の間に急に弱り出しました。枯れ方を観察するとマツクイムシとか何とかセンチュウとかだけが原因とは思えない節がある。松葉を房毎にみると、雨が滴り落ちる方向の最後部あたりから枯れ出すように見える。私は植物学とは全く無縁のものなので、これ以上は下司のカングリの類だけれど、もう一つの原因として直接思い当たるのは中国、朝鮮半島からやってくる酸性雨である。特に中国からは石炭発電等からのSOxが急増している。酸性雨が、あるしきい値を通り越すと山々は立ち枯れ林になるとか。私の松林の観察はその前兆かも知れない。
私は海岸地帯に住んでいます。年々の温暖化は、科学的にも捕捉されるようになりました。その原因がCO2であることももう疑いのない事実なんでしょう。北極海の氷、南極洋の氷、それから世界の屋根屋根に頂く万年雪が本式に溶け出したら、海面は何メートル上がるのでしたか。海底に沈んだ町や村の遺跡を発掘するお話はまことにロマンチックなんですが、私も私の子孫も後世の発掘を夢見て海底に住む気は全然ありません。
これまでのこのフォーラムでの議論ではあまり出なかったようなので、上記二つを話題に提供いたします。どちらも世界的視野での電力原発化推進で軽減できます。私の開発論の真情は、案外こんな所からきているのかも知れませんね。
電力会社によって違うそうですが、平均してわが国は30%の電力を原発に負っています。四電などは50%近いそうです。この50%を「原発危ない」説を理由に取り壊したら、四国はどうなるんでしょうか。民主的プロセスで原発事業路線を決意し実施してきたはずである。もう後戻りが出来ないところまできている。放射能漏れで人畜が被害を受けた事はないではないか。もうそろそろ原子炉格納容器内事故とそれ以外を区別しようではないか。これだけ実績のできた原発である。原子力は人の英知で制御できると信じて行動しよう。人口増加と生活水準向上で、もうすぐ世界的な食料取り合い合戦が始まる。これにはエネルギー問題以上にわが国は不利な立場である。せめて今の内にプルトニウム・サイクルを完成させて、子孫に食料とエネルギーの二重苦を味わせないようにしたい。これも私の真情だろうと思います。論点の一つにつけ加えましょう。
「破れたらまた貼れ(原発は障子じゃないのヤジあり)」

('96/01/15)