インフラ整備

瀬戸内では今でも海岸線の埋立を進めている地方がある。企業が自力で埋め立てた地区を除けば新しい埋立で生まれた土地の利用率はごく低い。その中でも目立つ存在だった東予の埋め立て地に特殊鋼を作る会社の工場建設が決まった。製鉄会社としては小さいが、特殊鋼メーカーとしては有数の会社である。起工式には市長はもちろん知事まで出席して挨拶に立った。
愛媛県としては何十年ぶりかの大型誘致だそうである。と言っても高々400億円ぐらいの工場である。オートメの進んだこの工場では雇用に期待は出来ない。さしあたりやってくるのは数十人だそうである。それでも広大な土地を遊ばせていた地元の期待は知事市長の列席という形で現れたのであろう。地元では派遣される社員の宿舎が隣の町に決まるのではないかとやきもきしていると言う噂である。隣は昔からの町で公立の進学校があるが、その町ではせいぜい農学校しかない。あれやこれやで住むためのインフラは自分でも隣町が勝ると決めている。
財政健全化元年と云って中央政府は公共事業費の削減ムード作りに躍起である。確かにここ数年の景気浮上対策としての公共事業は史上かって無い規模であったにも関わらず効果は知っての通りである。赤字のタレ流しで次世代以降に重荷を担わせる結果になっている。しかし我が地方では公共事業は定常業務として取り込まれている。スーパーにレストラン、農地を潰しては背の低いアパートと言った事業は次々生まれてくるが、オリジナリティー豊かな、そこしかない産業は一つも育たない。救世主は国家予算しかないのである。こんなになった理由はさまざまだろうが、教育者からみれば、明治維新以来流出する一方であった人材がついに本県では枯渇したのが最大の原因である。大江健三郎をはじめ幾多の人が東京で名を挙げたけれどもついに誰も帰ってこなかった。村に行くと出身有名人の記念物があちこちに見あたる。
今県では第二第三国土軸論争が華やかに行われている。県の縦に中国四国を貫く高速道を、横に九州から三重に延びる高速道を作れと云う。もちろん国費でである。高速道を段段畑用の小型トラクターをじいちゃんが運転して通る図を想像してしまう。民が望んだ国土軸は中国道までであろう。それでも私は笑えない。カンフル剤なしには生きながら得ぬ状態まできたことを肌で知っているからである。

('97/02/24)