二月要約U

先月末のNHKクローズアップ現代「ヨーロッパからの“新しい風”【4】教育で国の未来を切り開け」の中で、フィンランドの教育を取り上げていた。フィンランドは、OECD(経済協力開発機構)のPISA(学習到達度調査)で"学力世界一"と評されるようになった。考える力の養成に効果を上げている。教員が社会的に尊敬される職業で、その職に就くには、まず10人に1人という入学試験を突破し、大学院にはいるためにさらに篩に掛けられ、実習でも厳しい評価を受けねばならないという。私は、明治初期から中期にかけて初等教育を受けた祖父の言葉を思い出す。祖父の育った丹波の山奥の村で、もっとも尊敬されたのは公立小学校の先生と駐在であったと。国谷キャスターの教育相インタビューで記憶に残った言葉は、判断を教育現場に任せるという姿勢であった。2/3のNHKニュースによると、大学生の6割以上が日に1時間以下しか勉強せず、授業に興味がないと答えたという。わが国に将来があるか。
2/15文科省は小中の新学習指導要領案を発表した。主要教科で授業時間を約1割増やす。円周率が3から我々と同じ3.14に復活する。ゆとり教育が日本の相対的な教育水準を低下させ、国内に学力の学校格差を生み、私立志向の流れを加速した(2/16毎日)。無資源国は頭脳立国が唯一の先進国として生き残る道であることを、ゆとり教育主義者は忘れていた。
教育ほどものを云いやすい対象はない。誰もが一家言を持つ。教育者が「対抗」することはまずないから、彼等ほど安心して叩ける相手はいない。クレーマーの叩きが半暴力化して先生を自殺に追い込んだ例すらある。2/29にまたも新任女性教師の自殺の報道があった。親のクレームが原因と思われる。私立志向の理由のもう一つの理由は、この手の衆愚環境からの離脱である。教育者が衆愚に対抗して良心を守れる体制を、放学退学という形で私立学校は持っている。学力世界一を取り戻すには「考える力」の教育技術などは末端の戦術の問題で、一番の戦略は先生に対するやたらな干渉を無くし、先生の自主独立の判断分野を広げ、終局的にはもっとも尊敬される職業とすることだ。ホテルが日教組大会の契約を一方的に破棄し、高裁命令にも関わらず他者に会場を貸すという暴挙を平然とやってのけた。読売は司法無視を非難した。私は国家100年の計にもとる行為とその社長に申したい。教育再生会議が幕を閉じた。読売社説にフォローアップ検証が必要だと書かれていた。前首相の遺産だと今の首相がお茶を濁すようでは衆愚環境を助長になる。神奈川県教育委員会が県立高校の日本史必修化を決めた。今まで必修でなかったのかと少々驚く。国史は民族の認識であり愛国心の基本だ。必修としない国が他にあるのなら教えて欲しいと思った。
2/5 NHKクローズアップ現代で「ソフトウエア危機〜誤作動相次ぐハイテク製品〜」を見せた。東京周辺のJR、私鉄改札口が閉鎖になったまま開かない事故は記憶に残っている。結局フリーパスにしてラッシュ時の混乱を防いだが、各社はかなりの損害を出したはずだ。コンピュータ・プログラムの1行に書き忘れがあったためである。88万行に及ぶ膨大なプログラムだそうで、バグの発見修正は容易でなかった。私が現役時代に作ったプログラムは最大で何千行のものだった。それでもトラブルが起こると大変であった。プログラムはバグを発見する方が作るよりずっと難しい。自動車は700万行のプログラムを載せているという。日本では今システム・エンジニアが約1万人不足していて、医療機関同様に、キーマンは過労に次ぐ過労を強いられているという。だが、医師不足、エンジニア不足の声は今に始まったことではない。なぜかその対策となると、マスコミは口をつぐんで語ろうとしない。不足は職業に魅力が薄いためで、濃くするには待遇改善しかない、それが社会の土台を揺るがす忌避すべきテーマになるからであろう。2/18国交省東京航空交通管制部のコンピューターの管制システムがダウンし、全国の空路に影響が出た。2/25信金データシステムがトラブルを起こし、決済システムが丸一日停止した。プログラムのバグによる。バックアップシステムも同じプログラム故役に立たなかった。
2/10、11のNHK SPは最近のリハビリ医学と脳科学の進歩を取り上げていた。適切にリハビリを行えば脳梗塞・脳溢血で機能を失った中枢に代わり、新しい神経系が延びて他の脳中枢が代替え業務を担当する。脳の柔軟性に驚かされた。
2/16東芝はHD DVDからの撤退を表明した。高画質DVDはソニー〜松下が押すBDに統一されることになった。東芝の敗因はアメリカ市場で劣勢になったためという。我が国ではすでにBDが圧勝している。HD DVDの記憶容量が15G程度であるのに対し、BDは25Gと大きい。双方に互換性はない。
万能細胞の研究拠点にはすでに基礎研究を担う京大iPS細胞研究センターがあるが、新たに臨床への拠点として京大阪大共同のiPS細胞研究統合推進拠点が作られる。山中教授はゴッホ賞に輝いた。2/28には東大、慶大、理化学研究所にも拠点を作ると文科省が発表した。そして予算配分権を文科省に留めておくという構想らしい。
2/8と2/9のNHKハイビジョンで、再放送のBS特集「世界から見たニッポン〜明治編〜」'05を見た。幕末に結ばれた不平等条約の対米欧改正交渉の顛末である。いかに西洋文明を取り入れようとも、日清戦役に日本が勝利するまでは、アメリカはガンとして不平等条約を改めようとせず、ビスマルクの「外交は力なり」を骨身に浸みるまで悟らせる結果となった。第2回の「アジアの希望と失望」では、日ロ戦役の勝利に清国民は驚喜し、それがなければ清は欧米諸国による分割の憂き目を見たという新聞社説が出たという。清国留学生は戦勝後8000人に急増。清国政府は光緒帝指導の下に日本に見習う方向を打ち出したが、保守的な皇太后勢力に押されて後退、結局国自体が孫文の革命に倒される。留学生資料は、日本がいかに植民地となった、あるいは植民地化しつつあるアジア諸国にとって希望の星であったかを物語る。
しかし日本は白人諸国と共同行動を取った。彼らのアジアにおける既得権を尊重する代わりに日本の朝鮮に対する権益を守らせ、あわよくば清国内にさらに利権を獲得しようとしたのである。ロシアに勝ったと言っても国力は使い切っており、もう一回先進の強国と戦う力など無かった当時を振り返れば、当然すぎるほど当然な姿勢だと思うが、清国やベトナムの留学生から見るとそれがアジアに対する裏切りと見えた。孫文を支援した日本人もいたし、ベトナムの留学生と会合を持った政府高官もいた。日本政府高官も、白人諸国の、非キリスト教国への仁義なき帝国主義的侵略意図を危機感を持って受け止めている。自分たちの現状脱皮の悲願を、日本人の負担で達成するなどおおよそ夢物語であったのだと言える。やがて彼らは、他力本願から自力本願に移る。
読売に北京、ソウルと東京の環状道路の比較が出ていた。東京の外環状線が未だ40%程なのに、前者ではほとんど全線が開通しているという。特に北京は何重にも環状線が都心を取り囲む構成になっていて、高い経済効果が期待できる。我が国はこの両国よりもはるかに早く計画を立ち上げたのにもかかわらず、いっこうに進捗を見ない。暫定ガソリン税をもっとも経済効果の大きい、また支払い人数が圧倒的な大都市に使用せずに、地方振興という名目でのばらまきに終始している。2/15の毎日にはこの税から国交省のPRミュージカルなどに5億円を出費したことが報じられ、また先日の新聞には省の官舎関係にも使用していたと記載された。暫定の目的税を続ける必要はもう何もないと思う。私は北海道や東北の旅先で、5分に1台も自動車が走らない高速道路を見ている。世界に類のない大赤字財政国家だ(2/27読売に「独、財政均衡達成」の記事、なぜ我が国では出来ないのか)。近未来に国家経済上確実に役立つ道路以外は、計画を白紙あるいは棚上げする必要がある。2/22夜のテレ朝報道ステーションで、300億円の予算で始まり、520億円使ったところで中断した北海道の道路建設を取り上げていた。完成にはさらに900億円を必要とする。札幌と直結しないこんな道路が完成しても、何の経済効果があるか素人が見ても一目瞭然だ。地方の大合唱にもかかわらず、本当は経済効果を伴う道路は建設し尽くし、もはや国家としては計画できないのではないか。
2/19の読売に世論調査の結果として、内閣不支持51%、支持39%、ガソリン暫定税率上乗せ延期反対が62%賛成が29%と出ていた。国民は25円/lの暫定税を、不要不急の田舎道路建設に使われるぐらいなら、消費に回して景気を支えたいと思っている。至って常識的で健全な発想だと思う。国会における冬柴国交相(公明党)の硬直な14000km発言は、国民を警戒させてしまった。もっとフレキシブルに、たとえば2/19読売トップの、「京都奈良大地震で国宝110件被災の恐れ」の対策費にも使えるようにしたいというような発言があれば、悪評はまだ和らいだであろう。

('08/02/29)