秋の七草
- この春に春の七草を探した。仏の座(コオニタビラコ)だけはついに見付からなかった。オニタビラコは割に多かった。繁縷(ハコベ)は川村記念美術館の庭でやっと見付かった。よく似たオランダ耳菜草は繁茂していた。秋も深まった。七草探しにけりを付けよう。萩(ハギ)、薄(ススキ)、桔梗(キキョウ)、撫子(ナデシコ)、葛(クズ)、藤袴(フジバカマ)、女郎花(オミナエシ)が秋の七草である。
- 私が毎年楽しんでいる公園のハギは多分木本のヤマハギで、草本のハギではない。厳密には七「草」だから、草本のハギ属植物を見つけないと、ハギを見たことにならないが、それは果たせなかった。ススキは海辺の埋立空き地に10月初旬から目立ち始めた。クズは生命力旺盛で、あらゆる場所で樹木や草に絡みついている。だが花は見かけない。蔓から再生できるからだ。中旬に入って、いつもでない散歩コースでやっと藤色の花を見つけた。同じマメ科だからか、フジの花房を小型にしたような愛らしい姿である。あとのキキョウ、ナデシコ、フジバカマ、オミナエシにはついにお目にかからなかった。キキョウ、ナデシコはたまに鉢植えで売っていたり、他家のお庭の花壇でお目にかかるときが過去にはあった。だから本気で探したのはフジバカマとオミナエシであった。
- 公園の一ヶ所にたくさんコブシの赤い実が食い散らかしたような姿で落ちている。カラスがつついているのだった。秋は実りのシーズンだ。マテバシイを初めとするドングリの木は大量の子孫を樹下にばらまいている。マテバシイは雌雄同株だが、ドングリの生産量が木によってまちまちで、どうやら団地のようにあまり撒き散らかされると掃除が大変な場所には、いたって生産量の少ない種類が植わっているようだ。散歩道のそれは何十本もある。だがドングリを当たり前に付けているのはたったの1本だった。垣根のサンゴジュの赤い実はもう萎びてきた。目立ち出したのはタチバナモドキの橙から赤い実である。ハナミズキの赤い小さな実。美術館前のモチノキの実はまだ目立たない。バス停横のクロガネモチは大量の実を黄色にした。その内に赤く染まり、来年の夏の終わりまで心を和ませてくれることとなろう。こちらは雌雄異株である。モッコクやネズミモチ、トウネズミモチはまだ青いままのようだった。
- キンモクセイが一斉に強い香りを周囲に漂わせ始めた。秋祭りに合わせて咲く花だ。私の脳内では、この匂いと佐原の諏訪神社大祭がリンクされていて、この香りが廃業した醸造所の庭から眺めた山車とお囃子、手踊りを思い起こさせる。その庭にはキンモクセイの大樹が植わっていた。アベリアも相変わらず香っている。キョウチクトウと共に花期の長い灌木だ。セイタカアワダチソウが開花し始めた。公園では引き抜かれてしまうが、空き地では全くの自由競争で勢いを誇るようになる。どの草よりも背高になり一面を黄色く染めるともう秋は終わりである。いまはまだ月見草(マツヨイグサ)の方が目立っている。野菊の時期でもある。私の住まいの周辺では、ヨメナ(白色)、ノコンギク(薄い紺色)、シマカンギク(黄色)ぐらいまでは確かめられた。イヌタデは辛くないのでイヌ(当たり前の、役に立たないという意味)が頭に付く不名誉なタデ(「蓼食う虫も好き好き」のタデは辛くて日本古来のハーブ植物)らしいが、空き地にも手入れの行き届いた団地にも結構侵入している。それから昔懐かしいヒッツキムシ。これは俗称で、オオオナモミが正式名のようだ。もちろん目に入るようになったのは棘の多い青い実を付けだしたからである。ヤブランは植え込み、オシロイバナ、ツルボ、コスモスはさて野生なのか庭から逃げ出したものなのか。マンジュシャゲにニラ、タマスダレ。イノコズチの類。花壇で気に入っている花は千日紅、平凡だが日々草。
- 最近カヤツリグサを見た。独特のスタイルが好きだ。去年は見なかった。カヤツリグサと名の付く草は何種類かあるが、似たような姿なので特定はしにくい。枝豆狩りの大豆畑の畝の脇に多数見つけた。一度見つけると不思議なもので、簡単に散歩道の路傍の雑草群の中からでもその姿が目に入るようになった。枝豆狩りというのは、リンゴ一枝オーナー(青森や長野)とか葡萄農園オーナー(山梨、これは何年か後に葡萄酒として収穫できる)とか色々あるオーナー制の農業投資の一つである。イチゴ狩りとかミカン狩りとかナシ狩りとかのその場限りの買いものではない。畑の近所の米作り(コシヒカリと言った)農家のおばあさんは、もうここらの農業は年寄りだけの仕事になっていて、若者は町に働きに出ているという。大豆にするときは畑で天日乾燥してあとは機械で莢を分離できるが、枝豆として出荷するには我々と同じく手作業で収穫するらしい。なかなかの重労働だ。オーナー制で、株を引き抜くところからやって貰えれば、一石二鳥なのだ。
- 春もそこそこにあったが、秋になると、イネ科の雑草がやけに目に入る。天高く馬肥ゆる秋というが、馬が秋に肥えるのは、一つは、この時期にイネ科の栄養の高い実を、ふんだんに食えるからではないかと想像する。五穀の内の四穀までがイネ科だから栄養の高さが判る。NHK「ためしてガッテン」に動物園が出てきた。草食動物が46時中食っているのは草の栄養価が概して低いためと云っていた。他でも聞いた話だ。さてイネ科の記憶を順不同で辿ろう。まずはセイバンモロコシ。背が高くて大型の赤茶けた穂を出すからよく目立つ。近年の帰化植物だ。ムギクサ。背が低いが名の通り麦そっくりで、秋の始めに見かける。散歩道は定期的に草刈りをするから、時期を外すと刈り取られて姿が見えなくなる。もう一度見ておきたかった草だ。これも帰化植物。イネ科ではないが、セイヨウヤマゴボウ(有毒?)という赤紫の茎、濃紺の実を付ける特徴ある帰化植物がある。草刈りで昨年から途絶えた一つだ。種を撒き散らす前に刈られたのであろう。スズメノヒエ、イヌビエ、タイヌビエ。シバ、オヒシバ、メヒシバ。カゼクサ。散歩道で見かける数で云うと、メヒシバ、スズメノヒエ、オヒシバの順だ。どれも背が低く頼りなげなのだが繁殖力は抜群である。これらとは別に一定の勢力を誇るのがエノコログサ、俗に言うネコジャラシの一群である。エノコログサ、オオエノコログサ、キンエノコログサぐらいは見分けられるが、もっともっと種類は多そうだ。
- 草本植物は苦手である。とにかく身近に咲き実を付ける野草だけでもしっかり同定しようと決心したが、まだまだ名の分からないあるいは確信が持てない草がたくさんある。交雑で生まれる雑種も数多いのであろう、ますますこちらを混乱させる。まだ図鑑に載らない外来種もあるだろう。知る努力は重ねるつもり。「身の回り(の知識)だけでよいから(注目のテーマについて)世界一になろう」は、中学校の先生によって植え付けられた私の金科玉条である。これからの野草もあろうが、七草についてはもう時節はずれだ。今後もまず見込みがない。区切りとしてこの文章を書いた。
('07/10/18)