千島〜カムチャッカ


朝にオットセイ(アザラシだったかも知れぬ)が見えるという放送で目が覚めた。今日は時差2時間の日である。カムチャッカではさらに2時間時計を進めることになる。飛行機に比べればたいした変化でないが、それでもこの2時間は体調に影響する。何か寝不足感が取れない。戻りはこの逆で日に2時間づつ遅れて行く。体調にはこちらの方がよい。世界一周の船旅は全部西回りだが理由が分かる。航海日2日目の朝の海水温度および気温は5度であった。大洋に出ると気温と水温が同じ場合が多い。そろそろ夜遅くまで空が白みがかって見える。
マッコウクジラが2頭潮を吹きながら泳遊するのを見た。ロシア語講座&ミニ講演で最小限のロシア語とエカテリーナ宮殿の琥珀の間の解説を聞く。寄港地紹介を聞く。治安は意外と良いようだが、便所は不潔で使い物にならないようだった。昔の外人の京都観光団を思い出す。彼ら特に女性は、水洗でない苔寺の雪隠を嫌ってホテルまで用を足しに戻ったという記事があった。我々もペトロパブロフスク・カムチャッキーでは尿意を催せば船までとって返しまた出掛けることとなりそうだ。尾籠な話で恐縮。市内では円は役に立たない。お守りのように1人3000円のルーブルを両替持参する。使わなくても再両替できない。いつか行った東欧の通貨みたいだ。4.8円/ルーブル。
パスポートを持ってシャトルバスで自由市場に行く。旅券審査所はプレハブで埠頭の売店と並んでいた。バスは韓国製の中古らしく方々にハングル文字が残っていた。乗用車、トラックは日本製の中古が多い。道路幅は広く、車の数は多い。15分ほどで目的地に到着。道路を隔てて百貨店がある。百貨店と言っても4Fの小さな建物で、中にはおみやげなど何も置いてない。自由市場は野菜や肉衣類など生活必需品を扱っている店ばかりだ。戦後の闇市を思い出させるが、あの殺気立った雰囲気はない。ロシアの物価はモスクワ以外は安いと聞かされていたが、値札換算ではそう安くはないように思う。顔立ちは白人系が圧倒的に多く原住民らしき姿は少なかった。1-2%ぐらいだろうか、東洋人らしい顔立ちの小柄な人たちが店を開いていた。彼らが現地系なのかもしれない。すぐに飽きて埠頭に戻る。道中の景色も港も美しいとは言えない。建物が実用一点張りでその外壁もあちこち傷んでいる。埠頭の売店で両替した6千円全部に不足分の日本円500を足して皆使ってしまった。ロシア人形に紙片を止めるためのマグネットであった。船のリセプションから孫に航空便を出す。10日かかるかも知れないし、1ヶ月かかるかもしれないと念を入れられた。ものによっては途中で消える可能性もあるらしい。
昼食は鰻重。土用丑の日が今日だったのかな。普段はダンス会場のホールで子供たちのロシア民族舞踊を見る。小さい子供たちは皆かわいい。途中子供が出てきて観客の大人の手を取り輪になって踊った。家内も偶然引き出されて何かまねごとをやっていた。寄港地交流プログラムだが、あの子たちはどうゆう性質の舞踏団なのだろうか。18時から45分間のロシアローカルショーを大ホール(ギャラクシーラウンジ)で見た。北方少数民族の民族舞踊らしい。説明がいまいち日本語になっていないので背景はよく分からなかった。動物の鳴き声とか鳥のさえずりの模写が随所に出てきて面白かった。踊りで物語を表現しているらしい。舞踊自体はロシア舞踊の影響をかなり受けている。しかし衣装と音楽は伝統を引き継いでいる。
夕食になって続々ツアー情報が集まりだした。一番儲けたのはヘリで火口見物に午後出発した組であった。午前の組は霧深く悪天候のため散々待たされたあげく中止であったのに、午後の組は晴天の、絶好の見物日和に恵まれる結果となった。日が射したために気温がぐんと上がり、ヘリの中でも防寒具が不要であった。操縦士は、火口壁すれすれの曲芸まがいの飛行をやって、乗客を満足させたそうである。ヘリによる遊覧飛行の希望者は定員をはるかに越したそうだ。乗れた組は全くラッキーだった。彼らは、その後でも機会がある度に、良かった良かったと宣伝して歩いた。私は、乗れなかった人に、ソ連時代の旧軍用機などまともな人なら敬遠するものですよと慰めた。原発と飛行機を同列で比較することは出来ないが、安全思想の土台の比較という意味で、原発の危険度評価値がソ連チェルノブイリ型では自由世界型より1桁も2桁も低かった説明もした。
次の日、朝食直後ラッコ発見の報あり、急いで傘をさしてデッキに出た。海鳥以外姿を見なかった。千島列島北端の狭い海峡を抜ける。ロシアの先導船が前を行くらしいが見えない。時折船長の案内が出、ついにラッコとシャチ(こちらは背びれだけ)を見た。海鳥が多い海面に両方がいた。島より少し離れた州にラッコらしい海獣の大群を見たが、遠いのではっきりしなかった。島には樹木はなかった。漁業基地がある。千島アイヌは今どうなっているのだろう。気温6度。
イルカが見えるとのアナウンスがあったが見えなかった。湾に入って停船し熊を探すがいっこうに現れず、12Fデッキからすばらしい緑の島の写真を撮ってから部屋に戻る。次の場所はアザラシのよく出る島と聞く。結局はそれは見なかった。

('06/08/03)