第57回千葉県展

- 彫刻をやっている先輩から今年も出品したという案内が来た。前期で日本画と書道、後期で洋画と工芸を見せる。彫刻の展示は両期間に跨っている。氏の作品はいつものように木彫りで、「本が好きU」と題した小品であった。
- 工芸はなかなかの充実振りであった。委嘱とか準委嘱とかはプロ作家の作品なのであろうが、アマチュアらしいその他の作品にも遜色を感じさせない作品が多々あって、展覧会に来たという充実感を満たせてくれる。多かったのは陶磁器で、大皿大壺に模様を描き絵柄を添えた品々は見る人を惹き付ける。残念ながら作家の名も作品の名も記憶にないが、入り口に近い位置にあった赤系の上薬による花絵柄の壺は、地味な暗色模様の多い中で一際目に付き、花の少ない季節での出品として推奨できるものであった。今近所に咲いている木本の花といったらヒイラギモクセイだけなのである。脱線だが、この花はちょっといい香りを漂わす。ギンモクセイとヒイラギの雑種だそうで、香りは親譲りなのであろう。織物、着物の出品はいつもより数が多いのではないか。和装は日常生活から姿を消したが、美術品としての美しさは世界に冠たるものがある。今後も新作が盛んになるように願っている。
- 絵は上手下手がハッキリ出てくるものだ。素人が展示会に出品するには随分度胸が要りそうだ。私は絵はフラットなものという先入観を持っているから、絵の具がゴテゴテと盛り上がったままになった作品など嫌いである。そんな意味では特に洋画などは9割以上が落第である。せめて後ろに引いて眺めたら、絵の具の透明感が引き出せる程度には描いてほしいと思う。裸婦像など人間を対象にする場合に特にそうだ。おそらくモデルは理想に近い均整の取れた体つきだと思うのに、腕の悪さはちょっとも美しさを伝えない。人物像が少ないのもがっかりだ。ことに群像となると数えるほどしか出品されていない。画家の腕の良し悪しは人物を描かせると明確に判る。県展レベルでもハッとするような絵が出ないものかと毎回思う。日本画と洋画の区別が付かなくなって久しい。襖、屏風や掛け軸の出品が極端に少なくなった。日本画は基底材料に絹や和紙を使ってこそ、本質が出るのではないか。
- 書道は見なかった。別に漢字起源国の反日姿勢に嫌気がさしたわけではない。絵とは違ってあるレベルを超すと上手下手の区別が付かないし、私は漢字書道を、デザインとしてなら兎も角、独立の美術カテゴリーに数えること自体に疑問を感じている。見ていて退屈だ。書道第二芸術論である。流れるような筆致で和歌を写した色紙には惹かれる。でも色紙のデザインと組合わさった美しさのように思う。掛け軸に見られる賛も絵との組み合わせで得た生命だ。
- 今は亡きレオロジー学界の重鎮であった恩師は、「賞は多ければ多い程良い。貰った人には励みになりますから。」と漏らしておられた。私が現役の頃の弱小学会は賞などいくつもなかった。本展には知事賞、市長賞や議長賞、館長賞など沢山の賞が用意されている。ちょっと疑問に思う受賞作品もあったが、まずはめでたい。ただし、地方自治体の賞だからといって、その地方出身者だけが対象になることは控えてほしい。例えば、銚子市長賞が銚子市民にだけ行くような配慮は県展の価値を壊す。
('05/10/30)