新々三種の神器


三種の神器とは白黒テレビ、電気冷蔵庫と電気洗濯機で、私が大学生の頃の新熟語であった。それがカラーテレビ、クーラーとカー(車)の3Cに代わり、平成に入るとパソコン、携帯電話とカーナビで新三種の神器を構成した。表題の「新々三種の神器」は日本総合研究所・高橋進氏の講演「景気回復の持続性を問う」からの引用である。一般性がある熟語なのかどうかは知らない。デジカメ、DVDレコーダー、薄型テレビを指す。一昨日であったか、NHKが中国で電気冷蔵庫の販売が爆発的に伸びていると報じた。今の中国の三種は大都会ではそれと携帯電話、カラーテレビぐらいなのであろうか。大都会でも日本の20年以上昔と思ってよいのだろう。農村地帯は40-50年は遅れているのだろう。我が家にも年末に「新々」が揃った。だんだん分厚くなる取扱説明書は年寄りには脅威である。TUKAの携帯のようなマニュアルなしの単純家電を願っている。
デジカメは実は2代目だった。初代は7年前の品で、画素数30万程度の、フイルム写真とは比較にならないお粗末な荒い画像しか得られなかった。焦点距離も固定だったし、電池の消耗が激しく、購入当時はそれでも乾電池取り替え1回につき30コマ近くは取れたが、古くなると数コマでへたってしまった。単3が4本入り、結構重かった。珍しい間は使っていたが、すぐフィルム型写真機に戻ってしまった。2代目は正式にはデジタルムービーカメラというのだそうで、デジカメに動画撮影機能を入れた優れものである。400万画素だから、サービスサイズ程度の写真ならフィルム写真と変わらない。512MBのメモリーカードを入れた。撮影モード次第だが、普通なら1時間以上も楽に録画できる。広角から望遠まで6倍ほどのズームが利く。
私は8mmフィルムのムービーカメラを回していた時代があった。確か1巻が2-3分で終わった。だからよほど選んで撮影しないともったいないと非難されかねなかった。今度のムービーカメラは、撮りまくってイヤな画像は消せるという、あのころに比べると夢のような道具になっていた。電子デバイスの進歩のおかげであるが、電池も進化に貢献している。初代時代にもあることはあったリチウムイオン充電型電池が、実用化しているのである。
ブラウン管タイプのTVの色調が購入3年目で目立って悪化した。汚らしい色になった。調整代はあるが、それではもう追っつかない。買い換えには迷った。古い高層集合住宅なので、すべてがデジタル不対応である。つまり地上も衛星放送も、届くのはアナログ波だけだ。BS用には放送開始の頃から、最近のに比べると何ともごつがましいやつだが、一応パラボラ・アンテナを個宅に設置していた。と言うことで、ちょっと小さめの液晶デジタルTVを買った。スイッチを入れてみて家中がびっくりした。画面が美しいのである。色が、現物以上にと表現したらいいほどに、きれいだ。それから今まで目障りであったアナログ地上波のゴーストが取れている。GR機能というやつだそうだ。テロップ文字が、下から上へあるいは右から左へ流れて行くときに、文字の大きさが変わることはない。つまり映像が歪まない。ハイビジョン放送にチャンネルを切り替えて再度びっくりした。とにかく鮮明なのである。家電店などで実物を知っていたはずなのに、そこまでとは思っていなかった。110度CS放送は駄目だった。古いパラボラは対応していないのだ。
ビデオ・デッキという名の付く機器はもう何代目であろうか。だが今まではアナログ型磁気テープ録画であった。新規購入のHDD-DVDレコーダーは、使ってみて便利さに感心した機器であった。気楽に何でもHDD録画しておいて、1週間ほど経ったらDVDに落とすか消去するかを決める。購入の動機は裏番組録画の必要性である。今は以前からのテープ・レコーダーをその目的に当てている。残念ながら選局できる範囲は衛星放送も含めアナログ波に限られている。でもこの選択でいい理由がある。パソコンのHDDに対する経験で、全放送がデジタル放送に切り替わる頃には、この装置も買い換えどきに入っているだろう。何よりも録画対象になる映像は圧倒的にアナログ波の方が多い。それに地上波は、アナログもデジタルも同じ内容で放送している。ハイビジョン放送はちょっと不便だが、テレビとレコーダーを同時間にセットして録画できる。昔は機器の時間合わせが煩雑だったが、今は機器の内部機構が自動的にやってくれるので、随分と楽になった。実際に録画してみるとやっぱり画質はぐんと低下する。
私が初めて映像音声情報圧縮技術を体験したのは、Windows World Expo/Tokyo97の日立ブースでの実演であった。MPEG方式だった。私の映像を撮ったFDを土産にもらい、パソコンで再生した。11秒ほどが800kBに収まっていた。長い間この映像をHPの中に飾っていた。我が家に収まった新々三種の神器の仕様書には、それぞれの利用圧縮方式が書いてある。ムービーカメラはMPEG-4、レコーダーはMPEGとある。テレビは送られてくるMPEG-2のデジタル波を解凍している。久保田啓一他2名:「デジタル放送がわかる本」、吉野武彦監修、オーム社、'00では、デジタル放送を推進できた最重要技術は情報圧縮技術だとしている。MPEG-2では1GBpsの情報を1/50に圧縮して送り出していると書いてある。実際これで、動く被写体は、マラソンにしろ自動車にしろ、まず画像の歪みを感じさせない。カメラを買うときに、同じ記憶容量なのに撮影可能時間の異なる製品について質問してみた。圧縮技術の採否であった。新製品に対して素人はハードの進歩にしか気付かないのが普通が、新々三種の神器では、めずらしくソフトが、一翼どころか主翼を担っているという感じを与える。

('04/12/28)