桂キャンパス

- 京大桂キャンパス見学会の案内がきた。新キャンパスはまだ未完成であるが、10月から工学研究科の化学系が移転開所したという。前日往路、関ヶ原のあたりから新幹線の車窓より何となく佐倉の歴博にある近江路の村落模型を思い浮かべていた。あの典型的な和風の情景は新幹線が出来てしばらくは安土以北ならあちこちに観察できたのだが、今はコンクリートや新建材の趣のない建物が進出していて、もう米原以北でないとあっても混ざった姿でしかお目にかかれぬようになっていた。座っていた席は琵琶湖側である。
- 翌日、京都駅から地下鉄で四条に行き、阪急京都線の桂に出た。桂キャンパスはバスで15分の所であった。バス便数はキャンパス開業に合わせて3-4本/時間になりまずまず便利である。将来は地下鉄の延長が期待されているようだが、差し当たってはこの阪急電車が頼りである。吉田キャンパスとの連絡シャトル便が設置されているという。戻りは17時の貸し切りバスで桂駅まで送ってもらったが、交通渋滞で小一時間ほどもかかってしまった。
- 京大は昔からの吉田キャンパス、旧陸軍火薬所あとを利用した戦後の宇治キャンパス、それにこの新キャンパスを入れて3キャンパスとなった。京大が狭いと云われる日本の大学の中でも特別に狭隘で、決して広いと云えない同じ大都市型の東大の半分ほどしかないことは承知していた。だから新キャンパスは将来を見越して広大な敷地の取れる、けいはんな(京阪奈)学研都市に立地するのではないかと思っていた。けいはんな学研都市へは筑波研究学園都市ほどには大型の研究機関が集まらなかったこと、本部の吉田キャンパスからの距離が遠く、交通手段も京都からはそう便利でないなどの現況が敬遠させたのかも知れない。けいはんなにキャンパスを置いたのは同志社だけである。桂キャンパスは竹林を切り開いた丘陵地帯にある。竹林とは他に類を見ない景観である。桂離宮や苔寺もそんなに遠くではない。文化的雰囲気も考えたらまずはいい立地選択であったと思う。
- 化学棟はAクラスターにある。クラスラーとは塊とか群を意味する言葉で、高分子の集合状態を研究したものには馴染みがあるが、その他の人たちにはさてどうであろうか。化学棟が丘陵地帯の一番低い場所を占めるのは、ユーティリティ特に水を多く使用するかららしい。それを殆ど使わない情報関係の施設は一番の高台に設置される。そこらがクラスターDになる。Dを含めてまだ建設中の建物が多い。化学棟は学生が600人ほど、教職員が2百何十人ということだった。研究室の学生はみな背が高く大きいのにびっくりする。我々が学生であったころより平均身長が10cmは伸びたのだから当然かも知れない。案内はM2の女子学生だった。女子は10%程度、博士コースに進む修士は2-3割のようだった。
- 実験室は大きめなのがいい。パソコンと分析用のクロマトはどこの実験室にもあった。個人的に気液界面X線反射率測定装置(XR:X-ray Reflactometry, X-ray Reflectivity Mesurement) を見せて貰った。理学電機の製品になっているが、共同開発品で世界にもあちこちにはない製品だという。この装置がそれに当たるかどうかは門外漢の私には分からないが、昔聞いた、一流の研究室は余所にはない設備を持っているものだという言葉を思い出した。
- 居住区を見る。教授室は狭いし、学生の机が入る整理室も狭い。初めからこんなに狭くていいのかというのが感想である。建物の中央を屋根なしの吹き抜け構造とし、配管配線ダクトになっている。建物と建物を繋ぐ廊下が何層にもなっていて、いちいち地上に降りなくても隣へ行ける。建物は地階を入れて6-7階になっていた。昼飯時にちょっとキャッチボールを楽しむような空地はないようだった。完成時には作られているのかな。キャンパスには塀とか門が無くセキュリティは建物単位となっている。キャンパス中央に人目を引く桂モニュメントが建っている。最新の発光ダイオードなど現代の最高技術を使った後世への記念碑になっているそうだ。
- 国際日本文化研究センターの講堂で工化会の記念講演会が開かれた。このセンターはこの丘陵のもっとも高い位置にある。丘全体は、移動のとき知ったのだが、新興住宅街になっている。講演は総長補佐の西本清一教授による「吉田から桂へ−キャンパス移転の経緯・現況・展望」という話と、大阪ガス副社長の松村雄次氏による「これからの産学連携のあり方について」という話であった。前者は上記見学記においおい取り入れてあるから省略する。後者は大学が産官学の複合的横断的有機的重層的共同研究機構の中心に育てなければならないと云う主旨である。
- われわれの時代では共同研究と言っても単に相手をお助けマン的に扱っていたが、これからは互いに長所短所を認め合って連合体として成果が能率的に上がるように行動せねばならぬ。大学の日米比較において鮮明に違っているのは大学の特許取得数、工業所有権ライセンス料などである。独立法人体制に移行して、この役立つ大学への指向は一段と強まるのであろう。大阪ガスは京大との共同研究でかなりの成果を上げているようだった。桂イノベーションパークという敷地や、桂インテックセンターという構内の建物はそんな目的に使われるのであろう。
- おみやげに紅白饅頭を渡されるとは思ってもいなかった。同窓会の見学会であった。
('03/11/10)