九月世相寸描


 自民党総裁選挙に小泉、亀井、高村、藤井の4氏が立候補した。世論調査では小泉氏の圧勝と出る。政策上はこの4氏の間でどう違うのか判断不能である。橋本派が小泉支持派と藤井擁立派に実質分裂した。後者の野中元幹事長が今期限りの引退を9/9に声明。退路を断って反小泉を貫くという。派閥政治の終焉を告げる新しい政治潮流の蠢動だと識者は云っている。9/20の選挙の結果6割を小泉氏が取り再選された。国会議員票は5割強だったが、党員票は7割に近かった。9/21の読売に党員投票の内訳を示す表が出ていた。なるほど自民党は農村党である。東京の配分票10にたいし、東北6県合計が31ある。人口は東京が12.1百万、東北合計が9.8百万だ。経済力の比率にすればさらに大きい。いつまでも農村党に、工業立国日本の政治を任せておいていいのかという疑問も湧き出る総裁選挙であった。
22日新内閣発足。若返り、改革路線へのこだわり、派閥否定など色々国民へサインを送っている。要は内閣に実行力があるかと云うこと。今後を見守ろう。9/24の読売、毎日はそれぞれの世論調査結果を発表した。新内閣支持が63-5%と急上昇した。自民党三役人事の中では安倍幹事長人気が高い。田中真紀子さんを引き合いに出すまでもなく人気と実力は必ずしも比例しない。勝負は選挙後であろう。塩爺が引退を表明した。いい引き際である。9/26読売に「首相主導の強化不可欠」という21世紀臨調代表の一人・西尾勝教授の談話が出ていた。私と同じ意見である。9/24民主党自由党合併の調印式が行われた。新党名は民主党である。国会議員数は204名で、群を抜いた第二党になった。従来の一強(自民党)政治から二大政党による運営になるかどうか、差し当たっては次回の選挙が注目される。
8/31埼玉知事選挙に上田氏が当選した。民主党副幹事長衆議院議員を辞して無所属での立候補であった。候補者乱立(7名)にもかかわらず、投票率は35.8%と記録的に低かった。埼玉県の民主主義は大丈夫なのだろうか。民主−自由合併予告により民主党の政権党への道のりが現実味を帯び始めたためとも云われるが、前の土屋知事身内の銭まみれ体質に対する嫌気と反動だけとも云える。私が注目している主張は、道州制導入を目指す「首都圏連合」の提唱である。長野県と同じく、自民圧倒的多数の県議会だから、解散を辞さない戦闘的姿勢を持ち続けないと改革は不能だ。
8/31 12Ch TVで世界陸上選手権女子マラソンを見た。野口みずきが2位に入った。観光客だろう、日の丸の小旗がたくさん沿道に見られた。40度を超したこともある酷夏のフランスでの大会だから心配していた。曇り小雨模様の23-4度だったようで、マラソンにはやや暑いという程度のコンディションにホッとする。これで2:24:14の記録は立派。世界柔道選手権で井上、棟田、鈴木、阿武、田村ほか合計6選手が金メダルに輝いた。世界選手権では金が多いが、五輪になるとひどく少なくなると云うのが今までの傾向だったと思う。アテネでも立派な成績を上げて欲しい。阪神タイガースがもたつきつつもついに15日に優勝を決めた。18年ぶりとか。東京の百貨店を含めてのタイガースセールのフィーバーぶりが報道されていた。スーパーに立ち寄ったら、優勝記念レッテルのビールまで出ていた。大相撲は朝青龍の4度目の優勝で幕を閉じた。
APEC財務相会議は5日人民元引き上げに間接的に言及して終わった。7月のASEM財務相会議に引き続き引き上げが議題となった。塩川財務相がはじめて言及したときには、中国は日本の経済不況を人民元のせいにすると云う反応だったが、これだけ包囲網が密になると、いずれ対処せざるを得なくなるだろう。変動為替制というグローバル・スタンダードに背を向けている期間が長ければ長いほど、国内矛盾もますます大きくなっていっちもさっちも行かぬ事態に追い込まれ、結局はその国の損になる。香港とマレーシアもそろそろ考えねばならぬ時期に来ている。
9/9読売に年金特集が出た。過去に、赤字化し先細り見通しとなった職能別年金が、現制度に統合されていった経過が書かれてあった。国鉄共済、日本たばこ産業共済、NTT共済、自営業者の国民年金、農林年金である。これらはトータルとしては公務員やサラリーマンの負担増あるいは彼らの年金台所事情の悪化という形で救済されている。誰にも優しい国民皆年金の制度であるが、財政見通しは暗く制度破綻が予想されるようになってから久しい。少子化による納入者の減少の外に20代未納率5割超という制度拒否の風潮が現れだした。もう厚生年金や公務員共済年金のような、物言わぬ層のリッチな受け皿はない。真っ正面から政策で決めねばならぬ。だが小泉さんは我関せずだ。厚労省社会保障審議会年金部会案や坂口厚労相試案など次々に対策のアドバルーンが上がる。ババは公明党(坂口大臣)が引けばよいと云うことだろう。今度の自民党総裁選挙の中心話題であってもいいはずだが、だれもが臭いものには蓋で知らぬ顔である。これでは、年金だけで云えば、小泉さんは支持しても公明党に投票してしまうことになってしまう。
パレスチナ自治政府のアッパス首相辞任によりイスラエルとの紛争は混迷を深めるばかりになった。クレイ氏は首相を引き受けるようだが、アラファト議長よりのためイスラエルが交渉相手と認めないかもしれない。9/13のNHKスペシアルは「テロを止めた対話〜ノルウェー秘密交渉の記録〜」と言う題で、スリランカの「政府対解放のトラ」の熱い紛争を仲介するノルエー外交を解説した。相互不信の真っ直中の仲介で、とにかくここ1-2年和平状態が戻っている。解放のトラNo.2の病気入院の機会を捉えての裏工作を細かく説明していた。石原都知事が日本で北朝鮮に対する小手先秘密外交と攻撃する内容とそっくりの外交努力を、ノルエーは秘密裏に慎重に根回ししつつ進めて行く。石原さんのようにワンワン云いたいことを真っ正面からお構いなしに云っていたら、まとまる話も壊れてしまう。対米基地問題で彼はなにか業績を上げただろうか。どうやら石原さんも年貢の納め時である。
16日軽急便名古屋支店で3名死亡、41名重軽傷の事件が発生した。表面は下請け配達人(犯人)と会社との支払期日の問題らしいが、深層には我々には分からぬ遺恨があったのかも知れない。それにしても個人問題を押し通すのに、他人の命を紙風船のように扱う犯行である。犯人は大量のガソリンを用意していたから焼き払う意志はあったと思う。しかし自爆は予想外であったのではないか。ガソリン蒸気が爆発限界を上回ったところへ摩擦電気などの放電火花が着火源になったものと思う。福岡の一家4人殺害事件は中国人グループの容疑が固まった。中国人の犯罪が突出して多いのは、犯人達が反日思想に免罪符を与えられたような感覚を抱いているからではないだろうか。9/26から読売に「治安再生第4部捜査とプライバシー」のシリースが始まった。最初はDNA国際情報網構想の話だ。犯罪と科学のいたちごっこでいつもわが国で問題になるのは、システム化つまり政治の立ち後れである。上記福岡事件もDNA検出が決め手のようだ。
中国残留孤児が大挙して政府を告訴した。この場合政府とは日本におり続けた日本人のことだ。残留孤児については敗戦国として中国の鼻息を伺いつつ我々は懸命にやったと思う。その努力は北朝鮮拉致同胞に対する援助意欲と基本的には同じだったはずだ。9/25 NHKクローズアップ現代で「祖国での孤立〜中国残留孤児はいま〜」が放映された。祖国で成功した人は少ないらしい。しかしわが国でのその後は個人の問題で、覚悟の上での帰国の筈である。「訴えられた」ものとしてはなにか鼻白む思いである。
新潟県村上市の中三女子連れ去り・監禁事件はともかく少女無事発見、容疑者逮捕で解決し安堵した。面妖極まりない事件であった。見付けた子猫をペットにしようとさらってゆくのと変わらぬ。思慮にあるのは利己だけである。9/19の読売によると昨秋からつけ狙っていたという。今回は親が「勇気」を出して警察に訴えた。犯人は無職の暴力息子で親のすねを囓って生活している、それにもかかわらず親は恐れて何もできない、その家庭は社会から孤立していると言う報道を何回見たことか。長崎市の4歳児誘拐殺人事件の容疑者中一の男子生徒が、高機能広汎性発達障害と診断された。彼の入院治療で事件が終わるのでは被害者側は納まるまい。それにこの種の精神障害は完治など期待できないのではないか。市民の安全のためにも、出所後は所在位置をそうとう長期にわたって一般に公開するような刑罰を考えるべきである。
慈恵医大青戸病院の手術ミスによる死亡事件はひどいものだった。読売が9/26の社説で患者をモルモット代わりに扱ったと非難したのは当然である。経験ゼロと言ってよい若手医師3人がつるんで、高度技術の必要な医術を実績ほしさにガン患者に施し、大量出血に対処できずに殺してしまった。操作能力がないためか、医療機器メーカーから技術員を立ち会わせマニュアルを読みながらやって失敗したという。別に統計を取っているわけではないが、素人が見ても明らかに人道にもとると思える医療事故は殆どが私立の大学で起こる。レイプ事件犯人が私立大学生ばかりで、その内には一流と言われる私大生が含まれていたころから、私は私立大学全般のモラルに疑惑の目を向けている。

('03/10/11)