八月世相寸描

- 8/25の読売に少子化対策の提言が載った。坂口厚労相が東北、北陸の女性が労働率が高いのに出生率も高い、三世帯同居率の高い地方が出生率が高いなどの統計結果を示した。古き良き日本を引き継ぐ地域ほど出生率も安定していると云うことか。井口先生は女性の生涯所得を比較した。子を持った女の生涯所得が、子を持たぬ人の3割で、欧米の7-9割に比べ異常だという。企業が瞬間の労働価値だけに囚われて、将来の労働力再生産に投資する気持ちが殆どないのは事実だ。労働力再生産への投資を強制加速させる政策が必要だ。大塚JR東日本社長のように企業の自主性尊重ばかり云っていては日本が沈んでしまう。
- 8/5読売の解説「世界の社会保障」にドイツ連邦憲法裁判所判決が載っていた。子供の有無を保険料に反映すべしと云う主旨だ。大人世代は老後を子供世代におんぶしてもらっている。子供の養育は多大の負担を伴う。子供を養育しない人は、働けなくなったときの自分の生活のために、子供を養育している人の負担に相当する保険料を払っておけというものだ。トコトンこの論理を進めると、民間保険と変わらなくなってしまう。だが、これ以上の人口減少は何としても防がねばならぬ。個の生命の目的は種が永遠に生き延びるためであるという40億年の生命の歴史は、生命リサイクル拒否が自然の摂理への反逆であることを示す。子供の養育の積極的な優遇策を打ち出して、民族としての社会維持への意思表示をせねばならない。人口維持が経済問題、社会保障問題の根本的解決策であることは誰しも認めるところであろう。
- 8/5インドネシアの首都ジャカルタの米国系高級ホテル前で自爆テロ。死傷者多数。インドネシア・バリ島テロで多数の豪州人ほかの死者負傷者を出した記憶がまだ醒めぬのに。狂信的過激組織の行動を抑える自浄作用がインドネシアでは働かないようだ。8/7バグダッドのヨルダン大使館前で爆弾テロ。8/6のNHKスペシアル「拡散する核の脅威〜インド・パキスタンからの報告〜」はパキスタン側イスラム過激集団のインド国会襲撃テロを写していた。インド側の反発は核戦争寸前まで緊張を高めた。紛争地カシミールでは、インド側は潜入してくるゲリラ組織により毎月50名を超す犠牲を出しているという。パキスタン政権は関与を否定しているが、過激組織を制御できないあるいはしようとしないのだから、国家ぐるみを否定できない。インドは先行使用否定の核原則に但し書きを入れた。8/25インド・ムンバイで連続テロがあり、45人死亡と報じられた。イスラム組織が疑われている。
- 8/19イラクの国連本部事務所で爆弾テロがあり、死者17人負傷者108人を数えた。イスラムの何らかの組織によるテロであることだけは確実だ。イラク復興に尽力する国際組織まで敵なのだろうか。同じ日、パレスチナ過激派によりイスラエルのバスが爆破され20名の死者を出した。8/21イスラエルは報復と称してハマス最高幹部の一人を殺害した。ハマスは停戦協定の無効を宣言し報復を誓った。8/23読売に「イスラエル外相、日本に和平仲介期待」という記事が載った。真っ赤に炭火をおこした張本人が日本に火中の栗を拾えという。8/29にはシーア派の最高幹部の一人がモスクの爆弾テロで死んだ。彼は穏健なイラク再建優先派だったそうだ。アルカイダ関連の犯行と言われる。一方シーア派イスラム教徒の過激グループが今は反米行動の先頭にいるという。イスラエルもイラクも混迷を深めるばかりで出口が見えなくなった。
- 中国李外相がはじめて来日した。トーンは前政権よりは柔らかくなったが相変わらずの「歴史認識」であり、「北朝鮮」寄りの発言が多かった(8/13読売)。靖国参拝について、歴代政権が一貫して、中国の公式認識に日本が同調せよと迫る。靖国は信教問題である。その自由に対する干渉は民主国家の基本に触れる。宗教が共産党の許容範囲でしか動けない中国とは日本は根本から違っている。尊大非礼な発言だ。なぜかこの根本問題に、もっとも熱心に話し合ったという公明党が、気が付かぬ振りをしている。
- ここしばらく新聞記事にならなかった脱北問題が、バンコク日本大使館への駆け込みと、上海での支援NGO代表らの拘束でまた注目を浴びている。8/14読売の解説「ノドン対応」に北朝鮮ミサイルの実勢を紹介していた。日本全土を射程距離とするノドン200基が配備を終わっている。今までの専守防衛型の地対空ミサイルではもう対抗できない。叩かれれば、それ以上のお返しができる体制でないと、抑止力にならないと言う意見が、だんだん勢いを強めてくるだろう。神格化された独裁者が統治する国は、いつ冒険を始めるか分からない。
- 読売が8/21から証言北朝鮮のシリーズを始めた。第1回は、国家事業として行われる闇商売の実体に関するレポートである。麻薬、偽米ドルを万景峰号などに載せ、在日朝鮮人を介して売りさばくルートの内容である。こんな状態が恒久的に続こうとしている。日本人は嫌でも在日を色眼鏡で見ざるを得ないし、彼らの日本社会組織への接近にも警戒心を持って迎えざるを得なくなっている。レポートの3回目は「闇市場が計画経済圧倒」という題になっていた。大戦に負けたあとの日本の闇市場を思い出させた。4回目は「幼児からの洗脳教育」で、金正日さまを親と敬えと親子を隔離する社会教育体制の証言である。5回目は「飢える兵士、略奪に走る」だった。8回目は「徹底監視、密告渦巻く」であった。戦中の日本には特高という思想警察があった。しかし相互監視の組織的スパイ網までは無かった。
- 次官級の日米露中韓朝6ヶ国協議が終わった。話し合いの場を作ったと云うだけの成果だった。合意文書さえなかった。相変わらず北朝鮮の核もミサイルも野放し、被拉致者は拉致されたままである。
- 米国北東部とカナダで14日に大停電が発生し、NYの地下鉄は2日間止まったままであった。市民生活の混乱ぶりは連日大見出しで報道された。直接原因はまだ特定されていない。しかし過剰負荷で停まった発電所が、余裕のない電力事情と貧弱な電力融通網のために、次々に連鎖的に他発電所の自動停止を引き起こしたものらしいと分かっている。この2つは、自由化が、メリットを生まぬ投資を否定するために生じた歪みだと解説されている。先年のカリフォルニア州大停電の教訓が生かされなかったことになる。冷夏で助かっているが、日本も今原発のストップでピンチである。最優先で復旧を急いで欲しい。政治の駆け引きのカードにするなどは以ての外である。
- 8/10の読売にレスター・ブラウンの次世代エネルギーに関する評論が載った。風力発電が欧米の主力になると書いてある。'99に東海村でJCOの臨界事故があったとき脱原子力をテーマに色んな解説が出た。その時の問題点の一つが発電可能風力の絶対量で、日本には全部利用しても原発1所分ぐらいしかないと言うことであった。ブラウンの解説にはアメリカではノースダゴダ、カンザス、テキサスの三州だけで全米電気需要量を満たす風力があると書いてある。発電コストもどんどん下がって、'80年始め38cent/kwhだったのが今立地条件がよい場所では4cent/kwhにまで下がっている。'20年には2.1だという。私は新エネルギー三題噺で諸方法の発電コストに触れている。4cent/kwhなら文句なく安い。ブラウンに指摘されるまでもなく、国産エネルギーを持つことは国家にとっての朗報である。戦争のたびにあちこちの顔色を窺いながら、原価1$/bbl以下の原油を30$/bblを超す値段で買わねばならぬなんて実に忌々しい。大陸諸国が風力発電主力になれば石油の値段も落ち着こうというものだ。
- 米の不作予想が出た。冷夏だから覚悟はしていた。7年ぶりだそうだ。北海道と北東北3県が特にいけないようだ。自主流通米には既に2-3割値上がりした品種もあるそうだ。市場が世界に開かれておれば、そんな値上がりは起こらないのにと思う。カリフォルニア米は結構美味いそうだ。だが輸入アメリカ米は450円/kg(3/4以上が関税)で自主流通米より150-200円は高い。自由競争に世界としのぎを削る商工業者の目には、お米産業は安穏な無風地帯と羨ましくしかし不条理に映るであろう。消費者のブーイングが激しくなる前に、輸入米価格が300円程度になるように関税を引き下げるべきである。一方農産品の自由化に関するWTO交渉では、EUと米国の妥結が噂されている。EUは今までの経緯を捨てて、日本を蚊帳の外に置いたまま交渉を進めている。いつかは関税引き下げをせねばならないだろうから、EUの先手を打って今引き下げるべきであろう。農産品輸出国から引き出さねばならぬ対価は食料安定供給の約束である。
- 8/28池田小児童殺傷事件の宅間被告に死刑の判決が出た。宅間は暴言により退廷させられ、法廷に不在のまま言い渡された。堂々たる退場のつもりであったのか。凶行にブレーキが効かなくなった社会を改めて思う。地獄信仰、因果応報の観念、敵討ち、村八分、係累の連帯責任、卑劣とか卑怯とか仁義と言った社会通念等々。かっては身勝手犯罪を思い止まらせる心理的障壁が山ほどあった。仏教説話を迷信と退けるのも良い、封建的因襲排除も良い、人権主義なお結構。しかしそれらに代わる新しいブレーキを我々は用意出来なかった。先頭に立って「旧弊」打破ばかりに走ったマスコミの責任は非常に重い。
- カリフォルニア州のアナハイムで開かれた世界体操選手権で、鹿島選手があん馬と鉄棒で金メダルを取った。新聞は体操日本復活かと大見出しをつけた。
('03/08/31)