七月世相寸描

- 法科大学院設置申請が72校であった。全部認可されれば定員は6千人で、'10年司法試験合格者数目標3千人を大きく上回る。私立大学の申請定員が従来の合格者数実績に比し多すぎる。東大と、半分の実績もない早稲田、中央が同数なんて奇妙だ。見え見えの陣取り合戦である。各校の合格率を配慮に加えればその矛盾はもっとひどいものになるだろう。それでいて、国立私立の授業料差をなくせと言っている。エゴ的方針を捨てないと結局元の司法試験に戻ってしまう。
- 7/18読売にCOEプログラム採択拠点が載った。世界的レベルに育つ可能性を秘める研究拠点作りである。大学数は私立が国公立より遙かに多いのにもかかわらず、採択拠点数は全体のわずかに2割あまりで、東大(1位、26件)と京大(2位、22件)に阪大(3位、14件)を加えるともう凌駕されてしまう。私大トップの慶大でも東北大と並び5位12件である。文科省の科研費配分はもっと傾斜が激しい。マスコミに登場する先生は私大勤めの方が多いが、研究能力という点では、私大はまだまだレベルが低いと云うことなのだろうか。某一流私大に「学生一流、教授三流」という言葉があったことを思い出す。
- 7/5読売朝刊に「知財高裁」設立構想と言う記事が出ていた。ソフトウエア特許に関する訴訟で、当事裁判官は技術問題は分からないと強調した例が上がっていた。似た話は技術医療薬事等の理系学問の基礎がないとどうにもならぬ裁判でしばしば聞かされてきた。技術大国が聞いて呆れる話である。知的財産に関して争われる問題は殆どがオリジナリティに関するものであろう。オリジナリティはその競争に一度は身を投じて勝ち抜いた実績がないと判断に信頼が持てない。オリジナリティのライセンスは一般には博士号として与えられている。知的財産の裁判にかかわる司法関係者は全員が博士号を持つほどの権威ある存在であって欲しい。
- 7/3のNHKニュースに原発再開に関する福島県知事のインタビュー映像が出た。質問の肝心な点は全部はぐらかして政府、東電への要求ばかりを口にする。典型的な日和見主義のようであった。今回の安全点検では確かに東電に不備があった。しかしそのために事故が起こったわけではない。事故の確率が幾分か増加していたということだ。福島県民は実質何の損害も受けていない。しかし原発再開を拒めば大都会停電の問題が目の前にぶら下がっている。それによる損害は計り知れないものがある。福島県が大都会から受けている恩恵を考えれば、拒否はあまりにも利己的な行為と思われる。1週間ほどして知事が再開を容認したという記事を見た。都民の不安を取引材料に利用したおさわがせマンの印象を拭えなかった。
- ウインブルドン・テニス女子ダブルスでの杉山組の優勝はスポーツ界では久しぶりの朗報であった。松井、イチローが派手に紙面を飾っている。バルセロナ世界水泳大会で7/16シンクロ新種目に金、北島が200Mと100M平泳ぎに世界新で優勝。7/19毎日に「ダイエー、球団売却へ」と言う見出しの派手な記事が出た。福岡残留を前提にとあるのでホッとする。パシフィック・リーグがこれ以上落ち目にならぬように奮起して欲しい。スポーツではないが、数学オリンピックは9位だった。前年(16位)に比べればましだが不満足な成績である。日本は今回開催地だったのだから。上位はブルガリア、中国、米国、ベトナムと続く。上位の常連である。7/20読売の社説は日本における英才教育のタブー視を理由の真っ先に上げている。数学平均能力の国際比較はいつもトップクラスであることを示すからである。化学オリンピックは初参加で銅2人。銅受賞者は何十人もいるのだ、これも不満。
- 七夕の日に能登空港が開港した。翌朝の毎日は「強い期待重い負担」と題して地方空港全般の実状を纏めた。地元期待はNHKニュースインタビューでは観光客誘致に集中していた。能登の観光資源の一つは取り残された陸の孤島というイメージではないかと思う。交通便利になればそれが消えてしまう。それに見合う以上の新観光資源が開発されたとは聞かない。鉦や太鼓で初めは人を集められても、2年も経てば赤字の重みに耐えられ無くなるであろう。中谷先生の「結局は地元に公共事業が欲しかっただけ」という言葉が当たっているように思う。財政が大赤字だというのに時代錯誤も甚だしい空港である。
- 長崎で4歳児を裸にして駐車場屋上から突き落として殺した犯人が捕まった。その先日沖縄でやはり中学生が、これは集団暴行で殺されたばかりであった。12歳の中1男子である。犯人像は全てがショックである。成績優秀の普通のおとなしい子供だが、殺人後も休まず学校に通い、捕まったらあっさり「ごめんなさい」という。死体は発見しにくい場所にあり、自首の気持ちなど無かったようだから、あわよくば逃げ切ろうという計算が見え隠れしている。類似の余罪が20件という。
- 周囲特に親は感づいていて当然と思う。保護者の責任は非常に重い。だが、第1回審判に両親は出席しなかった。事件後表面には一切出てこないし、相手に正面切って謝罪しようとしないらしい。続いて女児4人監禁事件が起こった。渋谷に遊びに出た子供だけの4人がアルバイトの甘言に引っ掛かった。その内の1人が手引きしている。保護者は女児だけで大都会の繁華街に出して平気なのだろうかと先ず思う。7/24読売に「娘の補導まるで他人事」という警視庁街頭補導のまとめが出ていた。その記事の横に「たばこで17歳娘のご機嫌取り」と富山県の父親の記事が出ていた。良家の子女などと言わなくなって久しいはずだ。
- 7/10の読売編集手帳には、家庭が、学校が、社会が、(異常行動前の)気配を察する五感を取り戻せと訴えている。私は倫理とか正義とかが真っ正面の判断基準に据えられるように、まずはマスコミが息の長いキャンペーンを張るべきであると思う。そう言う風潮を取り戻さねばならぬ。卑怯などというののしり言葉はマスコミからまったく聞けなくなった。勇気を褒めたたえる態度も薄くなった。客観的報道という逃げ口上の下についてまわる腰の引けた姿勢が、犯罪者の心のブレーキを緩めていると思う。
- 近大生のレイプ事件のまとめが出ていた。婦女暴行が数十件に及ぶという。慶応大生、早稲田大生、日大生のレイプ事件は耳目に新しい。共通しているのは私大生と言うことである。雑誌のタイトルに早大は性犯罪の巣窟かという主旨のものまで出る始末である。何十件も犯しているのだから、周囲は絶好の猥談話としてある程度知っていたはずである。沖縄の場合は知った学友が110番した。だがこれらの私大では自浄作用は働かなかった。7/17酒に睡眠薬を入れ暴行した容疑で明大生逮捕と小さい記事が出た。またも私大である。
- 埼玉県知事が7/11に辞意を表明した。一時はかの青森県知事同様に辞職しないと言い張っていた。知事の私的政治資金管理団体が虚偽の収支報告をしていた疑いによる。この管理団体は知事の長女(桃子)によって取り仕切られていた。1億円以上を誤魔化して長女の事業につぎ込んでいたらしい。NHKインタビューを聞くとこの長女は父の立場を利用して副知事然と行動し、桃子プロジェクトなどと陰口を利かれるほどに公共事業にまで嘴を入れていた。一体何人の知事が辞めたら地方自治は正道に戻るのであろうか。問題知事を選んだ県民は猛省願いたい。
- 7/20読売朝刊の「省庁の調整手当、腰掛け移動で水増し」には呆れた。中央省庁で職員移動を行うとき、1日だけ本省に移動させてから再度目的地に移動させ、調整手当を水増しするお手盛り給付を永年慣習的に続けていたという。なぜそこまで意地汚く税金を食い物にせねば納まらないのか。国家公務員は決して薄給ではない。多分公務員としては世界一の高給取りの筈である。
- 7/23菅−小沢両党首会談で9月末の民主党と自由党の合併が決まった。秋の衆議院選挙を睨んだ2大政党化工作である。同床異夢のメンバーで政権を取ったとしても何もできないのではないかという危惧からは離れられないが、それでも万年自民党政権では先が暗い。民主党内の旧社会党系は右傾化に危機感を募らせているようだ。
- 九州の集中豪雨による土石流災害に続き、26日に宮城内陸部の深さ12KM程度の位置で直下型地震が3回連続して発生した。いずれも震度6程度である。加速度が史上最大だったという。直下型でマグニチュードは小さいから被災範囲は狭いが、大加速度による家屋倒壊土砂崩れがひどかった。
- イラクがパレスチナに似たゲリラ戦状態へ進み出した。それもかなり組織立っているように見える。自爆はないが、ロケット弾を含む小火器によるアメリカ軍兵士の犠牲が相次いでいる。フセイン元大統領の2人の息子が殺害されたが、ゲリラは止む様子がない。ブッシュ大統領も長期戦かを覚悟したようだ。終わりがない泥沼にならないことを祈るのみである。イラク特措法が成立し11月にも自衛隊が派遣されると云う。気が重いが日本だけが抜けることが出来ない国際協調義務である。フセイン政権の恐怖政治ぶりが獄舎跡や遺骨集積状況、あるいは生き延びた被迫害者の証言から明らかになり始めた。殺された人数は26万人に上るとも云う。7/6読売朝刊に山崎正和氏の論文が出た。そもそも近代国家で云う意味での国民がイラクには存在しないという指摘である。
- 戦後のイラク一般市民についての報道は我々を困惑させるばかりであった。まず博物館から旧政権官庁官邸までが略奪の対象になった。博物館は民族の誇り、官庁官邸は政権のいかに関わらず自国運営の中心のはずである。治安も電気も水道も同盟軍や援助国家の責任のように云う。イラク旧軍兵士が給料よこせの大デモを繰り広げる。誰に要求しているのかよく分からない。私には国家意識のある国民のようには思えない。イスラムの大義と言う言葉はアフガンでもイラクでも聞いたと思うが、イラクの大義アフガンの大義が叫ばれたとは記憶していない。モスクワで7/5チェチェン女性による自爆テロ。最近女性イスラム教徒による自爆テロがチェチェン地方で頻発しているという。イスラムは火種と世界が認識し始めた。
- かなり以前から燻っていた中国通貨・人民元切り上げの問題が、6日に終わったアジア欧州会議(ASEM)財務相会議で表面化した。全世界的に不況にある中で今一人中国だけが高成長を維持している有力な理由の一つに、元が不当に安い固定相場(対ドル)になっている点が問題視されたのである。他に香港とマレーシアが固定相場制であるが、中国の影響力は圧倒的である。1$=8.3元では日本と中国の国民所得を比較すると30倍強、製造業の賃金比較ではほぼ40倍の格差がある。しかし伝えられる中国の映像では中国がそんな極貧国とはとても見えないのである。ブラックホールのように世界のお金を吸い込む中国の経済に対して、中国の反発にもかかわらず、早晩何らかの手当をしないと世界は歪んでしまう。WHO加盟の代償として中国は全世界的視野に立つことが要求される。
- 7/16の読売朝刊に中国市場の問題点が総括されていた。代金踏み倒しが恒常化しており、訴えて裁判に勝っても司法がグルで実質の回収は不可能なときもあるとあった。知的財産権侵害問題も既に公知の事実である。中国食品−ウナギであったか−にまたまた禁止の抗生物質検出の記事も見た。彼らの商道徳無視の姿勢は中国人に対する世界の信用を下げる一方である。
- 7/31読売に中国新幹線問題と東シベリア石油パイプライン問題の時事解説が載っていた。前者は日本からの導入を反日運動に結びつけられているらしい。政治家達の思惑とは別にJR側には技術のただ取りを警戒する声がある。過去に技術協力といい援助とは云わなかったが、いつも日本からの一方的無償援助であった。技術を引き出物にする政治経済取引はここらできっぱり絶つべきである。後者では中国がロシア内設置工事にまで資金援助を申し出たという。ここ数年で計6兆円を超したという対中経済援助はこの機会を捕らえてドラスティックに廃止しよう。
- 原都知事が繁華街視察の際中華飯店で外国人犯罪取締の強化を訴えた。7/30読売に韓国人武装スリ団の解説が出た。スリと言っても発覚すると包丁を振り回すプロ強盗団である。韓国から「出撃」し荒稼ぎをしてはさっと本国へ引き揚げるのだそうだ。東京で急増している。別面に外国人犯罪に関する中韓との捜査協力状況を解説していた。実を結びつつあるがまだまだ先方の反応が鈍く日本側を苛つかせているようだ。近代国家の国民は外国人の犯罪に敏感である。たった一つの外国人犯罪でもそれまでの友好共存のための地道な努力を台無しにしてしまう可能性すらある。中韓捜査当局が将来を見越した協力姿勢を示すことが、犯罪を受けた国へのせめての償いであることを肝に銘じるべきである。
- 北朝鮮核問題は全世界的努力にもかかわらず北の拒否にあって進展しない。朝銀への公的資金の投入が1兆3500億円に上ることが明らかにされた。北朝鮮系在日対象の銀行に異常な支援である。北海道の地銀のトップであった拓銀を潰して地場産業に多大の損失を与えたのに、なぜ朝銀支援かという問にはかなりの政治解説が必要である。その赤字のかなりが朝鮮総連に流れた不透明資金だという。
('03/07/31)