正月世相点描

- イラク問題が緊迫の度合いを増してきた。米軍15万、英軍3万、豪軍1.5千が既に展開している。半世紀ほど以前であったなら、遙か遠い外国の問題として、悪い表現だが、野次馬気分でフセイン大統領の一挙一動を眺めていただろう。だが、文明の発達でこうも互いの距離が接近してしまうと対岸の火事では済まない。我々は、一般論だが、見えぬ相手には恐怖を憶える。民主的機構の機能しない国は見えない。一人の瞬間の判断で歯車が大きく動く可能性を恐れる。かの国の指導者は、独裁の維持のためにか、盛んに周辺特に覇権国に対して牙をむく。そのかっこよさを自国だけでなくイスラム圏諸国の民衆が喝采で迎えているのは事実である。しかし、その外にいるもの、将来も外に居続けるものにとって危険この上ない存在である。
- 世界は平等ではない。地域性独自性はアメリカが許容する範囲でしか生きられない。読売の1/4朝刊の「ガリバーと世界2−対テロ進む軍事革命−」と言う解説記事があった。例えばアメリカ海軍は、その他の全海軍を集めても対抗できないほどの力を備えていると書いてある。アメリカは本気である。国際世論を宛にした手練手管だけで納まる話ではない。アメリカは自由と民主がない政治体制に嫌悪しているのだ。「ガリバーと世界6−アラブへ民主化「外圧」−」は穿った記事である。「石油利権」を使った落としどころがまだあると思わない方がよい。ソ連が第2の覇権国であった時代とは違う。昨年末の毎日朝刊は「OPEC「アジア価格」撤廃検討」と言う見出しで、アジア諸国には1バーレルあたり1ドルも高いOPEC諸国の石油商売を解説していた。中近東イスラム圏国はこんな理不尽な商売をするところと理解されては、都合のいいときだけ国際世論を叫んでも冷淡に扱われるだけである。
- 北朝鮮の強硬姿勢もいつまで続くのだろう。核問題の米朝直接交渉に対して、アメリカが面子を立てる発言をしてから、いくぶん軟化の兆しを見せ始めてはいる。日中当局の配慮で、「地上の楽園」北朝鮮脱出の日本人妻が日本に戻れた。脱北ブローカーの存在が外務省により公式に認められた。1/29の各紙朝刊は、工作員の調査により万景峰号が北朝鮮のスパイ工作機関であると報じた。万景峰号は朝鮮総連の寄付による客船で、半定期的に日朝を往来している。今も新潟港に着くたびに朝鮮総連幹部が乗り込んで行くそうだ。朝鮮総連は建前は在日朝鮮人のための福祉友好団体だろうが、表看板を外せば在日北朝鮮スパイ機関そのものらしいと解ってきた。朝鮮総連側は例の如くでっち上げと反論している。しかしこれだけあちこちから証拠が挙がると説得力がない。我々は国内のスパイ活動を取り締まる法律を持つべきである。
- 北朝鮮の貨物船が日立港で座礁した。船主と言っても国家機関だろうが、賠償はせずにどうやら捨て逃げする姿勢らしい。無保険船、不安全構造老朽船の締め出しも急務である。もう一つ。破綻した朝銀信用組合の受け皿になったハナ信組を金融庁が特別監視すると読売1/10朝刊に出た。朝鮮総連への不適正違法貸し出しが破綻の原因である以上当然である。1兆円以上の公的資金が反日活動の助成に使われないようによろしく監視を頼む。
- 産経1/29朝刊に「日本の「新外交戦略」−皆にいい顔はしていられない−」という解説があった。今さらながらの対外銭まきと薄い効果を外信から拾って記事にしたものだ。脱北者支援について拉致被害者と同等の扱いは出来ないと言う記事もその横にあった。昨年暮れ頃の毎日社説に、残留孤児提訴について「国はその叫びに耳を傾けよ」という題が付いていた。中国から日本に来た残留孤児637人が20日に総額2100億円の損害賠償を求める訴訟を国を相手に起こしていた。拉致という自身の意思が全く入らない事件には国家としての援助が必要だし、既に立法化された。しかし少しでも自分自身あるいは保護者の自由意思が入った決定の結果は、むごいようでも自由社会では自分で解決して貰わねばならない。それでも福祉国家として最低限の生活は出来るように生活保護法があるし、現に中国残留孤児訴訟者は十分活用していると聞く。敗戦後の中南米農業移民についても、宣伝とは違っていたと惨状を訴える記事を何度か目にしている。でも訴訟はなかったのではないか。戦争体験は残留孤児ばかりではない。同世代の日本人は、それぞれなにがしかの憂き目にあった。今国を現実に支えているのはその子孫である。支払うのは彼らだから彼らを訴えているのと同じである。ちょっと鼻白む思いだ。
- 中村元建設相の実刑が確定し、彼は衆議院議員を失職した。古河市や結城市を含む茨城7区の選出である。彼は地位を利用した「普通」の贈収賄罪であった。だが、森田喜兵衛京都府議が、正規の手続きは何も踏まないまま、佐川急便の商業登記の役員欄を、登記手続きの隙間をついて、書き換えた事件は普通ではない。京都府と奈良県の県境にある相楽郡の選出である。中村氏と同じく何期か選ばれている。これらの土地の選挙民のレベルを問いたい。京大学生新聞1/20号にパラグアイ通信なるものを見た。題は「アルゼンチンの社会腐敗」である。南米の役人達の滅茶苦茶な腐敗ぶりを経験を踏まえて書いている。日本の腐敗などその比ではないらしい。日本にはまだ不正を怒り正そうとする自浄能があるからだ。でも中村さんや森田さんの態度を見ていると自浄能にも自信が無くなる。
- 東電福島原発が停まってピーク時の電力供給に赤信号が灯りだした。読売1/19朝刊には「原発優先をルール化」という一面記事が出た。副題には「経産省が包括的促進策」「需要低下時火力の出力減」「立地テコ入れ狙い」とあった。原発が5.9円/KWH、石油発電が10.2円/KWHとも書いてあった。脱炭酸ガス発電であることも強調していた。残っている原発に関する技術問題は現代では核燃料再処理法に尽きる。それも濃縮高放射能ガラス固化体の保管についての判断だけだ。反対派は1000年先に放射能もれが土中から現れる可能性をいうが、監理さえ十分なら問題とならないだろう。監理は日本の社会が戦争とか暴動とかの無秩序状態に落ちなければ大丈夫である。
- 名古屋高裁がもんじゅ設置許可を無効と判断した。もんじゅは高速増殖炉開発の第2段階で商用炉に至るまでにはまだ2段階ある。こんな研究炉の設置を法律の専門家がああでもないこうでもないと大判断してみせるのはなんだか漫画チックである。原子力に限らずその他の工学問題ででも医学問題ででも、司法試験を通った人だけが国家の判断を作る権利があるという今日の司法体制は制度疲労を起こしている。勿論今回の高裁判断では専門家の意見は聞いたであろう。しかし判断を決定したのは法律専門家というのは、はやりの言葉を使うなら、「如何なものか」。
- 大泉と用賀の間を結ぶ外環道を地下40mに設置すると国交省と都が合意した。旅行が好きだから自然と道路のアンバランスぶりが目にはいる。都会の渋滞を後目に地方の道路建設にいそしむ政治はどう考えても異常だった。1/24京成電車とワゴン車が踏切で衝突した。踏切停車中の車をワゴン車が追い越した。明白な無謀運転である。だがここは抜け道で朝夕の渋滞が恒常化しており、いつ起こっても不思議でない事故だったという。軌道設置の頃は全くの田園地帯であった場所だ。先へ先へと高架化を進めなかったつけである。多大の地方交付税を贈っている都会が環境整備を後回しにされている。
- アメリカのアメフトNFLチャンピオンを決める試合を8:00から通してNHK BS1が放映した。日本ではアメフト自体が、ついこの間までマイナースポーツだったのにと、時代の移ろいを感じる。大相撲初場所優勝力士は幕内が朝青龍、十両が朝赤竜とともにモンゴル出身者で、幕下、三段目、序の口も外国出身力士であった。日本人力士は序二段だけという結果だった。ここ一番の集中力とかハングリー精神とか色々云われる。国技が国際技になるのも結構だが、プロは開催される場所での人気が第一である。客足が遠退くような相撲であってはならない。
- 読売1/23朝刊によると、フィルム・センターに日本映画全作品を収集する方針を文化庁が出したという。現在「男はつらいよ」シリーズの半分ほどしかセンターにないと聞いて吃驚する。このセンターであったかどうか記憶ははっきりしないが、保存していた映画フィルムを夏に焼失したことがあった。理由がこれまた傑作で、可燃性フィルム保存に必要な冷房を経費節減のために切っていたというのだった。焼失フィルムの内、外国映画はたちまち製作国から補填の申し出があったと伝えられた。外国の、自国文化に対する誇り、普及に対する熱意を感じさせられたニュースだった。日本映画の完全保存などフィルム・センターが出来たその年から始まっていたとばかり思っていた。戦前からやっていて良い事業だ。
- 読売1/23夕刊に狂牛病(BSE)の7頭目が北海道湧別町ホルスタイン種乳牛に見つかったことが報じられた。日本の感染牛全頭が同じ頃の出生である。農水省は全国の同時期生まれの同種乳牛の集中検査を始めたが、26000頭の内200頭しか検査に協力しなかった。国の協力費(6万円/頭)よりも食肉として売った方(8万円/頭)が高いからと説明されている。これは衝撃的な記事であった。99%強の農家にとっては、消費者が受ける狂牛病の危険よりも、2万円/頭の儲けの方が大切と云うことである。感染牛は全頭が全国農業協同組合連合会(全農)子会社の同一工場の代用乳で飼育されていた。狂牛病の病原体は依然不明である。脳脊髄眼球などは病原性が高いが、代用乳原料である牛脂は低い。だが製造ラインには汚染が付き物である。牛の解体中に病原体が混ざる可能性も高い。全農理事長の否定にもかかわらず、すくなくとも無過失責任は免れない。
- 読売1/9に揺らぐ治安に対して「日常の安全」へ体制作りを急げという社説が出た。まだ市民のピストル保持許可までは云ってないが、今のように悪辣な犯罪を野放し同然にするような事態が続くならば、遠からず自衛手段として議論されるテーマになるであろう。先ず軽すぎる処罰をアメリカ並み中国並みにすることだ。中国人韓国人の犯罪が目立つのであるから、期間を限って両国よりの入国者には指紋採取を打ち出してはどうか。当然反発はあるだろう。しかし両国民が国内で問題意識を持たない限り、いつまでも犯罪が続くのではないか。漁業専管海域で違反操業をする韓国漁船を取り締まる海上保安庁巡視船をTV映像で見たことがある。追跡される漁船を周囲の漁船が危険を冒してまで庇おうとする。違反を咎めるよりも仲間を庇おうとする気持ちの方が遙かに強い。わが国との友好のためにあるべき姿を国内で議論してほしいと思う。
('03/01/31)