九月の一面記事

- 日朝国交交渉が小泉首相の平壌訪問によって具体化し始め、世界はそのニュースを歓迎している。拉致問題の前進は、日本が国交交渉再開の絶対条件とした悲願であった。それに対しては北朝鮮・金正日総書記から8人死亡、5人生存、拉致謝罪と言う衝撃的な回答がもたらされた。今まで何十年と日本のでっち上げと逆宣伝に勤めていた国家が、「知らぬ事とはいいながら」と総書記に謝らせた。その総書記は寸前までマスコミの取材に対し、たいして重要でもない問題と回答していたものだ。
- 日本の世論はたちまち硬化した。5人目の生存者・蘇我ひとみさんが、名が出てたった1日で佐渡島の行方不明者であると、それも拉致疑惑者でなかったのに同定できたことは、20数年掛けても梨の礫であった北朝鮮とあまりにも対照的で、怒りは爆発した。「国家テロ」「国家犯罪」の文字が大新聞に見られるようになった。人道支援と称する米援助は7回を数えるそうだが、被拉致者の人権には微塵の配慮も為されないまま、タダ取りされた恨みは深い。普通なら、とうに倒れて当然の軍事独裁制の延命に、奉仕させられただけだったと日本国民は思ったのである。当時の首相、外相は「脳天気」派として、はなはだ居心地悪い立場に立たされている。森さん、河野さん、自民党外交委員会の面々などは、当分は黙りの一手であろう。
- 親が生きているのに、あまりにも高い死亡率である。拉致証拠が確実とされた人、なりすましに遣われた人、生存連絡を取った人が死亡ている。後日バレて、北朝鮮に決定的な不利益をもたらす可能性がある人は消された、と思うのが妥当な思惟であろう。そう言う人たちにはきっと墓も残っていないはずだ。読売(9/25朝)には、北朝鮮は「墓も明示せず」の姿勢だと一面に載った。国交正常化前に経済協力しないと首相が記者会見で云ったという。我々はやっと脳天気外交から筋を通す外交に戻れるようだ。小泉さんを支持したい。
- 毎日新聞は早々と経済協力100億ドルのアドバルーンを上げているが、外務省同様に、この新聞も拉致の重要性をそれほどには重くは受け止めていないと、疑われても仕方がない発言である。交通通信技術の進歩で、みな近隣国になった今日、北朝鮮に国際社会に仲間入りして貰うには最低限の条件がいる。今の彼らには、アメリカがテロ国家としてイラクの次ぎに位置づける十分な理由がある。民主主義国家へ変身して貰えない限り、いかなる援助も日本にとって有害である。引き揚げられた不審船は、北朝鮮の工作母船の疑いが濃厚(毎日9/12朝)である。日本に対するヤクザまがいの行為は、北朝鮮の本質への疑惑として我々を畏怖させるに至っている。アメリカがミサイル、核兵器開発疑惑解明に本腰である理由を今日ほど明確に意識したことはない。
- 北朝鮮の通信社は、会談後10日経ってからやっと拉致に言及した。総書記の謝罪には触れず、北朝鮮として処理済みの事件とした。一般市民の目に触れる記事になるかは不明(読売9/27朝)という。言論統制の徹底した政治体制であると、今さらながら思わざるを得ない。日本の一部勢力が、この事件を使って、北朝鮮に対する敵対意識を吹き込むキャンペーンを繰り広げているという注釈付き(毎日9/27朝)であった。日本の新聞は全部この「一部」に相当するようだ。自国民には徹底的に情報コントロールし、コントロールの効かない他国マスコミは敵視する政治体制が、国際社会には絶対に受け入れられないことを早く悟って欲しいと思う。朝鮮総連は5日後の22日に拉致を謝罪、27日に今までの主張「事実無根」「でっち上げ」を「誤報」として謝罪したと言う(読売9/27夕)。総連は日本にあって、誰に指図を受け、どちらを向いている機関かが問われる。
- 長野県知事選挙で、議会の不信任を受けて失職した田中さんが、不信任派(自民、民主、公明系)が支援する弁護士・長谷川さんを倍以上の得票で下した。不信任派は、1名が議員を辞職しただけで、歯切れ悪く田中さんの初登院の時は拍手で迎えたという。なんだか漫画チックである。政治家としてのけじめなど現在は望んではならないのだろう。議員は間違いなく選挙区を背負ってその利益代表たらんとする。だが殆どは、県全体を考える立場からは遠い存在であるらしい。
- 首相と国会議員の関係もそうだろう。地方代表の総意としての首相、つまり議会による間接選挙の首相は国民の望む首相と違う可能性がある。私は改めて首相直接選挙制の必要性を感じた。そこで横山ノック的人材を国民が選ぶなら、それは国民が悪いのである。幸か不幸か、アメリカ大統領ほどには、日本首相の世界政治に占める比重は高くない。少々しくじりがあっても、そう世界に決定的な影響を与えないであろう。今こそ直接選挙制に踏み切るべきである。
- 東電、東北電力、中部電力および日本原発(揃ってBWR採用の発電所である。PWRの関電、四電、九電は出てこない。PWRには問題のシュラウドはない。しかし対応する炉心槽はある。)の「原発トラブル隠し」が大問題として浮上した。「原発トラブル」と云えばスリーマイルとかチェルノブイルでの放射漏れ事故を連想させるが、主に炉心隔壁(シュラウド)溶接部のひび割れのことである。沸騰水の中にどっぷり浸っている隔壁だ。割れて大穴になっても外部に直接の危険があるわけではない。
- 金属材料は永久不変ではない。製作と同時に使わなくても劣化が始まる。定期的に点検して劣化部分を修理し、ある時期になったら新品に取り換える。技術屋ならそんなことは誰でも知っている。トラブルが起きたら先ず我が身が被爆する。現場は保守点検に細心の注意を払っている。それも常識中の常識である。では何が悪かったのか。原子力安全・保安院に対しひび割れを隠し続けたことである。ではなぜ隠したか。
- 現場技術者にとって保安院は意義ある存在ではないのではないか。保安院にも技術者はいる。しかし彼らは確かに大学では技術系学部で学んだかも知れないが、就職後の経験の積み重ねがない。だから本質は、新藤宗幸:「技術官僚」、岩波新書、'02にあるように事務官僚である。例えば今回話題の材料劣化は科学が入りにくい工学分野で、現場知見や経験則がものを云う分野だ。両者には技術水準に格段の差があるだろう。だから保安院はやたら法令に頼ろうとするだろう。こうなると嫁にとっての姑・小姑と同じで、たまには参考になっても普段は無益な目の上のたんこぶである。
- もしも本式の技術者であるならば、「運転開始後も「新品同様」を求める」(読売9/3朝)ような法令を放置しているはずがない。バカ正直に解釈されたら、毎日シュラウドを取り換えねばならぬ。保安院は改正の検討を進めていたとは書いてあった。だが、最初の原発が出来てからもう何十年と経っているのである。やる気の無さよと云いたい。電力会社上層部は、安い電力を作ってくれる原発の稼働率を上げたい。二律背反事象を背負った現場の唯一の回答は、自分らの技術力で十分安全と見極めた傷は知らん顔で過ごすというやり方だった。だが、それが積もると、立ち会い検査の時は更にウソを積み重ねなければ通らぬ事となる。いつかはバレる事を知りながら今に至った。
- 民主党代表に鳩山さんが辛うじて再選された。民主党に抜きんでた指導者がいないことを露呈した。民主党は、2大政党による議会という悲願とは裏肌に、これからもじり貧傾向が続くのではないか。
- 毎日の社説に「考えよう憲法−負担と給付」というシリーズが始まった。第1回目は「天国はいつまで続くのか。後世代への付け回しは限界」という題である。私自身には、子や孫はおろか、まだ生まれてもいない曾孫(ひまご)玄孫(やしゃご)の所得まであてにして、年寄りが福祉・年金天国(実態はそれほどではない)に安楽をむさぼっている構造を、なんとかせねばと云う思いは強い。今後の議論の深まりが楽しみである。
('02/09/28)