五月の一面記事


有事関連法案とメディア規制法案の国会審議が始まった。日本の将来に多大の影響を及ぼすはずの重要法案群である。確かに、今までは平和に対して我々はお客さんでありすぎた。なんでもありの特権的自由によって、記者ゴロも生む、覗き趣味で辟易させる、包囲網と称する一斉パッシングの脅迫で個人や家族を追い込む等、大衆にはマスコミに対して数々の負の印象がある。だが過去への反省が将来の芽を摘むことだけは避けたい。鈴木宗男議員に対する対北方四島支援関連の疑惑は一段と高まり、事務所や自宅にまで検察の捜査の手が入った。首相は、進退は本人の良識に任せようという。だが、これでは国会の自浄など期待できない。第一疑惑そのものが彼の良識の無さを証明しているから、本人任せとは良識棚上げ論である。
瀋陽の総領事館に北朝鮮亡命家族5名が逃げ込み、それを中国武装警官が追いかけて構内にまで入り込み、全員を拉致し去った。ウィーン条約上、中国主権の及ばぬ地域に、日本側の許可もなく武装警官が立ち入ったことは、「明らかな国際法違反行為である」と言うことで日中外交問題となった。中国側は総領事館の保護行為で、拉致にも副領事の了解を取ったという。その問題は平行線のままだが、家族5名は無事韓国へ亡命した。亡命者またはその支援組織は、アメリカには予めファックスで意志を伝えているのに無視されたとかで、日中韓米の4ヶ国に跨る傷を与えた。瀋陽とは昔の奉天である。
舞台装置を作ったのは韓国NGOのようだ。彼等は日本総領事館には一切情報を漏らさずに、一部始終を多分プロのカメラマンに撮影させた。突然起こった乱入騒ぎに、先ず中国側武装警官隊が過激に反応した。突然の出来事だから、警官は上司の亡命阻止の指令しか頭を横切らなかっただろう。日本側の対応は副領事以下の3名であった。ビデオに現れた彼等のノソノソとした対応ぶりは、大袈裟に云えば命がけの亡命者と、職務には国際法も忘れた警官達の攻防の前では、余りにも緊張のない態度で、あたかも銀行の中でかっぱらい事件が起こったときの行員と言った反応ぶりだった。馴染みの警官が、言葉の通じない闖入者を、無事に納めてくれたと見たのであろう、彼に「オーキニ、オーキニ(謝々)」と言ったという。これは中国側の言い分だが、どうもビデオを見る限り本当らしく思えるのである。証拠物件の制帽や書類を集めて返却するところなど、一体国益防衛本能があるのかと疑った。
総領事館経由亡命の失敗第一の原因は韓国NGOの独善的手法である。相次ぐ亡命騒ぎに中国が警戒を強化しているのに、駆け込まれる方には何も教えていない。日本側に伝えると中国にバレ易いという不信感がそうさせたと弁解しているが、それなら日本を駆け込み寺に選ぶのは矛盾も甚だしい。日本も中国も要らざる外交問題に巻き込まれた被害者である。韓国では日本大使館前でこの問題の不手際を叩くデモがあったと言うが、デモ参加者の主張は的はずれもいいところだ。デモは日本で行われたように、中国大使館前で、亡命許可をテーマにやるべきである。何が大切かと云うことだ。中国の司法の目を潜る闇の事業だから、成功させるためには、相手先とは、公式ではなくても、何らかのよほど確実なチャンネルが必要だ。その後流された決行前の「捕まり北鮮へ送還では監獄行き」というインタビュー録画は、5名の韓国亡命に有力な圧力になったことは認める。
国会議員には「身内では争っていても、外には国益優先で、政官一体の毅然たる態度で臨む」ように心掛けて貰いたい。日中が事実認識の食い違いで争っている最中に、ノコノコ中国に出掛けていって、中国に都合の良い情報をチロとおみやげに貰って、鬼の首を取ったようにはしゃぐのは止めて欲しい。海江田万里衆議議員らの民主党調査団のことである。次々中国側から漏らされる新事実が日本側調査報告に洩れている。外相すら知らない。当事者は板挟みだから2枚舌を使う。近頃の外交官と来たら国益よりもまず我が身を守るために必死だから、当然そう思わなくてはならないのに、調査する人は「仲間意識」優先で突っ込まないし、「善意」に解釈するのだろう。調査は本件に限らず身内でやってはいけない。
自民党の外交合同会議というのであったか、中山太郎氏などが盛んに強硬姿勢で川口外相に噛みつくが、そんな外務省に、何も手を着けず助長してきた元外務大臣、しかも現役時代は対外弱腰の見本であった人たちが何を云うかとも思う。外務省改革に政党人として初めて手を着けた田中真紀子さんは、その意味では偉かったと改めて思う。阿南中国大使の微妙な発言が、亡命者の保護に冷たいとして物議を醸した。それにしても渦中の問題に対する当然秘密の会合における発言が、簡単に外部に漏れるとは、外務省にもマスコミにも、一体国益に対する配慮はどうなっているのと云いたい。
これだけ日本のマスコミの標的にされたのに、中国の新聞は殆ど人民に情報を流していないと聞く。事を荒立てないと云う、中国外交筋の方針に乗っ取った見事な情報管理であり、恐ろしい国という印象も強まった。日本とは別の意味で、つまり統制を乱す反中組織として、中国は出国支援組織に注目しているらしい。中国では北朝鮮の難民など存在せぬと云う立前で、それに合わぬ行動をとる組織は反中国組織と見なされる。中国内の朝鮮族は他の少数民族同様に今後は厳重な監視を受ける方向に行くだろう。
20日のの読売朝刊社説に「中国の模倣品−いつまで放置しておくつもりか」という話が出ていた。中国の模造のために日本が被っている被害総額は、年間1兆円に達するという。それが嘘ではない例にオートバイの模倣品を取り上げていた。中国の年間生産量は世界一の1千1百万台だが、その7割が模倣品だという。中国は国有企業まで関わっている大模倣国家だそうだ。知りながら何もしない日本の産業界、政府の怠慢を責めている。「理系白書」に云う文系天国では、技術はお題目的に云っているほどには重要視されていない。その当然の帰結であろう。中国は、のらりくらりの煮ても焼いても食えない相手だし、幸い理系は権力を持っていないから文句が出ても知れている、放っておけだったのだろう。
下旬のNHKニュースで、中国広東州のレジャーランドやテーマパークの新観光名所が続々建設中であると報じた。独立東チモール、戦後アフガニスタンの惨状の報告も色々聞く。もう中国には経済援助など不要である。従来のつながり尊重で、穏便に事なかれの援助を続けたいというような外務省は不要である。28日の読売朝刊に阿南大使が、政治家にODA不要論の根拠にされそうだという理由で、中国経済楽観報告に修正を指示したという。自分の思い入れに沿った報告でないと通さないなら、調査など不要である。文系天国で初めて出来ることかも知れない。阿南大使には問題が多い。
中国人の凶悪犯罪報道があとを絶たない。日本の殆どの犯罪を引き受けているのではないかと疑うほどだ。中国人は、周恩来首相の頃は、謙虚な未来の友という印象だったのに、今は日本人には嫌われる存在になりつつあるのが、元来は親中派だと思う私にとって、残念なことである。先日テレビで伊丹十三監督の「タンポポ」を見たら、ラーメン屋の中国人シェフと宮本信子扮するタンポポとの珍妙なやりとりが笑いを誘った。横浜南京街を中心に、周恩来の頃までの中国人が営々として築き上げた日中友好の絆はこんな形で具体化されていた。ユーゴスラビアでもイスラエルでもアフガニスタンでも永年培った平和状態が、制圧できると自惚れた民族側の一方的な強欲で簡単に修羅場に変わっている。嫌われる存在にならぬように、中国は人民の国家指導が必要である。
28日の読売朝刊は、エイズワクチンのサル実験が成功したと報じた。国立感染症研究所とタイの研究者による研究という。エイズウィルスは最も原始的なRNA生命体で、そのために忍者ウィルスと呼ばれるほどに変異種を作りやすい。ワクチンほかの免疫療法は、たとえある種のエイズに有効であっても、たちまち別種のエイズウィルスが現れて、折角の研究を台無しにしてしまうと一般には云われてきた。今回のエイズワクチンでは、この変異種対策が為されているのかどうか、新聞記事だけでは読みとれなかったが、一時は人類滅亡の危機かと騒がれたエイズに対する、有効な治療法が増加することは、まことに喜ばしい。

('02/05/29)