師走の政治


本年最後の京大学生新聞は「京大生が選ぶ10大ニュース」、「大英帝国の「世界遺産」」(イスラエル紛争とアフガニスタン問題)、「宇宙物理学の原点」(林研の系列)、「ES細胞」、「米国ニューエコノミー」「キムチ通信」(北朝鮮レポート)などなかなかの内容である。「今年一年を振り返って」と題した論説記事があった。その最後に「一般のマスコミは、えてして暗い話題を派手に報道するきらいがあるが、小紙は・・・、一筋の希望を大きく育てていく報道を目指していきたい。」とあった。わが国の将来を託さねばならぬエリートの卵達の発言には、引退してからは直接は耳に届かなくなった分だけ余計に強い関心がある。この学生新聞には折々勇気づけられる。「一般の」マスコミが「建設型」へ思想改革するのを私も待ち望んでいる。
鳩山民主党の是々非々主義が新しい潮流になってほしいと思った。もっとも注目したのは首相行政指導権強化論である。橋竜内閣の時もそうだったが、立案の段階から与党があれだけ足を引っ張っては、構造改革が時勢に乗り遅れてしまう。国会で公然と議論すれば透明性も上がり、次の選挙にも役立つ。わが国は三権独立を立前にしながら、実質は立法府が行政府にチャチャを入れ過ぎている。私は首相公選論である。大橋巨泉議員は党首をお坊ちゃんのお人好しとこき下ろしているが、世の中の裏を剔ることで飯を食ってきた人は、逆に、表の滔々たる流れが見えなくなっているのではないか。彼だけに限らす、じいさま連は政党の人寄せパンダ役だけこなしておればいい。彼等の世代は殆ど全員が引退していることを忘れてはいけない。また自分の政見で大量の票が来たと自惚れてはいけない。顔が見えるから消去法の結果投票したに過ぎない。小泉−鳩山に将来の光を見た。
朝銀から朝鮮総連経由で北朝鮮に資金が渡っていた疑惑の解明が進んでいる。朝銀の不良債権は終局は日本国民の税金で穴埋めされる。朝連は司法の調査を政治的介入だと云う声明を出した。TVニュースでは集まった組合員が調査員を口汚くののしっていた。呼応するかのように北朝鮮は日本人拉致者の調査打ち切りを宣言した。打ち切りと云うが、調査があったのかどうかすら不明である。頭から拉致はないというが、どういう調査員が何日間いかに調査したかの詳細報告と、その内容に対する日本側との質疑応答がなければ、永久に消えない疑惑である。日本は人道的米援助を実施し、原子力発電施設建設にも膨大な支援をした。拉致を政治カード化するなどとてもつき合えぬ相手である。時あたかも森前首相が率いる日韓議員連盟は訪韓時の共同声明で、在日朝鮮人の地方政治参政権の国会提出で一致したという。こんな時期になんとも脳天気なことだと呆れてしまった。在朝鮮外国人にも同様の権利が韓国国会に提案されるのか。
アフガニスタン戦争が予想外に早く終結を見そうで、自衛隊派遣に踏み切った政治家は一安心であろう。だが、アフガニスタン再建は戦後の日本再建以上に複雑で困難である。何よりも周辺外国が自国国益のためにするあらゆる干渉・誘導を厳しく律せねばならぬ。国内では真の国民軍の設立と各民族グループの武装解除を早急に進めねばならぬ。今のアフガニスタンは日本の幕末の頃に似ている。薩長連合に相当するのが北部同盟だ。北部同盟が旧勢力に圧勝し、自らが国家意識を持って主導せねば何事も成らない。幕末の頃国家としての日本を意識した政治を実行したのは薩長の指導者であったはずだ。私は北部同盟軍がなぜカブールに留まりカンダバルに進軍しないのか疑問に思う。
理数系学部の不人気が心配されている。確かに理数系は「儲からず」「たちまちに時代遅れになる可能性のある」「従って不安定な」立場だとも云える。一方医学部の異常に高い偏差値は何を示すのか。帝京大医学部の事前寄付金が総額年20億円という。医家は儲かるらしい。ただでさえ少なくなった理数系の志望者の一番いいところは医学部に行ってしまうという構図だ。日本の将来は今後の高次産業の発展次第であることは明らかだが、その中核を担うのは優秀な理数系出身者である。お医者さんは老年人口の増大には力を尽くしてくれるが、経済発展にどれほどの貢献をしてくれるのか。国が疲弊して医家が繁栄する姿は想像したくない。健康保険財政に対する小泉首相の三方一両損論で少しは形が出来たが、患者側の負担増と医師側のそれとの極端な差は、国家将来への悪影響は憂慮に余る。日医やその提灯持ち議員達の猛烈な私益擁護運動の結果である。患者側は外国人医師の開業自由化のようなインパクトの強い法案を推進してはどうだろう。自由化の波を被るのは工場の技術者と労働者だけというのでは歪で不公平である。
中国とのセーフガード問題が一段落した。中国のWHO加盟問題に絡めて圧倒的に優位に解決できると思っていたが、そのカードを日本は使わなかった。鷹揚な姿勢を示して媚びたつもりかも知れないが、そんな媚びが通用する相手でない。日本にはもう余裕など無い、使えるカードは全部使って欲しい。相手の口約束だけが収穫とは心細い話だ。ましてや農産物全般に将来展望が開けたなどと思うのは大きな間違いだ。農水省は財務省との交渉で対策費50億円を新たに獲得してしてやったりと思っているようだが、補助金の上にまだ補助金を積んでも競争力は一向に改善しない。早く自由競争にもまれて例えば1村に農家は1軒だけといった体制にならないと、日本は結局はこのお荷物でドウと倒れることとなる。
狂牛病は政治行政的にはエイズの二の舞ヤコブ病の二の舞になってしまった。何回繰り返しても懲りない連中だ。しかしインタビューの牛飼育農家の発言も酷いものだった。狂牛病がイギリスで発生したときあれだけ新聞種になったのに、政府機関の検査態勢と原因調査の遅さだけを非難して、自分たちの消費者に対する責任など知ったことかと云わんばかりとであった。今までのおんぶに抱っこ体制がそうさせるのか、これには呆れ返った。そう言う発言をする人を選んでインタビューしたのだろうか。そう言えばセーフガード問題への農家の発言も自分の利益だけしかない内容だった。対抗処置で関係のない工業製品が800億円に近い損害を受け、その分工場労働者が苦痛を味わったのに、配慮など全然ない言い方だった。端的には日本全体が彼等に食わせて貰っていることを忘れてはならない。
工業立国から高次産業立国へというのが日本の今後の方向である。IT助成はちょっと遅かった。次の高次産業は何か。国立大学進取性向上策、研究者育成補助、私学援助、ベンチャー育成などいずれもまだ姿を見せぬ次の産業への撒き銭である。日本は高次化にとってくびきになっている諸産業から早く自由になって活力を取り戻さねばならぬ。小泉内閣の進もうとする方向は間違っていない。小泉内閣の、なにかと足枷になる利益擁護議員の呪縛を早く外してやりたいものだ。
国債30兆円の発行により国は合計700兆円の累積赤字になる。伊予小松藩は明治維新の頃、藩札で12500両、累積借入金が4000両、合計17000両ほどの借金をしていた。これが今の国債に相当するだろう。一方1年の歳入は年貢米が8200両、その他が2700両だから、合計10900両が本年のわが国の税収50兆円に対応する。小松藩の借金対収入比は17000/10900=1.6、現在日本はなんと700/50=14である。現在的感覚では小松藩は羨ましいほど財政が健全である。それでも小松藩は惣半知という減俸処置で赤字食い止めに努めている。俸給が半分になる激烈な処置である。それを見習って今すぐ国家公務員の俸給を半分にせよとは云わない。しかし予算直接消費の筆頭格である国家公務員や準国家公務員には、なぜ俺らだけが真っ先になどと云わずに、強い国家意識を持って対処して貰いたいと思う。国債は不健全財政にも関わらず今まで国際的信用を保ってきたが、その柱であった貿易黒字体質がここに来て揺らぎだしている。わが国の経済規模は今後ますます凋む一方なのではないかと悲観される。このままでは円はドルに対して1年に5円づつ値下がりするというのが私の見方だ。早く50兆円の枠内の、バランスの取れた財政に帰って貰いたいものだ。
国家公務員1万人弱を削減し、警察官を3年かけて1万人増強する。検挙率がかっての9割以上から今や2割に下がった現実に対処するにはこの手しかない。外国から持ち込まれる犯罪は鰻登りという。タイミングを合わせるように、東シナ海で武装不審船と追跡中の海上保安庁巡視船との間で銃撃戦が起こった。北朝鮮の工作船らしい。外国が絡むといつも及び腰で歯痒かったが、今回は毅然と対処したようだった。早急に沈没船を引き揚げ、この種の平和反逆行為国家には声高に絶縁声明を世界に発信して貰いたい。金韓国大統領の太陽政策に多少とも希望を抱いていたのに全く残念だ。

('01/12/24)