
- 津軽を旅して、蝦夷に思いを馳せた。この縄文人の後裔はやがては大和民族化するが、どこからどんな文化を背景に移住してきたのだろうか。
- 日曜日(8/19)のNHKスペシャル「日本人はるかな旅@マンモスハンター・シベリアからの旅立ち」を見た。縄文人人骨から抽出したDNAの鑑定の結果は、バイカル湖畔のブリヤート人との共通点が非常に多いという。朝鮮人、南中国人、台湾人などと共通する特徴を持ったのが各1体だったのに対して、ブリヤート人とは30人近くが共通していた。バイカル湖畔のイルクーツクには氷河期の極寒冷期であった2.3万年前の住居跡(マリタ遺跡)がある。人が太古に住む土地としては常識を越えている。理由として、そこにはマンモス、トナカイなどの食用大型獣が豊富で、かつ狩猟用石器に改良があったためと云う。角骨の両面に鋭利な剥離細石片を剃刀の刃のように埋め込んだ槍である。今では絶滅した北方性の毛犀(ケサイ)やホラアナ(洞穴)ライオンも住んでいた。花粉化石から見て、短い夏にいっせいに花咲く地帯であったとか。
- 化石氷の中に閉じ込められた大気の酸素を分析すると、古代の気象が正確に判るという。1.5万年昔になって氷河期が緩み、大型獣を追って北方アジア人は東方へ移動し出す。サハリン対岸のアムール川々口あたりに同系石器文化遺跡があるという。一部は遠くアメリカ大陸へ、一部は当時陸続きであった樺太北海道へやって来る。氷河期でも津軽海峡は深く水深100mだったが(朝鮮半島と対馬の間の海峡も空いていた。)、海の氷結を利用して難なく渡り、本州をどんどん南下してついに九州南端まで分布し生活を始めた。かの大型獣相手の石器は同じ形式のものが北海道でも見付かっているという。民族移動の証拠である。
- 日本のナンモス象はしばらくの間に食い尽くされ、それからは小型獣相手の弓矢に狩猟の道具が変化する。氷河期は針葉樹林であった日本はやがて広葉樹林に代わる。草原が消え森林が生育し始めた状況は、大型獣が生活しにくくなった理由でもある。ドングリの食用化に役立ったのが薄手の土器の発明で、エジプト、メソポタミア文明よりもこの土器の発明は早かった。薄手の土器は非常に作りにくい。獣の毛を粘土の繋ぎに使っている。ドングリを煮てタンニンの渋みを抜くのである。我が祖先は工夫を凝らして生き抜いて行く。
- 縄文人の有力な起源の一つが北方アジア民族であるとは、何年か前に千葉県立中央博物館での講演で聴いた。しかし更にブリヤート人との親近関係まで確定できるとは今回初めて聞いた話だ。DNA解析様々である。イルクーツクを訪れた森田キャスターは自分のそっくりさんに驚いたという。そう言えば森田さんは縄文顔である。人骨の科学的な比較を聞きたいものだ。DNA解析など出てくる前は人骨比較は、唯一と言ってもいいほどの有力な物的証拠だったし、今もそうなのだろう。もう一つ是非発表を聞きたいのは言語学的な比較である。
- 日本語には北方ルーツ説と南方ルーツ説があってよく分からない。印欧語系民族では大成功を治めた言語学的解析も日本語の起源には歯が立たない。私は北方説を高校で習ったが、文法的にはアルタイ語系であることは確かでも、単語の共通性になると朝鮮語との類似性はとたんに曖昧になる。著名な言語学者大野晋先生は、なんとインド先住民の使うタミル語との親族性を強く主張なさっていると聞く。戦後しばらくして、中国雲南省の一少数民族の言葉との単語の類似性を捉えて、日本人南方起源説を書いたお医者の本が大ヒットした記憶もある。南島系説、チベット・ビルマ語系説、東南アジア諸語系説など中国語系以外の様々な学説があるという。
- 言語から攻めるとき要注意なのは、縄文人と半島経由と思われる弥生人の間の文化交流がどうだったかである。DNA解析で今の日本人の血は3割は縄文系だと昔聞いた。旧石器人の血をもろに引いた縄文人が、言語文化の上でも現代に痕跡を残していると想像するのは楽しいことだ。
('01/08/21)