文月の焦点


地球温暖化防止は誰しもの願いである。難産であったが世界のコンセンサスが京都議定書にまとまって前途がやや明るくなった。と思ったらアメリカの新大統領がごねだした。一人勝ちに奢る国の身勝手が世界を危機に陥れる。かの国は全てが自国のイニシアティブで動かないと承知しない。他国への干渉はのべつまくなく行うが、自らが手を縛られる条約は極端に嫌う。確かに最近のアメリカの我が儘ぶりは目に余る。同文のEUがこつくのは当然である。日本もアメリカの鼻息ばかり気にせずに、世界の悲願に向かって力強い一石を投じたらどうか。毎日新聞は毎度このような主旨の発言を繰り返していた。
ジェノバ・サミット、COP6(気候変動枠組み条約第6回締約国会議(地球温暖化防止ボン会議))での我が内閣は満点の行動だった。久々の外交勝利であったと思う。アメリカ取り込みを表の武器に、議長がこれ以上ないバーゲンと自嘲するほどに、条件の緩和を引き出した。四面楚歌のアメリカからはわが友呼ばわりされるし、いつも脇役で銭だけ背負わされていると僻まされた従来とはうって代わって、キャスティング・ボートを握る快感を味わさせてくれた。小泉首相、川口環境相、ご苦労さん。
毎日新聞はこれで退路は断たれた、早期批准でやる気を世界に示せとけしかけている。しかし私はそんな単純明快な論理には不安を感じる。世界は景気減速に向かっている。日本はその先頭にいる。世界不況の引き金役を避けながら、構造改革をやりつつ、国の債務を減らす。失業者対策はますます強化せねばならないし、破産が迫る医療保険は一番身近な難問である。労務費1/30の中国が既に農業に軽工業にと日本を凌ぎ始めた。今後を支えるためには危ない綱渡りを強いられる。並の温暖化対策は経済にはほとんど負の効果しかない。それでも必要だが、強いアメリカから一歩遅れるぐらいのペースで、やっとバランスが取れるのではないか。毎日新聞は日本が無比の経済実力を誇った時代の感覚のままなのだろう。簡単に「やる気」なんて云って欲しくない。景気対策になり、しかも実生活に影響を与えずに炭酸ガスを減少できる直接対策は原子力発電所ぐらいだ。「やる気」に引っ掛けて原発推進を唱える元気があるのだろうか。
IT産業の経済効果は寿命が短かった。平均株価が安値を更新して行くのを見ていると、またまた弱気が頭を擡げてくる。今となっては一般投資家は手持ちの株をそっと寝かせておくしか手がないだろう。2-3年先に何かが機関車になって景気を引っ張っているとでも夢見ながら。本当は大破局かも知れない。だから貯金するのだと考えられるとデフレのスパイラルを助長する。バブルが弾けるまでは寄りかかれる大樹が幾つもあった。今はそのどれもが将来もそうだとは言い切れぬ。「ええじゃないか、ええじゃないか」でパッと気前よく今を楽しもう。そう考えてくれるとお金が世間を回って景気が立ち直る。てな理屈をこねながら、私はまた旅心そぞろである。
ハノイで中国唐外相と田中外相の会談があった。先方は小泉首相の靖国神社参拝阻止に大半の時間を使ったという。参拝は何に対して行うのか、先方は戦争犯罪者に重点があり、首相は戦死者何百万人かに重点がある。要するに哲学の問題だから、先方の言い草は思想を強制するもので、自由主義国国民から見ればなんとも理解しがたい姿勢であり、内政干渉どころか個人干渉の匂いがプンプンする話である。主義主張は譲らないのが小泉さんだから、承知の上での茶番劇だともうけ取れる。当面は中国は手を振り上げたままで、韓国同様に友好交流関係を制限するような対抗策を採るであろう。田中さんは親父さんの関係で中国の大のお気に入りのようだが、小泉さんに伝えるなんて云わずに、ここでは哲学問題ははっきり哲学問題だと突き放すべきである。小泉さんは会談と同じ日に参拝すると明言しているのだから。承知の上での手練手管だとしたら彼女は大外相である。
次の日は日韓外相会談が報じられた。毎日新聞は靖国と歴史教科書を第1面の大見出しとした。どうして何回も大見出しにするのだろう。私にとっては日露国境問題のある水域への韓国漁船の進出の方が大問題で、出漁を日本に断らず相手国にだけ断って実行するのであるから、友好国とは思えぬ暴挙である。田中外相ははっきり指摘したが、見出しにならなかった。毎日新聞はなぜか外国には優しい。
同じ朝刊の記者の目に「過去から目をそらさぬ努力−日本も見習うべきだ」という記事があった。戦争犯罪のドイツ流清算の礼賛である。だが民族浄化という思想がなかった日本に、礼賛の実例とされたような極悪非道な罪人がいたとも思えない。日本は民族あるいは国家を対象に戦争の償いをしてきた。記事を見る限りではドイツは個を重点対象にしているのだろう。どちらの原理が正しいかは判断が付かない。援助額総額では日本の方がはるかに多く現代もその流れが続いている。おくびにも出さぬが、被援助国は内心日本の援助を頼りにしている。隣(ドイツ)の花(清算法)は赤い(上面は優れて見える)。日本に自信のない人の記事は読みづらい。「共同教科書委員会」は望むところである。私はかってそれぞれの哲学で幾通りもの歴史教科書を作ればいいと書いた。小泉流哲学もその一つであろう。哲学と哲学はどう討議しても終局どっちが正しいとは決まらない。小泉さんに、節を曲げて中韓の主張を取り入れよと云っているようだが、政治家としての寿命を終えよと云っているのと同然である。空論は止して欲しい。
インドネシアが大統領の交代を巡って揺れている。首都は今にも騒乱が起きそうな気配である。だが、前大統領のアメリカ行きで納まるようでホッとした。政権交代にきちんとした公然のルールがあり、そのルールが厳正に粛然と守られるのが民主主義国の基本である。多民族国家多宗教国家ほどこのルールは大切なはずである。まだインドネシアは民主主義国として成熟していないのだろう。日本の民主主義的行事参議院議員選挙が28日に迫った。地方区はともかく比例代表区は選びにくい。60-70のオジンでも困るし、30代に入ったばかりの若手も元気は買うが今一信用しかねる。宣伝文句は極端な人を省くだけの効用しかない。結局学歴も入れた過去の実績を第一に、e-メールや立会演説など本人のイメージを直接収集する努力をして選ぶこととした。
読売新聞26日夕刊に東工大電子投票研究グループが「インターネット有権者支援エージェント」なるホームページを立ち上げたという記事が出た。早速テストすると、私の意中の人と質問回答によるコンピュータの推薦する人が一致した。残念ながら今やれるのは地方区それも関東だけである。27日毎日新聞の朝刊第5面には、インターネット利用が公選法で制限されている実状を報じていた。候補者のホームページにはたいてい選挙中につき更新は中止すると掲示してある。インターネット時代にどうしたことか。ことに比例代表区立候補者の実像には殆どアプローチの方法を持たない一般市民が、相応しい人材を選ぶ機会を制限する結果になっている。双方向性が活用されて、突っ込んだ討議がネットを通じて流れるような日が来ることを期待したい。
投票率60%以下ではまだ脆い民主主義国でしかないと思う。皆さん投票に行きましょう。

('01/07/26)(27補足)