ゆめテク見学記


ゆめテク「21世紀夢の技術展」を2日がかりで見学した。会場の東京ビッグサイトは規模壮大だった。でも近くには晴海の国際見本市会場も幕張メッセもある。出かけたことはないが、横浜のみなとみらいにも大きな展示ホールがあるそうだ。インテックス大阪を初め他地域にも多分各県一つづつ展示館がある。それぞれ豪華さを競っている。こんなに展示用建造物が必要なのだろうか。馬と駕篭の時代に出来た行政単位を未だに変えることの出来ない愚かしさの象徴のように思える。幕張メッセなど、東京ビッグサイトが出来てからは、めぼしい催しが無くなってしまった。
まず国立民族博物館のブースへ行く。年代測定にC-14質量分析を用いる。これは江戸東京博物館の特別展で知った事実だが、詳細が知りたかったのである。年輪測定法との対比で1万年ぐらいは正確に計れるそうだ。N-14とC-14の分解については疑問が残った。前処理で分離しているように見受けられたが。東北大学金属材料研究所の展示と実演は面白かった。超伝導下の磁石についての知識がなかったのでよく分からなかったが、若い学生達の熱演には好感が持てた。大学の中では東大の出品が圧倒的に多くかつ金がかかった展示であった。官立の研究機関の展示には質問にそこそこに答えてくれる説明員が配置されていて問答は楽しかった。しかし、企業関係の説明員は殆どが駄目だった。
船の揺れ防止法には、年とってから船酔いするようになったせいか、関心がある。波の解析から導かれた方法が模型で示されてあった。ただしフェリーのような水平翼法ではなく専ら操舵法によるもので、やや不満であった。GPSを3次元的に利用して飛行機の離着陸に使う。もう1個の衛星で数cmの精度を出せるという。JR東海は山梨のリニヤカー実験だった。車の転がり摩擦がゼロになっても空気抵抗は速度の自乗に比例する。むしろ遅く走ったら省エネ型交通機関にならないか。JR東日本はもっと便利なICカードSuicaのデモンストレーションだった。展示場ではほかにも色々便利な電子化設備が登場するが、そんなに便利になっても人類にとってどれほどの進化を意味するのか嫌気が指した。鉄鋼連盟のこれからのスチールは夢があって良かった。高さ1000mを越す建造物が新スチールで可能という。
三菱自動車にアイドリング自動停止というエンジンGDI-ASGがあって実用化されていると聞いた。1100mlで30km/lを実現しているという。ハイブリッドのプリウスでも29km/lだから、たとえエンジン排気量が少々大きくなっても、車価格は据え置かれたまま燃費だけは安い自動車になる。ハイブリッド車割高の欠点が克服できる。今後の本命になるのではないかと問うたが、一向に要領を得ない返事でガッカリした。スズキは身障者用の軽自動車、トヨタは未来都市の未来自動車を描く映画を見せた。ホンダは人間ロボットの進歩を展示していた。
太陽電池はあちこちで見た。家庭用については京セラで主に聞いた。今の結晶シリコン型だとエネルギー転換率が15%max寿命20年計算でコストが70-100円/kwhと言う。家庭用の2-3倍のコストである。一軒分のイニシャルコスト100万円ぐらいだそうだから、意識の高い人の視野には入ってきたと言えそうだ。劣化は案外少ないようだ。電池パネル面を覆う保護硝子の汚れは埃の質次第で、意外なのは敦煌あたりの砂風は硝子面を汚さないし痛めないと云う話であった。これに反して桜島の火山灰は汚れを落としにくいと云う。普通の都市では年1度ほどの洗浄で良いらしい。衛星用はアモルファス・シリコンで結晶型より遙かに薄いそうだから、これが家庭用に出回るようになればもっと安上がりになるのかも知れない。
東レのコーナーでは環境に優しいポリマーとして生分解性の繊維と分解のデモンストレーションをしていた。オリンピック用として話題になった水抵抗の低い水着は、表面が流れ方向に浅い溝をぎっしり平行に並べた構造だった。水をはじく布も面白かったが、私の「何故」には答えて貰えなかった。極細繊維をランダムに織っているようだ。
万有製薬コーナーで骨の健康の講義と測定を受ける。私は平均より骨密度が3%低いと云うことだった。その3%が有意差かどうか食い下がったが一向に埒が明かなかった。年齢に対する平均密度曲線があってそれに対する高低を云うのだが、密度には分布がある。その標準偏差がどれほどかも知らずに診断するのだからお笑いだ。でも商品宣伝臭のないコーナーで良かった。おみやげに中丸三千絵のCDを貰った。戻ってから何度も掛けた。今までにあちこちの展示会場を渡り歩いて色々貰ったが、最上の土産だったと思う。第一製薬の癌細胞選択攻撃性を与えるドラッグ・デリベリ・システムの話は理解しやすく夢があって面白かった。あと4-5年かかるようだ。ポリアルコールに抗ガン剤を抱かせて免疫反応を避けながら癌に集中するというシステムである。ミクロの冒険という映画が昔あったが、あれと同じように人体の中を潜ると言うシミュレーション体験をさせてくれた。理化学研究所のヒトとチンパンジーのDNAから見た親近度を示すポスターは面白かった。だが何処がどう似ているか解説してくれる説明員は居なかったのが残念だった。
海洋科学技術センターのしんかい6500模型の説明員に、球状シェルの圧壊強度は引張りに比べたら経年劣化は少ないのではないかと質問した。何年か毎に取り替えるそうである。覗き窓はアクリル樹脂でこちらはもっと頻繁に取り替えるそうだ。世界一深く潜れても、うなぎの回遊サイクルが判った程度の成果ではあまり金を掛ける必要がないのではないか。国立天文台がハワイに建てた大反射望遠鏡天文台の模型に見入った。反射鏡と同じ大きさの真空蒸着器が備えてある。ある期間使えばメッキをやり直す。主鏡はアルミメッキ、補助装置は銀メッキだそうだ。イオンスパッタリングで蒸着する。反射鏡だから素材は硝子でなくても良いはずだが、熱歪みから云って硝子を上回る材料はないらしい。外部からの赤外線輻射遮断の青い円筒形ドームになっている。並んで立っている他の天文台は白色球形だが結構吸収するらしい。白が吸収するとは意外だった。
宇宙発電計画も分かり易い将来計画である。衛星に大きな太陽電池パネルを取り付けて2.5GHzほどの電波で地上に送電する。半分ぐらいがロスになる。電池の寿命は衛星の寿命4-5年より長い。技術的にはほぼ確立されているという。アメリカの計画では送電量が1Gwであった。ちょっと発電所にしては小さい。科学目的の衛星はアイデアがある場所で研究すればよいから日本でやる意味は十分ある。しかしこれを打ち上げるには国産のロケットが必要不可欠なのか疑問に思う。垂直離着陸機とか超音速機とかの研究も、すでに海外に遙かに先行して実用化している国があるのだから、何でもかんでも八百屋のように一揃えしないと収まらぬ姿勢は肯けない。アメリカのように世界の頭脳を吸収して行くシステムが機能している国ならともかく、いまわが国は頭脳の分散希薄化に悩んでいる。すでに追いつけぬほどに離された技術は捨てて、特徴あるオリジナル性高い問題に取り組むべきである。異なる省庁毎に別の研究所、事業団を持つのも無駄だ。
情報・通信部門には食傷気味の展示が多かった。その中でソニーのロボット犬は、どんどん疎外されて行く人間に癒しの道具を与えるという意味で、注目すべき展示であった。ここでも数々の似たような名前の国立の研究所に出会う。統合すべきである。何故ここにあるのか判らなかったが、凸版印刷の自在鑑賞映画「唐招提寺−鑑真と東山魁夷芸術−」は面白かった。鑑賞者がバーチャルに観賞場所を自在にコントロールできるシステムは、最近では歴博と東大博物館をケーブルで結んだ実験で見た経験がある。それはCRT上の実験だった。凸版のは映写幕一杯の大画面で臨場感溢れる迫力満点の映像で満足できた。

(2000/08/06)