新宿御苑:サクラにカラス


新宿御苑の花見に出かけた。お江戸の桜をどこか1ヶ所毎年違った場所で眺めて歩くことにしているのである。千駄ヶ谷駅で降りたのは良かったが、道を反対に取ったために結局大木戸門から入った。入園料200円を取られたが、取らねば園内は人で埋まってしまうだろう。ビニールシートを敷いて飲食を楽しむ人々は結構大勢いたが、御苑であるせいか、ゴミを散らかし酒に騒ぐ人はなく気持ちよかった。皇居の西の丸公園でも大体同じであるのを思い出す。何か皇室関係だとまだ狼藉を自粛する雰囲気は残っているようだ。白幡洋三郎「花見と桜」に、明治の頃は上野は上品な、隅田川ほとりは庶民的な花見だったと書いてあったのを思い出す。あのころは元将軍家への遠慮からである。勿論その頃は皇室庭園は未開放だった。
桜は丁度見頃であった。殆どは見事な大樹であった。ソメイヨシノの薄桃色を基調にして、純白のオオシマザクラ、やや色が濃いコヒガンサクラそれにまだ蕾段階のシダレザクラと言った配置である。ヤマザクラは1本見ただけだった。他に本数はぐんと数が少なく割に引っ込んだ位置で色を添えているという雰囲気に置かれたアメリカという園芸種、カンヒザクラ、双方ともぐっと紅が増す。アメリカとはちょっと変わった名なので百科事典で調べるとソメイヨシノの実生の北アメリカ帰りとあった。
最後に見た八重桜は変わっていた。同じ木に深紅色の花と薄紅色の花が混在するのである。同じ枝に両方の花があったり、枝全体が深紅色だったり。だから接ぎ木ではないのである。花びら一枚に薄紅と深紅が放射状に並んだり。ボケにこんな配色の木があることは知っていたが、桜にもあるとは知らなかった。その後ゲンジシダレという桃の木に付いた花が同じく紅白入り交じっているのに気付いた。サクラもボケもモモもバラ科である。入り交じった花を付ける木は多分いずれも園芸種で、自然では嫌われる交配を強引に人工的にやらせて発現させたものである。バラ科ではそうなった。では他の植物では、と考えて記憶を辿り始めたが、それがさっぱりなのである。ツバキ科には見なかったようだ。ツツジ科にもないようだ。他色々思い浮かべるがどうも記憶にない。園芸種に草花は多い。同じ株や蔓に別色の花を付ける種類はまだ見たことがないように思うが、あまり当てにはならない。一度植物の先生に尋ねてみたい。
1時間ほどだったが新宿御苑でいい花見正確には園遊が出来た。ただカラスが多い公園で桜にカラスはそぐわないなあと思った。東京の空はカラスが制覇しているとは聞いていたが、なるほどと実感した。どうもカァカァと集団で、ハイエナのように、花見客のこぼしものを拾って歩く姿は興醒めである。カリンの実がなる頃に訪れた小石川の東大植物園も、ヒッチコックの「鳥」を見た印象が強いからでもあろうが、一人で歩くのが怖いほどに群れていたのを思い出す。その次ぎに多い鳥は鳩である。「花見と桜」には桜に鴬という歌が引用してあった。私の住む千葉はまだウグイスである。佐倉の城址公園であったか、いい声を聞かせた。

(2000/04/27)