
- 秩父への旅は今回が弐回目である。最初は20年は昔だったように思う。ガイドブックの標準コースに沿って札所巡りに近いハイキングをやったように記憶する。歩き足りなかったのか戻りに宝登山神社、鉢形城趾を訪れている。今回の予定は3日秋葉原9:00-新宿9:40-池袋(10:10)-<関越道>-秩父(秩父夜祭を見物)-越後湯沢温泉(泊まり)、次の日、越後湯沢温泉-燕・洋食器センター-寺泊(買い物・自由昼食)-<関越道>-池袋(19:00)-新宿(19:30)-秋葉原(20:10)だった。クラブツーリズムのバス旅行である。この会社だけで150台の観光バスを仕立てたという。関東地方この年最後の大祭だけのことはある。
- 秩父に着いてから屋台が動き出すまでの6時間弱を町見物と催しもの見物に費やす。小さい町だから群衆に合わせてゆっくり歩いても端から端までまあ半時間である。通りの両脇は仮設店舗で埋み尽くされている。いつも思うのだが、これも屋台と言うから紛らわしい。平成の寅さんが売っている品はおでんにたこ焼き、お好み焼き、やきそば、太鼓焼き、バナナチョコレート、じゃがバター、シシカバブーに串団子。中近東から来たらしい寅さんは町の外れでトルコ風のベタ焼きを売っていた。ビー玉、お面に賞品が玩具のくじ引き、いつものお祭り風景である。だが、屋台の数は今まで見た関東のお祭りの中で一番多かった。
- 秩父神社境内には屋台2台が引き込まれていた。神殿の正面に向けられた屋台では舞が奉納されていた。踊るのは小中学生ぐらいの年頃の2人で、烏帽子姿の男の子とお姫さま姿の女の子が屋台の狭い舞台で踊る。ここの屋台は囃子方は障子の中で見えない。神楽殿ではお神楽奉奏が行われていた。舞手が4人というのはあまり見たことがない。朝10時頃から始まったらしいがその時7番目ぐらいを舞っていた。もう一度戻ってきたのが4時頃だったが、その時やっと最終演目になっていて舞手が舞台を一周して楽屋へ引き揚げようとしていた。
- 祭屋台を本町通りや秩父鉄道秩父駅前広場に置いて観衆に見せている。佐倉、佐原、川越なんかと殆ど同じくらいの高さ幅である。台車に金輪の付いた木製の車が着いている。飾りの彫刻水引幕などなかなか豪華である。D-マート前の広場で中町屋台を使った歌舞伎が演じられていた。当番制でこの年は中町というわけ。屋台の両側に芸座という張り出しを作り全体を舞台にする。
- 日が暮れて観衆はどんどん増えてくる。屋台行列開始まであと1時間ぐらいになってから、予備知識を仕入れに秩父まつり会館に入った。1階に実物大の笠鉾と屋台が各1台ずつ展示してある。模造品である。笠鉾には竹に紙の花を結んだ飾りを数多く枝垂れさせて三段の笠を華やかせている。笠自体は須坂のそれとよく似ている。ただ須坂では笠だけなのがこちらではそれが屋台に乗る。館員の話では花模様にするのお宮の境内でだけでそれも何年かに一度であるらしい。我々は結局実物にお目にかかれなかった。
- さて行列。屋台の上から綱を引く人たちあるいは観客にそーらおーらと煽る。曳き子は悠々と牽く。怪我人など出るはずのない大らかな曳山である。300年の伝統があるそうな。宮地屋台はえらく派手派手の着物を着た一団が行列の運営をしている。保存会のメンバーだと言った。その次の屋台の取り仕切り人たちは特別目立った服装でなかった。相談役と書いた提灯を下げた人にあれこれ聞いた。彼は市会議員だった。人々は親切だった。行列が始まる頃からドーンドーンと花火を打ち上げている。裏道を通って行列の到着点である御旅所に行く。ここも出店だらけ人だらけでおまけに行列の頃には広場に人を入れない。観覧席予約の人か、僅かな隙間を長時間席取りした人だけがそこの行事を見ることが出来る。私らは祭の雰囲気をかいだだけでバスの待つ駐車場に引き返した。
- このお祭りの注意事項。まず食事。固定店舗はどこも長蛇の列である。鯛焼き屋まで長い列だった。寅さんにお世話になるつもりがない人は腹ごしらえにご用心。それから我々は十分厚着だったが、それでも冷えた。予報では最低温度1度という事だった。だから便所が近くなる。デパート、スーパー、公共施設の便所はいつも満員であった。男は簡単だが女は大変である。男の大便所、身障者の便所など随時使っていた。そのつもりで行くことである。
- 翌朝湯沢の宿の窓から眺めると山は一帯が雪景色であった。でも例年より降雪は少ないそうで、山は次のIC塩沢までは何とか白いが、それより低地になるとまだ枯れ草の色のままである。スキー客には結局一人もお目に掛からなかった。
- 日本一でっかい大鳥居は弥彦神社の鳥居である。そこを潜って参道を山にどんどん近づく。途中から折れて信濃川分水運河の脇を走る。信濃川本流は意外と幅狭いし、分流の水量も思ったほどでなかった。冬だからだろう。佐渡島がぼんやりと見える海岸線で運河を渡り寺泊に着く。初めて訪れる土地である。魚屋で焼き鮎を食う。予め焼いた魚をあぶりなおしてその場で食わせるのである。350円也。安いのは落ち鮎で腹の子を吐き出した後だからであろう。腹部にだいだい色の薄い帯状模様がどの鮎にも残っていた。寺泊の魚屋は有名らしく、そこを目当ての買い物ツアーが東京を走る電車の吊り広告に見えるほどだ。茨城や青森、福島などのツアーでも魚市に連れていって貰ったが、どの店でも一角で焼き魚をやっているのは寺泊が初めてである。鯖、烏賊など当たり前の魚の他に、アナゴという真っ黒に焼いた魚がある。関西で云うアナゴとは種類が違うというので750円で2本1束を買う。
- あちこち市場を眺めた後ちょっと道路に沿って散歩する。市場からは数百メートル離れた店で神棚の飾りを売っていた。御神酒の徳利に挿す竹製の飾りを懐かしく眺めた。母が神棚に備えるのを最後に見たのはもう何年昔だったろうか。海岸公園の植物を見る。トベラの黄色い実がはじけ掛かっていた。はじけると中は真っ赤な種である。あとでシャリンバイと気付いたが、青黒い実がぎっしり付いていた灌木もあった。ヤマグミも赤く実っていた。
('99/12/16)