
- 夏になれば鉢植えの朝顔が可憐な花を咲かせ風鈴の音が涼気を誘う。この我々の少年時代にはどこでも見られた風情が途絶えかかっている。歴博くらしの植物苑で「伝統の朝顔」展を見て昔を懐かしんだ。貰った種子をいつか花咲かせてみよう。朝顔は文字通り日本文化の華である。
- 朝顔といえば色とりどりながら花はラッパ状に開いた丸咲きの合弁花と決めていたが、違うのである。離弁花あり、離弁でなくても深く切れ目の入った合弁花ありだ。花びらの先端も様々で巻いたもの畳んだもの捩れたものいろいろある。花の色は桃赤青藍紫あたりは記憶にあるが、黒に近い暗赤色の朝顔には初めてお目にかかった。ただハナショウブと同じく黄色の色素を持った朝顔はないようだ。(プリントには、江戸時代までに白と薄い黄色の花が登場してくると書いてあった。白色と見間違うほどの淡い黄色の花はあったかも知れない。)斑模様は見なかったが、花びらの軸に添って白い筋が放射状に伸びる花は幾つもある。(プリントには斑の品種があると載っていた。)
- 朝顔の葉はカエデ型とばかり思っていたが、千差万別で、あるときは普通の楕円型でありある時は枝垂れ柳のように細く垂れ下がっている。もう糸状といって良いほどの細い葉を付けた朝顔もあった。葉巻のようにたくれ上がったのや、同じ株の葉がいろんな姿を見せていわば無定型葉を付ける「七福神」という種類もある。朝顔を奇葉で楽しむいわば観葉植物的鑑賞法があるとは知らなかった。
- 肥後の園芸種がある。お殿様の庇護で開発され、今は保存会の手で種の保存が計られている種類である。ハナショウブにも肥後種があった。聞いてみると肥後には計6種の園芸植物が独自に開発され今日にもたらされているという。平和と富の集中と何よりも殿の高尚な趣味のお陰である。当時の園芸家はメンデルの遺伝の法則を既に知っていたという解説だった。朝顔は親木から全く似ても似つかぬ出物と称する奇花奇葉の品種を1/4とか1/16の割で生み出す、出物は劣性遺伝子の発現結果である。出物は化け物で、雄しべにも雌しべにも本来の機能がないため親木で保存せねばならぬ。江戸の養蚕家がメンデルの法則を実質知っていたと思われることは、いつか歴博展示の感想に書いたように思うが、これらも江戸時代の志高い人々のお陰でスムースに明治の文明開化を乗り切れた証の一つであろう。
- 種の保存について聞いてみた。種子の冷凍保存で30年ぐらいはいけるそうだ。元々種子は生命維持力が強い。大賀蓮など1000年も泥炭の中で命を保つことが出来た。しかし少しづつ死んでゆくそうで、一番確実なのは毎年咲かせて種子を採る方法という。保存会などは厳重なルールのもとに「家」が親子代々種を繋いできたそうだ。園芸家などには根性の固まりでないとなれない話のようだった。変化朝顔という園芸奇種は全体に貧弱な体躯で盆栽の松のような印象でもある。特別な興味があるのでなければ、一般には大輪の朝顔が良いことを最後に付け加えておこう。
('99/08/06>