荒唐無稽


長崎新幹線など荒唐無稽だと石原都知事が「失言」したとある新聞が書き立てた。私も長崎新幹線は荒唐無稽だと感じているが、何故「失言」と断言するのか新聞の真意を疑っている。いずれ破産するに決まっていて、その尻拭いを国民が税金でやる。国の税金の上がりに占める東京都の割合は、多分、九州が丸ごとぶつかっても到底及ぶまい。極端な話が、都民の褌で都民など殆ど関知せぬ地域の「結構」を引き出そうというのだから、都知事が顔色を変えたっておかしくない。
久しぶりに四国に旅行してそこでも荒唐無稽にいろいろぶつかった。四国一周の高速道完成に血道を上げる先生集団がいる。陸橋から見た松山道はガラガラだったのにどんな頭をしているのだろう。私は徳島FTから上陸し、あとは一般国道を走ったが、東京や千葉の渋滞に比べれば嘘のような流れ方でスイスイと走った。ただ戻りは川之江で渋滞した。これは製紙会社付近で丁度ラッシュアワーに重なったためもある。本州四国連絡橋は3本目になった。最初の1本瀬戸大橋だって通行量は予定以下で大赤字というのにあとはどうなるのだろう。3本目のしまなみ海道は橋が出来ただけで更に高速道の接続のために土木工事が進んでいる。まだまだ金を食うつもりである。
今治波止浜から馬島を経て大島にわたる来島海峡大橋は全長4kmをこすそうな。今治港から観光遊覧船に乗って橋桁あたりを周遊する。橋の作る曲線が瀬戸内海の島嶼にマッチして美しい。人工の角張った建造物は丹下健三の作品でも日本の自然に合わないと思っているが橋の曲線は良く映える。丹下健三はしまなみ海道終点の今治市出身の建築家である。橋下に船を通すために当然背が高いのだが、それが島嶼とバランス良い風景を作っているのがよい。歩道も自転車道もあり、馬島に降りる道が見えた。船が橋の付近にいた時間は10分ぐらいだったろうか。子供がバスが来たと喜ぶくらいだから車の通行量など知れている。自転車は2-3台が停まって見下ろしていた。別の日に今治側終点のインターチェンジに降りてくる車を見たが、疎らだった。なければならぬ海道ではないことは明らかである。この地方の交通量が飛躍的に伸びるはずはない。
港を中心に大橋完成記念のイベントをやっていた。物産展あり写真展ありフェリーボート内でのショーあり。公園にバレーダンサー風の子供が集まっていた。群舞でもやるらしい。力を入れているのはよく判る。しかし観衆が殆どいないのである。笛吹けど踊らずだ。町にはイベント期間中は無料の巡回バスが出ている。何度か乗ってみたが我々以外の客を見たのは2回に1度だった。我々が旅行の根城の一つにさせていただいた家は、今も鍵を掛けずに外出できる集落にあるが、しまなみ海道が出来て外の人がやってくるようになってはいつまでも鍵無しでは居れぬこととなろうと云っていた。関東で中国人の犯罪が目に余る話をしたあとのことである。ネガティブな話が多くて恐縮だが、民不在の印象を幾分でも伝えられたらと思って書いた。
今治に限らず私が訪れた今度の町々に公共事業関連以外は殆ど変化を感じなかった。経済に活気がないことを実感する。だが成長神話は終わっている。経済がこれから再び緩やかでも成長基調を取り戻せるのかせいぜい現状維持が精一杯なのか判らないが、むやみやたらに借金を次世代次々世代に残すことだけは、民族の将来のために何としても差し控えるべきである。これからは日本の衰退を特に精神上からいかに食い止めるかに全精力を注ごう。いつまでも大盤振る舞いにおんぶする地方政治家は「公」を忘れていると云わなければならぬ。この言葉はバブルに踊った銀行幹部に対する中坊さんの苦言だそうだ。

('99/08/01)(08/03補)