
- 旧モンゴロイドは朝鮮半島伝いあるいは樺太伝いに、12000年前に日本に入ってきた。縄文人である。関東東北の縄文人はアイヌの直系の祖先だ。10000年遅れて入ってきた新モンゴロイドが弥生人で、その頂点に立つ大和朝廷が蝦夷と呼んだ人々に相当する。熊そ隼人は南九州の縄文人で、今は南西諸島に子孫を見つけることが出来る。アイヌと琉球人はミトコンドリアDNAに平均1文字程度の差があり、縄文人も単一人種ではなかった。然し人種としてはアイヌと琉球人はきわめて近い関係と言える。NHKスペシアル「驚異の小宇宙人体V遺伝子DNA」第3集「日本人のルーツ」は、母からしか伝わらぬDNAを武器に快刀乱麻でテーマを切り刻む。明快な解説は最近にない出来映えだった。話の中心はアイヌだったので、それを琉球人にまで広げて書いてみた。間違いがあれば筆者の責任である。
- NHKスペシアルのすぐ後で「南の狩猟採集民と倭人−貝塚時代後期文化の生業活動−」と言う講演を聴いた。第185回歴博講演会である。講師は沖縄の中村さんで質問司会役は歴博助手西谷さんである。先月は北大の先生が稲作が東北までで北海道までは来なかった話をされたが、その琉球編である。出土品の広がりから云って当然知ってはいただろうが稲作はなかったという推論だった。稲作の苦労を必要としない食料十分な楽土だからである。出土する石器土器がそれを物語る。機能的に進化していないのである。魚は堡礁に豊かで、潮が通る深みに網を仕掛け引き潮を待つ定置網漁法によりジュゴンまで捕らえたという。もっと簡単に引き潮に出来る水たまりに逃げ場を失った魚を捕まえる方法は今も継承されているだろう。
- 山の幸で最大の獲物はリュウキュウイノシシである。ところが弓矢はない。現代に伝わる伝統の狩猟法は落とし穴だそうだ。直径1m深さが1.5mぐらいの縦穴を掘り犬で追い込む。リュウキュウイノシシは小型で30kgていどと云う。狩猟犬はリュウキュウ犬といい、柴犬程度の小型犬である。人間が一番の猛獣という環境なら狩猟道具などたいして発達する必要がない。あとは木の実に果物で、前者の加工のためのちょっとした石器が貝塚から出て来る程度という。南国は、食糧確保に必死で頭を巡らさねばならぬ北国と違って、楽園だった。
- 講演に対する疑問点は2つだった。リュウキュウ犬はDNA解析上南アジアの犬と縁が深いという。旧モンゴロイドが連れてきたのか、そうだとしたらあちこちに同じ話がなければならぬ。犬の「自主的旅行」の結果の分布か。これなら台湾から地続きの時に分布してきたことになる。旧モンゴロイドの大波の通路にきっと南方アジアがあったろうから、太古のお供としてリュウキュウ犬を考える方が楽しい。中国には旧モンゴロイドの足跡が残っているとは聞かぬから、せめて南方犬の化石ぐらい見つかるといい。
- あと1つの疑問点はリュウキュウイノシシが小さいことに対するコメントであった。講師は隔離された島(辺境の地)にはしばしば小型種(負け組)が居着く例と云った。()内は私の拡張解釈である。韓国人の日本人に対する悪口に「日本人は太古の昔に朝鮮を追われて逃げた負け組の後裔だ。」と言うのがある。この論法で云うと過去の序列は、中原に留まった中国人が勝ち組のトップで、朝鮮民族はその次ぎ、3番目が日本人、エスキモーやアメリカンインデアン、最後にインカ帝国の末裔のアンデスの民と言った順である。講師のイノシシに対する一般化が人種にも及ぶとしたら、そんな話も可能である。
- アメリカ人ももとは旧大陸から新大陸に発った「負け組」だった。だが今はどうか。日本人も今は「勝ち組」の韓国に世界最大の技術援助経済援助をするヒトである。知恵が付いたヒト属ヒト種では勝ち負けはいつも流動的で、「どこが辺境か」も時代によって変化すると云うことだろう。DNA的には朝鮮人、中国人、縄文人の特徴を仲良く1/4づつほど持ち、他にない日本人だけの特徴は1割もないという。所詮世界から見れば常識的にも同族である。世界相手の競争を頭に置いて、互いの小異よりも互いの大同に重点を置いて付き合って貰いたいものである。
('99/05/14)