海の博物館


勝浦の海の博物館に行く。大多喜街道を走るのは久しぶりだった。街道はおいおい整備が進んで、真っ直ぐに幅広い新道が随所に造られまたは工事中だった。牛久はバイパスされていた。目的地までの2時間の内の後半は昔の日本の田舎を思わせる風景で、車の数も多くない。千葉でも南総は開発から取り残された地帯である。ゴルフ銀座ではあるが。大多喜を過ぎると所々農家が新筍を売る出店を構えている。まだ高い。海岸は山が海に迫る地形で、海岸に平行する道路はトンネルまたトンネルである。
3/16にオープンしたばかりの県立中央博物館分室である。こぢんまりした博物館である。目の先に海中展望台と浜辺に岩礁がある。実際が直接見れるからその理解を助けるための博物館であろう。やはり県立の海の資料館もあるが、博物館と重複している。いずれ統合するつもりなのであろう。展示は中博の方が系統的学問的である。時間が来ると自動的に写し出されるビデオ劇場があって、房総の海を紹介していた。
ここら一帯を鵜原理想郷という。大正時代の別荘地帯だそうだが今はそれらしい建物はない。散歩道が開かれているので半時間あまり歩いてみた。切り立った砂岩の上が展望台である。防護柵など拵えてないからおっかなびっくりである。砂岩は浸食に弱く崖の角度は90度を超すところも多い。倒れた看板に神社の由緒説明が載っていた。陰茎に似た独立の岩山を神体とする男女縁結びの神様のようである。然し昔はあったのだろうが社殿も鳥居もなく今は信仰と言ってもどうなっているのか、現代人の記憶から薄れて行く日本の神々を見る思いがした。
鵜原理想郷は漁港である。そこだけは近代的なコンクリート製の構造になっている。国か県の整備事業によるものだろう。人影はまばらだったが、結構たくさんの漁船が停泊していた。展望台から見ると砂岩の崖の波打ち際に生け簀がある。これらは大型魚の餌としての鰯を飼っていた頃の名残だそうだ。博物館で得た知識である。この土地ただ一軒の料理屋の駐車場に白木蓮が咲いていた。さすが南国である。満開だった。その日夕方千葉に戻って白木蓮を見た。凸凹があるがまあ7分咲か。随分昔の話だけれど、北海道旅行で町々の並木の緑に感心して戻ったら、我々の周囲にも結構緑豊かになった並木があるのに気付いたことがある。諺に「人の振り見て我が振り直せ」と言うが、「人の振り見て我が振り見直せ」という面もある。「隣の花は赤い」というのが、私が高校を出たときに国語の先生が呉れた餞の言葉だったが、その通りだとも思った。

('99/04/03)