
- 見学会で山梨へ行く。見学は2カ所で、1つはリニア見学センター、もう一つは東京エレクトロンという半導体製造装置の工場である。前者は山梨県立というのが面白い。研究をしているのはもちろんJRだが、観光名所に仕立てているのは県ということらしい。車体を電磁石で浮き上がらせて電磁石で駆動する。浮上に超電導磁石を使う。磁場の強さは2テスラというから分析機器並である。ただ大きさが違う。何千倍か知らないが、作った技術に感心した。空気の摩擦音以外は線路脇の公害原因がない。なるほど未来の乗り物である。後発のドイツも500km/hrを目指して頑張っているそうだから負けずにやってほしい。九州にいたとき何度か宮崎のリニア実験線を見た。然し走っている姿は今日が初めてであった。その日の実験最高速度は500km/hrではなく200km/hrだった。
- 東京エレクトロンでは、半導体製造装置を使った装置開発試験をしている。納入メーカーが自己の条件決定のための試験もするらしい。素晴らしいのは立地である。これ以上は望めぬ風光明媚な場所にある。北に八ヶ岳、南に富士。被った雪が美しい。緩やかな丘陵地帯である。周囲は果樹園ときている。私が九州や四国の半導体工場でさんざん聞いた塩害の話はここでは出なかった。立地の勝利であろう。塩害とは塩の微粒子が半導体の収量を下げる話である。半導体は埃殊に電導性を持った塵に弱い。だから半導体の集積度が上がるほどクリーンな部屋が必要になる。今は64M時代で部屋の最高クリーン度は100だそうだが、集積度が上がればもっと低い値を必要としよう。64Mでも局所的にはクリーン度10の場所もあると言った。
- 直径30cmのシリコーンウエハーを加工できる技術が自慢らしい。今までは20cmと云う。シリコーンウエハーを初めて見たのはもう20年ほど昔だったろうか。その頃は直径がまだ10cmぐらいだった。シリコーンの精製技術はどう進歩したのだろうか。ウエハー直径が30cmになると製造機器が大型化するため従来設計のクリーンルームでは収まらないが、東京エレクトロンのルームは対応できるように天井が高く広く取ってある。半導体製造装置をすべて製造しているわけではないという。ステッパーは有名な光学機械メーカーの製品だった。さらに254Mもっと進んで1Gの時代に入れば従来のホトレジ方式では原理的に無理という話を聞いたがと問うたら、従来からのi-線法で線幅0.18ミクロンまでやっていると云った。昔某社のクリーンルームに入った経験で、やっぱりパンツいっちょになってエアシャワーを浴びて着替えるのかと聞いたら、そこまではしないがエアシャワーはあると言った。
- 半導体以外の着替えの必要な工業を思い出してみる。原子力燃料、再処理、廃棄物関係、微生物利用医薬品製造関係。原子力関係は放射能の封じ込め、微生物関係は製造工程に雑菌が入り込むのを防ぐ目的である。作業者は人工の閉空間に別の衣服を着て、塵芥を気にしながら息を詰めて仕事をする。製造される物体の姿はいよいよ見えない微細物、微細構造物である。おいおいと作る喜びから離れた労働環境になって行く。今は働く場所が有れば贅沢を言えぬ時代だが、新鋭工業ほど人間工学の必要な職場になって行くのは運命であろう。
('99/03/30)