恐竜と石炭


博物館美術館の入場者数は比較的景気の影響を受けなかったのに、今回はそうでは無いという。私立の博物館美術館では成績を上げる工夫に大わらわであろう。大型資本が背景だからまずは大丈夫と思っていたセゾン美術館が潰れた。他にもある。公立でも予算は減っているそうだ。
国立科学博物館の安全牌は恐竜だそうだ。つまり、企画展で恐竜を出汁にすると大概は営業上成功するそうだ。私も恐竜ファンである。恐竜とマンモス象が置いてない一般大型博物館は少ないのではないか。地球46億年の歴史の中で、最も劇的な出来事は恐竜の死滅であるという人が多い。恐竜だけでない。海中の大型生物アンモナイトとか他のイカのご先祖も時を同じくして全員討死しておられる。原因は大隕石あるいは微惑星の衝突とされている。
直径が10kmもある岩の固まりがドカーンと落ちてきて、大津波大地震大山火事を起こす。天空は成層圏まで何ヶ月何年もにわたって土砂やら煙霧やらで覆い尽くされ、植物は光合成に必要な日光の供給が受けられないために死滅する。覇者恐竜も食料が尽きればどうしょうもない。哺乳類が生き残れたのは小型で小回りが利いたのと、温血恒温動物のため寒冷化しても体の自由を失わなかったからである。恐竜にもそろそろ頭の大きいひょっとすると賢い種類が生まれかかっていたというから、この天変地変がなければ、地球は今でも恐竜様の天下だったかも知れない。NHK「地球大紀行」はもう放映出版されてから10年以上になるが、そこに見たこの天変地変のストーリーはますます確実視されるようになったようだ。本屋で最近の著作を立ち読みして解ったことである。
千葉県立中央博物館のミュージアムトークに「しだ」の話をしてくれる企画があって、面白く拝聴した。その時「石炭紀は何故古生代石炭紀だけなのか」という疑問を生じた。石炭紀の植物の代表は馬鹿でっかいシダの先祖である。聞いてみると樹木様のシダはニュージーランドなどにまだ残っているそうである。ただ石炭化石のような大型ではないという。日本には1000種千葉県には300種弱のシダ類が生えているが、殆どがご存じのようなしょぼくれた敗者の姿であるらしい。
シダのような胞子植物は地球上で始めて出現した陸上植物だそうだ。だが動物の両棲類と同じで生殖には水が必須条件だった。だから水辺のようなじめじめした場所でないと繁殖できない。種子植物の種は乾燥に耐えるから内陸進出が可能になる。でも水辺でもシダの巨木が石炭紀以降さっと姿を消し、種子植物に取って替わられる理由は、ダーウィンの適者生存だけでは不十分のような気がする。もう一発、皆殺しのキャタストロフィーがあって、その後に適者生存競争を抜け出たのが種子植物だったというなら分かり易い。
恐竜はあまりにも有名だが、生物が突然姿を消したという意味では、他の時代にもたびたび起こっている。1億年に1回ほど来るらしい。だが石炭紀末は生命が途絶え掛けたというほどの時期でもないらしい。恐竜の時代以外には科学的な天変地変の証明はされていないらしいが、ダーウィンの進化論以外に、地球の大事件が、動物の世界では爬虫類から哺乳類への交代のような突然の変化進化の引き金を引いているのは本当のようである。
植物の世界ではどうなんだろう。動物は逃げれるから小さな災害には強いが、大賀蓮とか山火事後の樹木のように大災害には植物の方が強い。動物とは別の角度で植物の種の交代を考えねばならぬのだろう。こんな話を考えたところで一文の得にもならぬが、考えること自体は楽しいものである。

('99/02/18)