
- いつ見ても国立歴史民俗博物館略して歴博は壮大である。ここの研究員は県立などの公立とは違って大学のように教授助教授と呼ばれる制度になっている。格が違うのである。資料購入予算だって随分違うのだろう。新収集資料の公開があったので期待して出かけた。
- 目玉になる展示物は結城合戦絵詞(重文)である。室町時代にあった関東公方足利持氏の子と結城氏の反乱を絵巻物にしている。平治物語絵巻の三条殿夜討の巻をボストン美術館から里帰りしたとき見に行ったが、それに劣らぬ見事な構図描画である。紙面の褐色化が平治物語絵巻よりは進んでいるが、十分鑑賞に堪える。お屋形に闖入した武士団と守備側の戦闘の場面が展示されていた。武装して闘う侍姿は鎌倉時代に画かれた平治物語の武者と外見はほとんど差がないように思う。
- 地方の歴史は詳しく学んだ覚えがない。そんな意味で詞に何が書かれているのか興味があったが、キャプション中には解説していない。詞はあれだけ崩した筆書きでは読める人は僅かであろう。これは肉筆すべてに言えることで、昭和の水木コレクション展示の時もキャプション中の解説以外は解らなかった。今回の企画展展示品に占める文書の割合は大きい。
- 賀茂競馬犬追物図屏風の犬追い。競馬は一目瞭然だが、犬追いとはどんな競技であるのか。絵には柵を施した方形の競技場で、左半分では騎馬の侍に犬が追いかけられている。侍たちは弓に矢をつがえている。よく見ると矢の先は鏑矢のように膨らんでいて殺傷は出来ないようになっている。右半分では同心円が二つ画かれていて、その中心に犬が下級武士らしい男に引き据えられている。外側の円の外周に騎馬の弓を持った武士が、中心の犬を取り囲むようにしている。どうも犬追いとは巻き狩りの雰囲気を飼い犬相手に楽しむ競技のようだ。柵の外には見物が大勢屯している。二階席には高貴な身分でないと入れぬらしい。江戸初期の賀茂神社でのレジャー風景として楽しい絵巻である。
- 妓楼遊楽図屏風。これも江戸初期の作という。立派なお屋敷に女が踊り酌をする。色町の佇まいなのか。現代よりずっと幅が狭い帯。凝った柄の着物。髪型もいろいろで個性的ある。顔形は然し全員同じで区別が出来ない。座敷で宴会をしている男は腰に小刀を一本差している。遊郭などで腰の物は預かりますとなるのはもう少し後のことらしい。それでも大刀は預けているようだ。
- いろいろ見せてもらっても素人はあれこれ「それらしき」想像をするだけに終わる。説明員がおったら見学の楽しみは倍加するのにと思う。ガードマンはたくさんいる。週日など展示室によっては見学者よりガードマンの方が目立つぐらいだ。今回はしゃれた服装のガードウーマンにお目に掛かった。今までウーマンにはお目に掛かったことはない。さては説明員がついに配置されたのかと誤解して、質問したら質問は総合案内へとかわされた。総合案内へ行くと質問状を書かされ、いずれ返事を出しますと云われたが、一週間目になってもまだ梨の礫である。もう何の質問だったか記憶曖昧である。現場にガイドを置くよう希望する。予算的にはガードマンの置き換えでよい。かえって中身が解っているガイドの方が展示物のガードには役に立つだろうと言う意味もある。それに展示はほとんどが模造で本物ではない。
- (一昨日に歴博より返事を貰った。この文に行き違いがあったことをお詫びします。年寄りは気が急くものとご理解下さい。 '99/02/06追記)
('99/02/01)