
- 泉屋(せんおく)博古館は住友コレクションを展示する博物館で、京都鹿ヶ谷にある。一帯は東山を背景にする住宅街で近くに疎水と哲学の道が通っている。泉屋とは住友の屋号で井桁のマークに対応する。住友家当主たちの文化人としての奥行きを伝えるコレクションである。
- 殷(商)、周(春秋、戦国)、秦、漢代、唐代など中国古代の青銅器の逸品が並ぶ。胴長1m直径80cmほどの薄い鋳造のドラム、銅鐸を思わせる一連のベル。ベルの音は録音を聞かせた。銅鐸よりははるかに澄んだ音という。大小あって音の高低に対応している。打つ位置によって違う音色になる。酒器、食器も精巧である。器の模様は彫金ではなく鋳型に彫られた模様という。大型薄手の青銅器は作るだけで難しいと思うのにさらに鋳型に模様を仕込むとは大した技術である。ただその文様はいかにもグロテスクで実際に使用はしなかったであろう。出土は墓からだそうで霊を祀る道具であったらしい。鏡は日本の考古学でもおなじみだが、文様は中国古代のそれが源流であることを見せてくれる。
- 書画は国宝重文を結構たくさん含むコレクションで、中国明清代の作家によるものが中心である。先日の新聞に、モナ・リザの絵を、画かれた当時の色彩に復元した写真を掲載していた。絵の具の表面はどうしても化学反応を受けやすく変色しくすんだ色になる。背景は今の夕暮れ時の色ではなく青く澄んだ色だったという。モナ・リザが画かれてもう500年近い。明朝の中頃である。しかし中国の絵画は墨が基本なので、紙質の変化以外は、画かれた当時の印象をそのままに伝えていると思われる。山水花鳥が主な題材だったが、中に官女群像を画いた一幅があった。東洋の画法は、個性あふれる人物特に顔立ちをそのままに写すのは邪道としていたのであろう。モデルがいたとして、彼女と比較して、本人とすぐ認められるような絵ではなかった。
- 住友資料館には大阪本店に精銅所があった江戸時代の模型があり、オランダ人らしい来客の接待所や銅吹きの現場などが所狭しと並んでいた。その地所は市に寄贈されて図書館になっているという。江戸時代のマニュファクチャーを土台に発展した産業資本は他に日本に例を見ないだけに、ここの歴史は今後もずっと注目され続けるであろう。
('98/09/16)