茨城県立自然博物館


公園が見渡せる位置に窓が総ガラス張りの天井の高いレストランがあった。そこでまず昼食を取った。コスタリカ・ランチである。なんだかメキシコ風の軽食である。後でイグアナ牧場を知る。肉を食うのだそうである。まさかあのタコス風サンドイッチの中の具はトカゲの肉ではなかったろうな。
コスタリカ・ランチが特別メニューで出ている理由は直ぐ判った。企画展として「妖精たちのすむ森から−コスタリカの生物多様性とその保護−」をやっていたのである。コスタリカとはパナマの北隣りの小国である。同じくスペイン征服の歴史を持ち中部アメリカに属する国なんだから、料理内容が何となくメキシコ料理に似ているのは当然かも知れない。しかしハーブの強烈な匂いもピリピリする辛みも省いて、日本風の味付けになっていたように思う。そんな雑談を監視役のお嬢さんと交わす。展示品に高価な品があるわけでなし、お嬢さんは暇そうで話し相手になってくれた。
企画展で一番印象的だったのは、密林に繁殖するという寄生植物の模型だった。一本の木に群がるように何種類も生い茂っている。次ぎにハキリアリの拡大模型。森の葉の何分の一かをこのアリが消費するという。アリは巣に持ち帰った葉で菌糸を培養してそれを食料にするという。地下農場の図などあった。アリは直接植物を食わずに菌糸に変えるのはどんなメリットを当てにしているのだろう。葉緑素が毒なのかな。飴色の体をしている。三つ目はモルフォ蝶。その金属性の輝きの源である鱗片を顕微鏡で見せていた。四つ目は直径1m半ほどの真球石。原住民祖先の遺物である。意味は分かっていない。
館内案内ツアーがあるというのでマンモス化石の前で待っていたら制服のお嬢さんがやってきた。展示室は5つで、各室ごとに交替でお嬢さんが話して聞かす。全部で1時間半ほどであった。学芸研究員は10数人いるという。時折特別講演をやるらしい。
化石は殆どが模造品であったが、よく揃っていた。マンモスと恐竜は中国内蒙古自治区で見つかったもの。生きておればマンモスが10トン、恐竜は60トン。前者が真っ黒なのは炭層から出てきたため。露天掘りの石炭層だったそうである。この恐竜は草食性のようだ。生きた姿の動く模型が低いうなり声を上げる。愛媛県立博物館に同じようなのがあったことを思い出す。あっちの方がでかくて声も迫力があった。全体にこちらは子供相手に、あちらは大人相手に作っているのだろう。なにしろあそこは今の文部大臣を館長に据えて科学を強調していたから。
向かいの中型恐竜化石には皮が部分的に付いていた。恐竜の化石はあちこちで見たが、この皮の化石は全く始めてである。恐竜の想像図や模型の皮膚は爬虫類の祖先と云うことで今のトカゲあたりから想定したのかと思っていたが、化石で残っていたとは知らなかった。皮にDNAが残っているなら、それこそクローン羊クローン牛の技術と、生きている化石ガラバゴス島のイグアナでも使って、恐竜を再生できないか。
馴染みがないので名前は忘れたが、茨城を流れる川の水源地から海までの流れに沿って変化する魚相を何段階かに分けて、実際の生きた魚で示しているコーナーがあった。稚魚を飼っていたが、鮭は実際には遡上してこないそうである。陸上動物のコーナーは、どこでもだが、剥製展示であった。60何年も生きて私が野生でお目に掛かった哺乳類動物はイノシシと狸、リスにコウモリ、ネズミぐらいである。蛇に最後に出会ったのはもう10年前だとお嬢さんに話す。近頃の子は草むらを歩いても蛇に用心しないだろう。田圃に入って蛭に藪蚊、蛙にザリガニが寄ってきたらどんな反応をするのだろう。
菅生沼に出る。真ん中に低い木橋が掛かっている。渡り過ぎると終点にあすなろの里と出ていた。何があるのか知らないが(案内図を見る限りたいした見ものはないようだが)、入園料310円である。ついでだが、帰り際にパンフレットが目に付いたので知ったのだが、常陸風土記の丘がやはり310円であった。ここは保存古墳があるわけでなし、めぼしい展示物があるわけでもない人工の歴史公園のようなものである。入園料を取る理由がわからん。自然博物館は入館料に710円取った。企画展中だから200円高いそうである。何でも料金を取る県である。千葉の博物館美術館は特別展それもたまに以外はただで、しかも町中の交通便利な位置にあるのと比較すると、ちょっといただけない料金である。
野外公園にはたくさんの子供連れでにぎわっていた。夏だから水辺に人気がある。噴水の保護篭の中にわざわざ入って、水流に股下から煽られている子供が居た。何でも冒険がしたい年だからこんな冒険は大目に見るべきである。木陰に立ち止まると涼しい風がながれているのに気が付いた。関東は平野が広いんだと改めて思う。盆地の京都では一度風が停まったらびくとも動かぬ真夏日が続いた。トンボ池の飛び石を伝って歩くとこれまた何年ぶりかのバッタに出会った。雄を載せた、体重にしたら5倍はあろうと思える大きな雌であった。

('98/08/22)