
- 新聞で山百合が咲いたという記事を見て、川村記念美術館に行く。入口でもう百合の香りが微かに漂ってくる。まずは腹ごしらえで、そこの1000円のカレーを食った。食堂が細長いのは両側の庭をゆっくり眺めて欲しいからであろう。私はここが気に入っている。その庭園の散策コースの中で見た花は、たくさんの山百合の他に、サルスベリ、キキョウ、ヤブミョウガ、ムクゲ、ミゾハギなどだった。ギャラリーで名をど忘れしたが、女流の花の画家の展覧会があった。カノコユリという花があるのを初めて知った。ひばりの佐渡情話に出てくる「咲くや鹿子の百合の花」とはこの花かとしばらく眺める。薄桃色の美しい花である。鹿子の斑点が確かに見える。
- 現役の頃の私の大日本インキの印象は、小さくてもぴりりと辛い会社と云うことだった。技術面での先進性に対する評価である。今は資本金は800億円を超え、売り上げは年に5千億円に近いという堂々の総合化学会社である。総合と言ってもやっぱりインキ関連が強くてspecialityがある。昔私の研究室に東大を出た社員がいて、おじさんの会社を継ぐとかで退社した。それは印刷会社であったが、うまく電子印刷の波に乗ったと見えて、健在である。大日本インキも、営業品目から見ると、事業の展開に敏感だったのが幸いしたようだ。
- 私は美術館に庭園にと市民に利益を還元してくれた川村氏に敬意を払っている。だいたいが美術館などは思いつきで作れるものではない。議員さんが公共投資の種に窮して、隣にもあることだしうちの町にも建てるべぇかとドンガラまでは作ったが、入れるものがないと言ったざまはよく見聞きする。この近くでは佐倉市である。
- 美術に関心が強く美術を愛し、何十年の単位で身銭を切って集めて初めて思想のある鑑賞者を呼べるコレクションになる。大原さんの倉敷美術館、松方コレクションの国立西洋美術館、住友家の泉博物館、カナダで騙されて会社が潰れた安宅家のコレクション、小さいけれども愛媛久万町の美術館、丸亀のイサムノグチの彫刻のある猪熊弦一郎現代美術館(これは一時的な展示だったかも知れぬが、交友関係からのものらしかった。)など。安宅以外は二度以上訪れている。作家の意志で作られるその人の美術館も見応えがあるものだ。長野の信濃美術館・東山魁夷館はそのいい例かも知れぬ。
- 尊敬される実像である川村氏は、確かな存在として、教育上副題材でいいから、いろんな角度から取り上げてみたい人である。
('98/07/27)