
- 佐原市立水生植物園のハナショウブが見事に咲いた。例年より1-2週は早いという。暖冬異変の一つである。品種ごとに開花の時期が違うようで、今は町娘、美吉野、殿上人と言った品種が満開であった。始めのが江戸系で、白基調の、明るい模様が美しい花、次のが伊勢系で、薄桃色の花、最後が濃い紫色の肥後系の花である。どの系統かは立て札に示されている。
- いったい何品種あるのか、殆どが日本の園芸種である。源の原種も花を開いていた。なかなかどうして園芸種と比較して遜色のない立派な花を付けている。種類は少なかった。アメリカ産の品種もいくつか育っていた。まだ花は付けていない。黄色の花を付けた品種が一つある。愛知の輝という。日本原産種は黄色の色素を持たないが、外国のアヤメ科植物から交配で黄色を受け継いだものだそうで、雑種という分類になっていた。
- 野良着に赤い前掛け、菅笠の娘(本当はおばさん)船頭が竿を操る和船が客を乗せてゆっくり通り過ぎて行く。園内の沼池を回る遊覧船である。ハナショウブに柳が影を添えて、絵になっている。園の外からはエンジン音が聞こえる。柵越しに見ると十二橋巡りの船着き場であった。20年ほど前だったか、会社の慰安会か何かで、十二橋巡りをしたときは今の園内の和船の風景であった。今は外観もすっかり近代的な船になった。
- ハスは7月に入ってからである。しかしもうスイレンの中には花を付けている品種もある。泥沼に咲く清楚な姿はすがすがしい。ハス祭が始まる頃に佐原の夏の大祭になる。再度訪れる価値がありそうである。隣の県立大利根博物館は大入りであった。この地域の祭り関連の資料を企画展として展示していた。山車の最上部を飾る大人形の中の一つ、小野道風を間近に見ることが出来た。
- 帰ってマイクロソフトの百科事典エンカルタ98を引いてみた。この事典は検索項数はさほど多くないが、ビデオありパノラマ写真ありで楽しいので、つい使ってみる。ショウブを引いてびっくりした。美人二人の誉め言葉として、「いずれショウブか、カキツバタ」と記載されている。こんな日本語は聞いたことがない。菖蒲の花などおおよそ貧弱で、カキツバタの向こうを張るなどとんでもない話である。比較された美人はきっと眉をつり上げるであろう。
- 古語辞典を見ると昔は「いづれ菖蒲か、杜若」と書いたとある。菖蒲にはアヤメと振っている。今のショウブは大昔はアヤメと云ったというからややこしい。この成句が使われるようになった頃はもうアヤメ科のアヤメを指していたはずである。マイクロソフトの執筆者は「ショウブ」を「ハナショウブ」の短縮形であるとした。言葉の意味から云えば妥当であるが、時代違いであった。
- 私がこの成句を聞いた最後は川端康成原作岩下志痲主演の「古都」の中であった。双子の姉妹を並べて、育ての親が漏らすため息の中であった。あれからもう何年もこの言葉を聞いていないし私の話に入れてもいない。美しい言葉である。死語にしたくないと水生植物園の中でふと思った。
('98/06/09)

佐原市立水生植物園アヤメ祭('98/06/05)