義務教育年数の短縮を


中二の少年を恐喝で自殺に追いやった十七才が少年院送りになった。中学の先輩で、共犯に同校三年の二人がいたという。恐喝の理由は賭の負債である。
高専にいたとき何人かの退学を言い渡した。遅刻欠席あるいは試験不合格の課業が多くて進学ができず、留年も規定年数をオーバーしてしまった学生たちであった。厳密には退学相当であっても、教育的配慮の可能な学生には救済の道はある。そのときは私は担当した学生の中から、一人だけだけれども、条件付きながら退学を進級会議で免れさせることができた。
退学後の進路が決まって一安心していたある日、その一人の親御さんが挨拶に見えた。それまで私には見えなかった内輪話がいろいろ出た。トランプだったか麻雀だったか花札だったかその種類は忘れたが、負けが込み、取り立てがやかましくなった。親は先方の親を相手に交渉し、負債の1/3ほどで妥協したという話であった。負債金額は自殺した中二より一桁多かったと記憶する。相手は同じクラスの退学組と中学時代の悪友達であった。本人は人の良さそうなどちらかというと気弱な印象の学生であった。退学後は遠くの専門学校に入学して、里を離れた。
分からぬものである。本人は担当の教官である私にいろんなサインを送っていたのかもしれないし、そうでなかったかもしれない。私は低学年に講義を持たなかったので、クラスの殆どとその年度になって初めて顔を合わせた。退学組は突然その年になって急変したわけではなく、低空飛行は以前から続いていた。多分サインは出さなかったろうが、それでも切羽詰まったときは何かを訴えようとしたのかもしれない。
会社勤めをしていた頃に似たような事件を経験した。好景気に沸いていて人手不足が深刻な時代の話である。入社後何年も経っていない金の卵の大卒社員が突然やめた。同年入社の仲間に聞くとやめそうな雰囲気はとうに感じていたという。そんなサインを見逃していたかとでも言いたげな同期生の言い方であった。でも上司には誰も分からなかったのである。
退学生の親御さんは立派だったと思う。事実をしっかり掌握なさったこと、解決に直に相手の親と談合されたこと、退学後の進路決定に最善と思われる道を見つけられたこと。彼はいい家族に守られて踏み外さなくて済んだ。だが、これが当たり前ではなくなってきた。
直系血族の扶養に対する考え方がどんどん変化している。親を同居扶養介護しない人は子供にそれを期待しない。彼らは子供の養育に使う努力を、親の扶養と同様に、代償のない我が身の犠牲と感じるようになるだろう。子供への関心が薄らぐのも避けられない。人口減少の本当の理由である。これからは生んでも生みっぱなしと云われる時代へと進むだろう。
子供にも以前ほど住み良い社会でなくなっている。子供は自分で自分を守る算段をいつも心懸けておらねばならぬ。その自覚を早い時期に教え、身に付けささねばならない。特に中学時代を一律の教育で、しかも落第も退学もないぬるま湯の中で過ごすことは大変問題が大きいと思う。もう今の形の中学校は義務教育から外すべきである。

('98/05/13)