電子出版のトラブル

随筆集:「四百三十五人がくれた旅行券」の第83分冊と第84分冊を、先日Kindle電子本として出版した。もう10年ほども経験している操作だから、問題なくやれるだろうと思っていた。ところが今回はKindle direct publishingが原稿を受け付けない。慌ててKindleの解説文を読むと、epubその他の形式のファイルを推奨しているが、今まで使っていたhtml(css)+jpg(gif)圧縮のzipファイルは推奨されていない。
あとで気付いたのであるが、Kindleの詳細説明文には、註書きで、html(zip)もOKとなっていた。私の失敗は、zipファイルに、間違って大型の写真ファイルを埋め込んでいたためだった。これを機会にと思い、epubファイルの勉強をやることにした。Kindle出版のキモは、原稿のテキストや画像・表・写真などを1個のファイル(今まではzip)に纏めてKindle direct publishingへ送り込む点である。Webから捜すと、zip→epubの変換を無料で請け負うホームページがいくつかある。でも私の場合は変換不能のようだった。私の手書き原稿には、一般図書のような形式が備わっていないから、AIが判断不能に陥るらしい。
タナカヒロシ:「はじめての電子出版」、工学社(2013)と林 拓也:「EPUB 3電子書籍制作の教科書」、技術評論社(2012)を借り出した。epubはElectricPUBlicationを意味し、電子書籍用オープン・ファイル・フォーマット。epub3が出来たのが2011年でこれにKindleが対応したのが2012年、私が随筆集出版を決めたころだ。第1分冊の出版が2013年。ワープロ・一太郎は対応が早かったそうだが、いかんせん私の一太郎9は1998年の発売で、私が取り残された理由の一つである。
Kindle パブリッシング・ガイドラインには、私の場合のようなテキスト主体の本の場合、「DOC(X) ファイルをリフロー型の電子書籍に変換します。リフロー型の電子書籍はテキスト サイズの変更に対応しています。」と書いてある。小さな画面のリーダーで読むときもあるから、文字サイズは本の大きさと関係なく大きくできるのがリフロー型である。DOC(X)ファイルでなくてもhtmlファイルになりさえすればよい。どのワープロでもたいていOKである。ついでだが、フィックス・レイアウト型コンテンツがあって、漫画や雑誌のような複雑なレイアウトのものを、1ページあたり1枚の画像で構成するタイプの電子書籍だとある。
借りだした本を読み進めると、epubファイル化のキーになるソフトは、Sigilだとすぐ判る。Webで捜すと、Sigil(無料)のダウンロードから、出来たepubファイルの検証まで、画面の絵入りで細かく説明してあるページが複数出てくる。'13年の「記事作成代行ドットコム」(https://writing-daiko.com/teach/category/ebook/sigil/)の「Sigilの使い方」はことに懇切丁寧である。画面のどのボタンを押すかを矢印で示してあって、百聞は一見にしかずとは、このことかとその要領の良さに感心する。'16年の「電子書籍の作り方」(https://potex.hateblo.jp)もいい。
ダウンロードし、早速「Sigilの使い方」に従って、サンプルのhtmlファイルを開いてみた。コードビュー(html文画面)が出てくるが、ブックビュー(通常文章型画面)にならない。「Sigilの使い方」には出ている、ボタンを並べたメインツールバーにその切り替え機構がない。Sigil ユーザー ガイドを調べると、ブックビューの機能は外したとあった。「Sigilの使い方」が上梓・改訂されたときのSigilにはあったが、最新のバージョンには入ってない。htmlタグを含んだ形で編集せねばならないが、プレビュー機構が付いていてタグをいじり文をいじると直ちに反応してくれるので、画面の1/3ほどをそれにあてて編集すればブックビューは不要だ。
ブックビューはPageEditなる外部エディターになっていた。ついでながらReadiumReaderなる公式プラグインがあって、これでepub文が読める。'21年の「Sigilの初心者向け使い方、電子書籍のEPUBの作成に最適!」(https://yanai-ke.com/sigil/)にそれらの導入法が書いてある。バージョンが変わるとソフトの内容がころりと変わる経験ははじめてではないが、今回もやられたと思った。
「07. 画像の挿入」に従って新しい画像を入れ込んでみた。至って簡単な操作だった。「Sigilの使い方」には、本の体裁を整えるために必要な項目として、ほかに特に試行はやらなかったが、「04. 段落設定」、「05. ファイルの分割と統合」、「06. ファイル名の変更」、「08. スタイルの設定」、「09. リンクと注釈」、「10. 表紙の作成」、「11. 目次の生成」、「12. メタデータ(書誌情報)の設定」と懇切に並んでいる。「13. EPUBファイルの検証」にはツールの「FlightCrewでEPUBを検証」を利用するとあるが、最新バージョンのSigilにはそんな項目はない。
FlightCrewもプラグインすべきソフトのようだ。やっかいなことに、これはepub2に準拠していてepub3ファイルは拒絶してくる。どうしてもFlightCrewの検証をさせたかったら、元のhtmlファイルを一旦epub2ファイルにして検証するしかない。しかしプレビュワーは、文法を間違えると何行目のどの位置にどんな種類のエラーがあるかを書き出してくれるから、プレビュワーをパスできたらそのファイルは書籍化OKである。Kindle Previewerにはかけてみたが、形式が合わないからと拒否された。
体裁の効率的な設定にはcss言語を用いる。「08. スタイルの設定」に、cssで設定したスタイルが、章がかわっても節がかわっても適用できる例が出ている。段組の設定、ページのヘッダーとフッター設定などへの応用のときのcss、htmlの書き方は、「EPUB 3電子書籍制作の教科書」の「Chapter 10 CSSによる様々なコンテンツ表現」に例示されている。
日本語出版物特有の縦書き、縦中横、改行・禁則処理はcssで設定されるが、ルビはhtml要素で設定する。ページの開き方向の設定は、パッケージドキュメントの取り扱い分野だと言う。Kindle direct publishingには、使ったことはないが、Kindle本のコンテンツの覧にページを読む方向の選択肢として、右から左(縦書き)というのがある。縦書きに対応はしている。
読んだり試したりでepubを評価してきた。出てきた結論は、Kindleがzipファイルを受け付ける限りは、それで行こうというものだった。おおもとのhtmlファイルをワープロで作り、それをzipファイルに転換、その後は、好きな部品を、ただただそのzipファイルに、ドラッグアンドドロップで、自由気ままに放り込む我流で作ってきた本だ、第84分冊では、目次の項目をクリックすればそのページに飛ぶようにするお遊びも入れている、いまさらepubの標準形式に合うように作り替えるのは面倒だ。

('22/3/2)