情報工学のあらまし(二)

第8章は「ネットワーク」。私の無線は「鉱石ラジオ」「初歩のラジオ」から始まる(「日本型モノづくりの敗北」('13)、「青色LED」('15))。無線が個人レベルまで降りてきたのは、重役クラスのハイヤーに自動車電話がついた頃からであった。有線電話の仕組みなら小学校の生徒にだって判る。だが無線電話となると機密性保持をどうしているのかでグンと専門性が高くなって、未だにきちんと理解できていない。その利便性は誰でも判る。私は無線電話大衆化の第一陣になったPHSを買い求め、山頂で受信して大いに感心した記憶がある。
本書にはPHSの解説はない。アメリカにはPHSの時代はなかったから。日本は「電子立国」で世界の最先端を走っていた。ことにNEC。今はガラケーと呼ばれている携帯電話は、現在はスマホになって米韓中に地位を譲ったようだが、写真機能から検索機能まで小さな箱に詰め込むスタイルをいち早く打ち出していた。動画の受送信はやれていなかったはずだ。国内競争制覇にあぐらをかかずに世界に目を向けた商戦をやっていたら、今頃電子世界はN(NEC)+GAFAの世と呼ばれていただろう。
海外旅行では一度も電話をしたことがなかった。でも万一に備えてケータイは持参していた。まだGSM(2G) が通信サービスの主流で、3Gは我が国と欧米諸国以外では少なかった。日本では今はGSMは使われていないが、海外に出たときのためだろう、たいていのスマホ市販品はGSM通信できるように作ってある。
我が家では3G、4G(LTE)が使われている。住まいは5Gの基地局と基地局の狭間になっていて、たぶん5G が使えるようになるにはまだ間がある。G(generation)によって帯域幅が異なるが、3G が4G の1/5ほどの速度なのに、3Gが未だに平行して使われるのは、障害物迂回性があるから、ビル影などにおける不通ポケットを克服するためだ。
動画は無理でも電話と文字通信ぐらいはビル影でもOK になる。でもまだ在来線トンネルではだめである。新幹線トンネルはいつ頃からか通るようになった。私のらくらくスマートホンの4GはYouTubeをやっとこさこなす。時々busy状態になってストライキをやる。やっぱり5Gが必要である。 本書は5G には踏み込んでいない(ref.「5GとAI」('19))。
第9章は「インターネット」。私は、年を跨いでしまったが、青空文庫から吉川英治の新書太閤記の.htmlファイルを呼び出して読み通した(「新書太閤記 第一分冊〜第十一分冊」('20~'21))。これを例にこの章を要約してみた。このファイルはどの分冊も600KBあまりだ。.zipファイルでのダウンロードも可能になっている。200KBほどに圧縮されている。ファイルの圧縮については前章に詳しい説明がある。青空文庫のアプリはTCPプロトコルでたぶん10個のIPパケットに分割(IPパケットにはデータは約65KBまでという容量制限がある)して私のブラウザへ、何個ものゲートウェイを経由して届けられる。
プロトコルはアプリ/TCP/IP/物理層の階層を作っている。IPはパケットのフォーマットである。TCPが送信元コンピュータのポートと受信元ポートを規定し、シーケンス番号で分割送付するパケットの順番を規定し、受領確認とエラーチェックをやる。だから双方向性である点が大切。検索はプロバイダーが頂点になって、互いに連携しあいながら、送信先を探すように出来ている。伝達通路はネットワークだから無数にある。IPプロトコルが相手先を探している間に堂々巡りになる場合だってある。その用心にIPパケットにはTTLの1バイトがあって、何回ゲートウェイを通ったか記録し、255回を超すとこのパケットは破棄されるように出来ている。
この章の最後にモノのインターネット(IoT)が載っている。PCやケータイほどにはまだセキュリティ対策やプライバシー保護対策は進んでいない。一時期メディアの注目を浴び、ウェブカメラを乗っ取る実験映像がTVに出たりした。社会基盤インフラに悪意を持って進入されると、NYの世界貿易センター爆破事件を上回る打撃を社会が受ける可能性だってある。
第10章は「ワールド・ワイド・ウェブ」。最近我が家のPC とその周辺機器を取り替えた(「我がパソコンの不具合」('21)、「(続)我がパソコンの不具合」('21))。購入前にWeb検索で製品比較はしている。以後続々と要望もしない関連機器の広告が関係のないPC画面に流れ込むようになった。サーバーが送り込んだクッキーを追跡し、閲覧記録を作り標的型広告を出しているのだ。
インターネット広告にはいろんな種類があるが、クライアントの過去の閲覧ページの状況をみて関連性の高い広告を表示する行動ターゲティング広告、コンテンツの内容に連動するコンテンツ連動型広告などの配信にクッキーは多用されるのであろう。検索キーワードに連動する検索連動型広告はもっと上位の機能だ。本書にはポップアップ広告の機構のあらましを説明している。
ブラウザにはJavaScript言語がアドオンされている。広告用のJavaScriptコードをWebページに書き込んでおけば、クライアントがWebページへアクセスした際に、広告表示用のウィンドウが自動的に開く。このホップアップ広告は、目障りで嫌がられるようになり、ブラウザにはポップアップブロックを標準で搭載するようになった。JavaScriptを利用せず、たとえばAdobe FlashのようにたいていのPC にプラグインされているソフトを使う方法もある。ブラウザ自身のコードだって使えるわけだ。PCの広告の掲載と禁止は「いたちごっこ」になっている。
国家民族の安全をかけたサイバーテロ対策は深刻だ。ランサムウェアで企業が膨大な身代金を支払ったニュースは後を絶たない。10.8「自分自身を守る」は個人ベースで今すぐやれる防衛策が3段階で示してある。忙しいお方はこの節だけでも目を通すといい。私は「危ないメール」の区分けをプロバイダー提供の有料メール・セキュリティ・システム(有料)に依存している。
やってくる迷惑メールは、たいていは金融関連クレジットカード関係の詐欺目的のメールである。中には見事な擬態のメールがあって、それがシステムを通り抜けてきたため、うっかり開けてしまいそうになったことがある。メールを開けるのに2-3日おいていたのと、詐称された会社から先に警告文が来たので助かった。本書にWindowsの欠陥を利用したウィルスの送り方が書いてある。WordにVisual Basicが組み込まれ、それがWindowsのOS全体へのアクセスを提供するために、一時は感染が急拡大した。今は対策が取られている。
第11章は「データと情報」。有機化学の研究で、図書室の書棚いっぱいに並んだBeilsteinやChemical Abstractsを目視で検索していた時代が懐かしく思い出される。いまではインターネットで検索語さえ適切だったら「答え一発」だ。私自身のHP の検索も時折は行う。注意すべきは検索にかかる記事は最新でないことだ。検索エンジンのクロールの仕組みが解説してある。エンジンにも差があって、私のHPに関して言えば、Microsoft Edgeが一番タイムラグが小さい。
個人情報の流出を意識的に極小化していても、検索と同時に検索語と個人に関連した広告がワッと飛び込んでくる。検索エンジン会社の収入は広告が命。インターネットを使用するたびに情報収集が行われている結果だ。トラッキング情報の収集方法が説明してある。検索でブラウザから自動的に送られるデータは隠しようがない。次に自動車購入でtoyota.comにアクセスしたら、初回の訪問で、79の異なるサーバから、200を超えるクッキー、画像、スクリプト、その他のコンテンツがダウンロードされたとある。toyotaの画面に仕込まれた「ウェブバグ」が、関連会社にクッキーを取得させるように出来ているという話も驚きだった。
Cookieによるユーザーの特定が、社会問題化して難しくなってくる中で、Cookieを使わないでユーザーを特定する方法が使われ始めている。「ブラウザーフィンガープリント」である。ブラウザの種類や内容、設定の特徴などをリストアップすれば、世界中のブラウザが識別できる。JavaScriptの機能の一つである。ほかにもメールリーダーなどによるトラッキングもある。IPパケット通路のゲートウェイ(ISPなど)での識別はhttps化で防げるという。とにかくいろんな手で個人情報は収集されている。FacebookなどのSNSからの漏洩、位置情報からの監視など。情報集約は、政策決定や資産運用などに有益な情報を売る商売などが可能になる。
クラウドコンピューティングはどこまで浸透するのだろう。Gmailはたちまちに私のメール仕事の主流になった。クラウドと言っても空中に浮かんでいるわけではなく、地上のインターネットサーバーが情報処理の中心である。携帯電話からでもPCからと同様に操作できると知ったときは驚いた。Facebookもクラウド。GoogleドキュメントはクラウドベースのOfficeと同質のツール。これがデスクトップバージョンの主にWindows上で動いているOffice(Word、Excel、PowerPoint)に打ち勝つと、Microsoftはコアビジネスを失うことになる。Microsoftは対抗するクラウドバージョンのOffice365を盛んに宣伝している。
TwitterもInstagramもYouTubeもクラウドサービス。AWS(Amazon Web Services)はクラウドを貸す商売らしい。私は今年このHPの引っ越しをやった。それぐらいは個人の能力で十分やれる。でも社内システムのAWSへの引っ越しになると、専門屋でないと出来ない。NTT Comの一括引き受けの広告がインターネットに出ていた。「一括」は大切。みずほのATM事件のそもそもは、銀行合併の時にそれぞれのお抱えIT業者が、自分以外のブラックボックスには目をつぶったまま、それぞれのシステムとのつじつま合わせの統合をしたためであろう。
国家安全保障とインターネットは深い関わりがある。テロにさらされた米国では、体制側が電子メールに対するアクセス権をつねに求めている。この圧力に対してどう対処しているか。政府からの情報の削除要求、ユーザーに関する情報要求、著作権侵害による削除要請などの「透明性レポート」が公開されている。GoogleのEUでの特定URL削除は要求の42%と出ている。

('21/10/2)