いちごと寿司


外房の一宮町に出かけたのは、その町のイチゴ大福を買うためでもあった。口コミで、玉前神社前の和菓子店の評判を聞きつけたのである。畑で完熟したいちごを白餡で覆い、さらに餅皮で包む。いちごの上品な香りがいい。実はイチゴ大福を売る店が20-30mの近くに2軒ある。両方試食したが、私のお気に入りは国道より奥に入った店である。
「運がよけりゃ」一見さんも買える。普通は予約が要る。それも昼日中にやっておかないと明後日に回される。もっと作ればよいのにと言ったら、いちごネックだそうだった。ずぼらして電話をせずに行った2回目3回目は断られてしまった。往復90km近い道のりを車で走り、えらく損した気分であった。
近所の洋菓子店の陳列棚は、いちごが散りばめられたショートケーキでいっぱいである。皿単位で計算してみると、いちごが何らかの形で利用されているケーキが、そうでないケーキの8倍はある。八百屋果物屋とも、いちごパックが山積みである。野いちごが初夏で、石垣の間で栽培されるいちごが、まあ、晩春だったと記憶する。パックの産地表示には静岡が多い。ハウスものが二月も早く季節を運んできたのである。
南総名物に太巻き寿司がある。海苔とか玉子で太巻きにするのだが、断面に絵柄が出るように中の具と配置を工夫する。図柄は祝い事の時には華やかに明るく、仏事には地味にする。昔はことある度に寿司を作ったらしい。袖ヶ浦市立博物館に行けば、見本が見られることはすでに紹介した。
今日広告に「太巻き寿司作り方教室」と言うのを見た。千葉伝統郷土料理研究会の先生方の指導とあった。何十年も千葉に住んだのに、太巻き寿司を知ったのは昨年だった。それも生活の中から伝わったのではなかった。今、伝統は意識しないと伝わらなくなっていることを改めて認識した。
もう一つの名物寿司はたまたま当地を訪れたときに知った。さんま姿寿司である。さんまの押し寿司は見たことがあるが、この姿寿司は初めてであった。さんまを背側から切り開き骨を抜いた後に酢漬けとし、生姜入りの寿司飯を包み込む。鮨肴(すしな)と言う。
寿司屋といってもフライ定食まである一般食堂だったが、役場の近くのその店にはいると、すぐお茶と鮨肴二切れが出てくる。誰にでもである。料理ができるまでの腹押さえのつもりだろう。この鮨肴は当地ではそういう食い物らしい。
これら二つの名物寿司を味わえたのは町を歩き回ったおかげである。

('98/03/25)