雅楽のクルーズ
- 「びいなすテーマクルーズ〜雅楽 天地の調べ〜」は2泊3日(4/24〜4/26)のショートクルーズであった。今年に入ってロング(「輝けるアジアクルーズ」('19)ほか)、ミドル(「びいなすシネマクルーズ」('19))、ショートと3種のクルーズを続けさまに愉しんだ。夕食はほぼ満席状態になる1回制だった。乗客数は300名を超していたのだろう。
- 知人はいなかった。もうクルーズを始めてから20年になるから、たいていどなたかに出会うのだが、今回は珍しくもお一人も知己が見つけらなかった。その代わりかどうかは知らないが、私の姓を覚えてくれているクルーが多くなった。かって部屋係であったフィリッピン女性が売店に配置換えになっていたが、彼女から声が掛かったときは少々驚いた。
- 私は自慢?じゃないが人識別能力が極端に悪い方で、かって、しばらく会ってない母親を病院に見舞ったとき、遠目横顔だったが、危うく見間違えそうになったことがある。同じ年格好の病院のお仕着せ姿だったとは弁解しても、認識力の悪さは覆い隠せない。認識能は人相手の仕事ではことに重要。実際はやらなかったが、アンケートにその評点を書き込むのもあるいは親切なのかなと思った。
- 今回望外の幸せは、正餐の向上である。初日が会席料理、二日目が和風フレンチ。アンケートには和風フレンチを讃えておいた。フレンチだから分類は洋食になっているが、実質はスープまでお椀の、パン食でなかったらフレンチ和食と云った方が良いほどだった。家内はお造りにモンゴ烏賊がのっていたと喜んでいた。私にはふぐの揚げ物が良かった。私は最後のデザートを除いて全部お箸だった。今回クルーズではテーブル相席者は殆どが女性だったが、若い女性に左箸を使う方が多いのには少々びっくりした。我ら年層は洋食のナイフは右、フォークは左というのと同じで、食事マナーとして和食では、左利きでも左箸は厳しく右箸に修正されたものである。
- 東儀秀樹がメイン・エンターテイナーである。雅楽のテーマクルーズであるから当然だ。昔聴いた彼の演奏をこのHPに書き留めている。「東儀秀樹コンサート」('00)は千葉市民会館でのコンサートだった。「葵祭クルーズ」('16)は飛鳥Uで京都と鳥羽に赴いたときの船内コンサートである。もう忘れていたが、読み返してみると今回催しの内容がほぼ同じものだったことが解る。
- 今回では初日に「悠久の音色〜海と空と雅楽が出会う夜〜」(篳篥:東儀秀樹、龍笛:〆野護元、笙:中村華子)というテーマ、二日目が「雅楽で奏でる自由な音楽の旅」(東儀秀樹)のテーマで、初日が和を二日目が洋を取り入れた自由な演奏と云うことになっていた。なんだかディナーの初日の会席料理、二日目の和風フレンチに合わせたような音楽会であった。
- 二日目の午前に「講演&雅楽器体験 雅楽の楽しみ方」があった。講演者は東儀秀樹で、雅楽器紹介を初日の共演者も加わっておこなった。雅楽、雅楽器はシルクロードを経て仏教と共に輸入されたが、1400年昔の姿を今日に伝えている。宮廷儀式とか神や仏への奉納と言った意味合いからだろう、忠実に過去を伝承してきたからだ。発祥の地では昔の面影は全く失われているのと対照的だ。民間発達の琴三味線尺八の音楽が、歴史と共に民衆の好みの変化に応じて姿を変えたのと対照的である。
- 笙はパイプオルガン型あるいはアコーデオン型といえる。輝けるアジアクルーズ:「ブルネイとマレーシア」('19)では、笙に似た竹の楽器を見たと記録している。ハーモニカと違って吸気の時も同じ音が出るという。篳篥(しちりき)は、葦を打ち伸ばしたリードにより、吹き方によっては、音に高低をかなりの幅でつけることができる。西洋楽器は、振動幅を狭くするように発達したのと対照的に、篳篥は揺らぎを心の表現手段として大切に考えてきた。篳篥は1オクターブを少し越せる程度にしか音程が取れない。音を出すだけでも困難な楽器だが、熟練してくると唇の操作だけで、かなりの音域変化をやれるようになる。
- 龍笛(りゅうてき)は2オクターブは取れる。TVドラマの「京都人の密かな愉しみ」のどの章かに、龍笛を介在させた、人妻と奏者の淡い物語があったことを記憶している。その時も龍笛の解説があった。本体は竹に相違ないが、その強度、美しさ、湿度対策、演奏のための重さのバランスなどから、竹を弦で巻きそれを漆で固めるなど工夫がしてある。金属の錘が入っている。なかなか説明上手で最後は雅楽器を並べて、聴視者に身近で見せた。
- 雅楽はドレミファの音階で、琴三味線尺八などの後世の音階とは異なり、西洋と同じだと言う。こんな話は初めて聞いた。このHPに「音律と音階の科学」('18)がある。物理学者が聴覚心理学と音響物理学から書いた音楽理論の抄録だ。「日本民族の5音階音楽はテトラコルド(実はトライコルド)で、根音から3音の中間音の違いによる4種に、綺麗に整理されている。民謡型、都節型、律型、琉球型だ。都節音階は箏、尺八、三味線。律型音階は雅楽。」と書いている。東儀さんの解説とはちょっと違う。上記記事には、西洋と中国の音律の基本は同じであることが解説してある。あるいはそこを強調したかったのかも知れない。
- 生憎と駿河湾周航中は曇り空で富士を仰ぎ見ることは出来なかった。相模湾からチラと山頂に雲をかぶった笠富士を観る機会があった。以て瞑すべしか。駿河湾の三保の松原沖あたりに海底地層探索の櫓を持った地球深部探査船「ちきゅう」が停船していた。5万トンあまりで150人ほど乗れるという。船は揺れるし流される。どんなに波静かで、さらに極端に埠頭に繋がれていても、揺れからは逃れられない。深い海底までドリルを下ろして、地層のサンプルコアをどうして取るのか、ちょっと興味があったので、YouTubeでJAMSTECの解説動画を見た。定点確保のために、360度回転するスクリューが6基付いていると云った。
- 売店に「令和元年」の焼き印のある正方形のカステラがお土産として売られていた。クルーズが終わったらすぐ令和に年号が変わる。きわもの土産だが結構売れていて、現物はすぐ無くなりあとは予約販売になっていた。我らはいち早く何個かの現物を購入していた。
('19/4/28)