博物館80

昭文社、ティーケープランニング編:「大人も楽しい博物館に行こう〜知的好奇心をくすぐる全国80スポット〜」、昭文社、'18を読む。昭文社は旅行資料専門の出版会社だ。この本も小冊子の部類で、例外もあるが1スポット1ページで、その6割以上が写真といった既述になっている。このHPには、つい先だって、「小規模博物館の行方」を上梓したばかりである。多少はそれと重複することを覚悟の上で、「博物館好き」自称の私の履歴を総括してみようと思った。
沖縄県立博物館・美術館は立派に建て替わった。昔の首里城址脇の県立博物館の見学記は今や貴重なノートである(「隼人の古代史」('02)、「ハワイの歴史と文化」('02)、「日本人になった祖先たち」('07)、「花の佐倉と歴博新展示」('10)など)。新しい博物館の見学記も載せている(「春のクルーズX」('11))。本書の南西諸島関連はこの1スポットだけだが、島ごとにとまでは云えないだろうが、各所に専門的な「資料館」「資料室」があって、好奇心を満足させてくれる。
石垣島には市立八重山博物館があって、何回か訪れている。竹富島は生きた建物博物館である(「石垣島、竹富島」('00))。石垣島には「請福」の泡盛博物館がある(「石垣島'09」)。宮古島にも熱帯植物園に並んで博物館があり、御嶽信仰や貧しい昔の農民生活などの展示が印象的だった(「宮古島」('05))。米軍上陸による住民集団自決の島・沖縄本島に近い座間味島に、海洋文化館とかいう私設の小さい蒐集品(ほとんどががらくた)展示場があることは、殆ど誰も知らないだろう。館長は特攻隊の生き残りと聞いた(「座間味島」('06))。
奄美大島には本場奄美大島紬協同組合があって、そこに紬の美術館がある。市立博物館には移設旧民家群があり、民俗展示解説も良かった(「奄美大島」('00))。屋久島では環境文化センターとか民俗資料館に立ち寄っている(「春の南西諸島・島めぐりX」('15))。植物園も売りらしい(「屋久島」(’00)、「電信棒に花が咲き」('07)、「発生生物「学」('08))。種子島は何と云っても鉄砲館だ(「春のクルーズW」('11))。
鹿児島の鶴丸城址には歴史資料センター黎明館があり、NHK大河ドラマ「篤姫」が人気を呼んだ頃に訪れている(「鹿児島」('08))。本書には結構壮大なこの博物館の記載はなく、代わりに島津公の近代産業施設として著名な尚古集成館を入れている。今回の大河ドラマ「西郷どん」でも顔を出した。一度は訪れたいと思っている。宮崎県の西都原古墳群は広大だ。見学に出掛けたのは現役のころで、まだ本書が紹介する県立西都原考古博物館など無かった。古墳地帯が見渡せる位置にあり、専門性の高い展示で注目されているらしい。
大分県立博物館は宇佐八幡に近い風土記の丘の一角にあり、八幡や国東半島の信仰に対する展示が良かったと記憶する。大分には、杵築とか臼杵に代表される古い街並みが息づいていて、博物館的雰囲気が味わえる。竹田城址界隈にもそのような場所がある。長崎県では原爆資料館と歴史文化博物館が記載されている。後者ではある日の長崎奉行所をボランティアが実演して見せたことを覚えている。前者に対しては、「怨念を表に出さず、それらを出来る限り科学的に解説しようとする、努力というか執念というかは、立派である。」という見学記を残した(「冬の長崎」('07))。「ミレニアムで行った長崎」('17)では出島和蘭商館跡を詳しく記述している。長崎は原爆で壊滅したものの、まだあちこちに昔の風情を残す。私のイチオシは唐人寺町のあたりの街並みだろう(「冬の長崎」('07))。
九州で是非訪れたいと思いながらいまだに行けないでいるのが、九州国立博物館である。太宰府〜天満宮には何回かでかけた。隼人・熊襲も勉強した(「楽園の先史人」('99)、「隼人の古代史」('02)、「生態系のふしぎ 」('10))。それらの知識を総括する場所になってくれるだろう。本書紹介スポットには九州の博物館としては、既述のほかに、北九州市立いのちのたび博物館、佐賀県立名護屋城博物館、佐賀県立九州陶磁文化館がある。いのちのたび博物館は写真を見る限り恐竜の骨格見本が見所らしい。恐竜や現生動物骨格標本を売りにする博物館は多い。福井県立恐竜博物館は有名だ。でも国立科学博物館を何回か見ておれば優先順位は低いと思っている。名護屋城博物館も陶磁文化館も、現地旅行のだいぶあとにできた博物館のようだ。
興味の赴くまま本書を最後のページから読み出した。以下は初のページに戻って、あまり脱線をせずに、旅談義風に私のコメントを入れるようにしよう。
大阪万博跡に出来た国立民族学博物館は、佐倉の歴博以上に人影まばらだった。私はアジア・クルーズに今年も出掛けたし、来年も出掛けるはずである。現地に立てばいやでも民族を感じる。文化の多様性と共通性(ことに地域的な)を系統的に学べる場所として、この博物館は何度も訪れて良いところだと思っている。トヨタ産業技術記念館は是非訪れたい一つだ。このHPに「ブリヂストンTODAY見学記」('14)がある。タイヤは見たのだから自動車も見たい。
全国でここだけのユニークな博物館が「網走監獄」(「夏の網走」('06))だ。「破獄」('06)や「獅子の時代W」('12)でその実体がわかる。小説「破獄」はまず緒形拳主演でTVドラマ化され、後にビートたけし主演でもリメークされた。オーツク流氷館には入ったが寒さが売りというのではあまり迫力がない。アイヌと開拓史の北海道博物館、北海道開拓の村にはまだ機会がない。私が北海道旅行に熱心であったのはこれらの建立前であった。函館の市立博物館と北方民俗資料館は見学した(「函館紀行」('04))。
青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸(「大人の休日倶楽部パス(東北スペシャル)」('12))は青森に繋がれている。昔の埠頭側の鉄路が残されており、車両も船の中にあった。函館では摩周丸(本HP「北海道寄港」('05))、東京では羊蹄丸(本HP「船の科学館」('01))を見た。関門連絡船、宇高連絡船はメモリアルシップにならなかったのと対比的だ。青森市立森林博物館と北方漁業博物館も、テーマ博物館として見応えがあった。
遠野には何回か出掛けているが本書の市立博物館は知らない。カッパ淵を目指して歩いた記憶がある。情報的に実りが多かったのは土地の観光バスだった(「遠野物語」('14))。滝桜の三春町には歴史民俗資料館や郷土人形館がある(「三春のサクラ」('06))。欲張らないローカルな展示が良い。仙台には何度か出掛けたが、仙台市立博物館にはまだ行ったことがない。伊達家から寄贈された資料が基本になっているようだから、一見の価値があるだろう。大名家寄贈などによる藩文化の展示はあちこちにある。宇和島の伊達博物館で見た朝鮮通信使饗応メニューの鶴料理は記憶に残っている。大津・本多家の膳所藩資料館は収蔵庫で、非公開で入れなかったことを思い出す。別に大津市立博物館があるが、仙台や宇和島のように1本化できないものなのか。秋田県立博物館(「大人の休日倶楽部パス(東北スペシャル)U」('12))では、秋田の風土病「ツツガムシ病の根絶記録が展示されていた。
関東には17スポットが上げられている。「小規模博物館の行方」('18)に関東分はかなり紹介したと思うが、まだまだ足を踏み入れていない魅力的な博物館があることを知った。その筆頭が、明治大学博物館だ。刑事博物館が前身だとある。大学付属の博物館は特色があって面白い。秋田大学鉱業博物館(「大人の休日倶楽部パス(東北スペシャル)V」('12))は地球生命史の展示が良かった。本書にも紹介してある京都大学総合博物館では、京都に残った隠れキリシタンの痕跡が目を惹いた。東大にも博物館があるはずだから一度訪ねたい。
新潟県立歴史博物館(「新潟観光」('09))は米所・新潟の泥田構造とその克服展示が記憶に残っている。豪農豪商の館は、あちこちに残っていて、博物館形式で公開している。新潟の北方文化博物館(豪農)、長野・須坂の田中本家博物館(豪商)(「田中本家博物館」('99))、あるいは東北・遠野の千葉家(豪農)、山形・酒田の本間家(豪農)(「酒田」('02))、秋田の旧奈良家住宅(豪農)(「大人の休日倶楽部パス(東北スペシャル)U」('12))などを見た。最近では新潟の二宮家住宅(「ミレニアムで行った新潟、青森、仙台」('17))。
明治の遺産は現地であちこちで見ることができる。でも明治村は、選りすぐりの遺産を展示しているからそれだけ印象が深かった。大正村もどこかにあるそうだから一度訪れたい。「四国村」四国民家博物館には立ち寄ったことがある。白砂糖「和三盆」製造に使った実機があった。
浜松市楽器博物館の紹介がしてある。諏訪にはオルゴールや時計の精密機械遺産を見せる博物館がある(「下諏訪−時の科学博物館とオルゴール博物館−」('03))、セイコーミュージアムも訪れた(「東向島散策」('12))。楽器も精密機械だ。かっては「電子立国日本」ともて囃されたIT産業が、あっという間に中国、韓国に追い抜かれた。IT機器にはステッパーのような戦艦大和以来の光学機器も含まれている。部品の水準ではいまだに世界のトップを走っているはずだ。日本のITに特化したような専門博物館はできないのだろうか。
伊勢神宮は何度か参拝した。斎宮歴史博物館が出来ているそうだ。神道は自然信仰が深化昇華して今日に伝わる、世界宗教史上稀なケースだと思う(「神々の明治維新」('16)、「近代天皇像の形成」('16))。各神社に社宝展示のような場所はある。しかし、心の形成をビジュアルな形で展示した博物館にはまだお目に掛かったことがない。立ち寄ってみたい博物館である。
各地の風土記の丘というと古墳時代の遺跡が大半だ。近江風土記の丘は信長の安土城址、佐々木六角の観音寺城址とそのあとの観音正寺と堂々たる中世遺産にも囲まれている。明治期の巡査の駐在所のような近世の遺産も運び込まれている。県立安土城考古学博物館(「安土から近江八幡へ」('08))は、安土城に特化したテーマ博物館だ。ここの風土記の丘は丸1日掛ける値打ちがある。琵琶湖西岸の「志賀の都」あたりも良いが、旅先としては纏まらない。
何と云っても近畿から西では価値高い遺跡の現物が、それもたいていは纏まった姿で数多く残っているから、歴史民族系に関しては現物見学を優先してしまう。でもテーマ館には魅力を感じる。本書には宇治市源氏物語ミュージアムとか、大阪城と難波宮跡の大阪歴史博物館、奈良県立橿原考古学研究所附属博物館がある。橿原考古学研究所は都道県立の研究所の中では著名な部類である。武家屋敷風の松江歴史館、出雲大社横の島根県立古代出雲歴史博物館、石見銀山世界遺産センターなどもある。私の前半生は関西だったが、これらの博物館は私が関東に移ってからのものだ。
大阪に竹中大工道具館があるという。四天王寺の金剛組は、1400年という世界一の歴史を誇る宮大工組織として有名だ(「老舗製造業」('07))。クルーズで大阪に立ち寄ったとき表通りの金剛組の看板を確かめに行った(「春のクルーズU」('11))。竹中と金剛は違うが、同じ日本。きっと伝承の素晴らしい道具が見れるのだろう。私は福山の履き物博物館を訪ねたことがある(「下駄履き」('99))。刀剣も道具と云えば道具だ(「鉄づくり今昔」('04))。匠に関するいろんな展示は、規模にかかわらず出来るだけ見学するようにしている。

('18/10/19)