八月の概要(2016)
- イタリア中部で24日M6.2(深度10km)の大地震があり、少なくとも291人(28日まで)以上が死亡し、400人以上が負傷した。歴史の町アマトリーチェ付近で、石造りの家々が瓦解した。同じ日ミャンマーでもM6.8の大地震があり、震源地からおよそ30km離れたバガンの、仏教遺跡も多大の被害を受けたという。日本では、迷走した台風10号が、東北地方を日本海に抜け、北海道と岩手県に人的被害を伴う大雨を降らせた。
- 第6回アフリカ開発会議(TICAD)がケニアの首都ナイロビで開かれた。今までは日本で開かれていた。安倍首相は約3兆円規模の投資(中国は6兆円)や1千万人の人材育成など、官民挙げてのアフリカ支援を表明した。量よりも質、資源開発よりも産業育成に重点がある。
- 8/19ミャンマー国家顧問スー・チー氏が中国を訪問。中国は元首並みに待遇。
- 8/16の毎日によると、バイデン副大統領が大統領選応援演説で、「私たちが(日本を)核武装させないための日本国憲法を書いた」と、日本国憲法を米国が起草したことを認める発言をした。否定し続けてきた日本の保守政権は、改憲論争の前に「米国製」を肯定する軌道修正をする時期に来ている。
- 8/7の報道によると、中国が東シナ海のガス田にレーダー設備を備えた。8/8尖閣諸島接続水域に約数百隻の中国漁船があり、13隻の海警局船が護衛している。うちかなりに機関銃がある。政府は漁船、公船の領海侵入に対し毎日のように抗議した。8/17又々領海侵入。11日中国漁船1隻が大型外国貨物船と接触沈没。8名を日本の巡視船が救助した。8/19日本海で中国艦隊が演習を始めた。
- 8/24北朝鮮が潜水艦ミサイル発射に成功。500km離れた日本の防空識別圏に到達。実質は1000km到達可能と見られる。
- 天皇陛下がビデオメッセージの形で生前退位を強く示唆された。高齢と手術で象徴の勤めが果たせなくなるとの危惧を述べられた。保守系宮内庁系には大時代的理由で反対する向きが多いようだが、陛下の今回のお言葉はごく自然で納得が行く。周囲はお気持ちに沿うように努力すべきだ。
- 安倍新内閣は、麻生副総理、岸田外相、菅官房長官ほか5名を留任とし、9名を交替させる。女性閣僚は高市(総務)、稲田(防衛)、丸川の3氏。石破氏は入閣を固辞した。自民党幹事長に、重傷の谷垣氏に替わり、二階氏が就任する。
- 次期民進党代表に蓮舫氏が立候補を表明した。彼女には岡田路線に沿った発言が多い。かってノーベル賞学者に対しコンピュータ予算問題で「二番手ではいけないか」と云ったり、外国記者に岡田氏を「つまらぬ男」と評したり、私には軽薄で、将来の首相の器はないヒトと思う。保守系の細野氏は8/8立候補を断念。前原氏は立候補。長島氏の支援を求めている模様。
- 政府は事業規模が28.1兆円の新たな経済対策を決定した。財政再建はいよいよかけ声だけになって行く。
- NHKサイエンスZERO「水の生態調査の大革命!環境DNA」で、水中の微量DNAから水中に生息する生物を見つける方法が開発され、ニホンウナギ、オオサンショウウオ、イトウ、マアジなどへ応用研究されている様子が紹介された。
- TV東京「ガイアの夜明け」で近大(近畿大学)ナマズが取り上げられた。近大マグロの経験(本HP:「近大マグロ」('15))が活かされている。人工飼料により清水の中で脂肪率15%以上(ウナギは12-20%)の、臭みが無くウナギに近い食感の養殖ナマズの開発物語であった。土用の日に10万匹出荷を目標としたが、その1/4程度の生産量だった。養殖地鹿児島での大雨による泥の流入が原因とされていた。
- 米国化学会のロジャー・アダムス賞に、中部大の山本尚教授(73歳、京大工出身)が選ばれた。山本教授は名古屋大教授や米シカゴ大教授などを歴任した。野依良治氏に続き日本人2人目で、野依氏を含め受賞者の4割ほどがノーベル賞も取っている。受賞対象となった研究は、不斉炭素骨格生成に有効な「分子性酸触媒」であるキラル・ルイス酸触媒の開発である。
- 8/24の毎日の一面に、イスラエル軍の自動運転の武装軍用車の実戦配備開始が載った。自動車メーカーの自動運転車開発競争はしばしば報道されているし、無人軍用航空機の実戦参加も衆知である。しかし野戦場における軍用車の全自動化はこれらよりは格段に難しいと考えられていた。
- 8/30の読売にリオ五輪のサイバー防衛を担当したイスラエル企業を紹介していた。世界最先端の技術があり、彼らは東京五輪に焦点を当てて採用に向けて活動している。我が国のサイバー対策要員は8万人も不足しており、しかも現要員の技術は低レベルだそうだ。8/31の読売に、JAXAのX線天文衛星「ひとみ」(310億円)が打ち上げを成功させたのにもかかわらず、宇宙で分解した理由が単純なプログラムミスによるものだと書かれていた。また三菱飛行機MRJの米国行き飛行中止が、空調監視システムの不具合によると判明している。衛星でもMRJでもトラブル部分は外部よりの購入部品というが、主体組織が最終的な総合試験をするはずだ。管理体制を含め電子工学部門における日本の立ち後れが気になるニュースが続く。
- 8/5リオ五輪が始まった。開会式の模様をNHKオンデマンドで閉会の後に見た。なかなか見事な演出で、選手入場前のブラジル歴史のレビューであるエンターテイメント、最後の太陽系を模した聖火台など、予算カットを感じさせない力作であった。8/7競泳400m個人メドレーで荻原選手が金、重量挙げ女子48kg級でオリンピック4回目出場30歳の三宅選手が銅を取った。銅は柔道ほかにこの時点で6個。三宅選手には腰痛がありそれを乗り越えての戦績だった。女子100mバタフライで16歳の池江璃花子選手は6位だったが、予選から出場のたびに日本記録を塗り替え、決勝では念願の56秒台に突入した。8/8男子柔道73kg級で大野将平選手が金、男子体操団体(内村、田中、白井、加藤、山室の各選手)で日本チームが金、ほか柔道女子57kg級銅1個だった。
- 8/9柔道男子81kg級とカヌーで銅メダルを獲得した。男子競泳800m自由形リレー(萩野、江原、小堀、松田)で東京五輪以来となる銅を取った。女子体操団体はメキシコ五輪以来となる4位に付けた。坂井選手は200mバタフライで銀。8/11内村選手が体操個人男子総合に優勝、柔道男子90kgではベイカー選手が、女子70kgでは田知本選手が優勝した。男子200m個人メドレーで荻原が銀、女子200mバタフライでは銅、柔道男子100kg級にも銅。8/12柔道100kg超級で原沢選手が銀(優勝の相手選手はもっぱら原沢の得意組み手を切る戦法で、勝敗は指導の数の差だけだった。場内にブーイングが出たほど柔道らしからぬ試合に終始した。審判の資質を問う声がある。)、女子78kg超級で銅。男女とも苦手とされた柔道重量級の奮闘が目覚ましい。
- 8/14レスリング男子グレコローマン59kg級で大田忍選手が銀、テニス男子シングルスで錦織圭選手が銅(96年ぶりのメダルという)を獲得した。8/15体操男子個人跳馬が銅。卓球女子団体準決勝のドイツ対日本を見た。3:2で敗れたが、熱戦であった。ヨーロッパ諸国には中国ないし中国系の帰化選手あるいはコーチ、監督が数多い。ドイツ女子選手は3人中2人までがそうだったし監督も中国系らしかった。8/16シンガポール戦には3-1で勝ち、銅メダルを確保した。シンガポールの選手は全員が中国からの帰化選手だと紹介された。対独対シンガポール戦ではともに第1戦を落としチームを苦しくした。団体戦で復活したエースの石川を第2戦以降にしたのはなぜか、選手起用に疑問が残る采配であった。
- シンクロナイズドスイミングのデュエット、チームの双方で銅。メダルなしが続いたこれまでと比べると、井村監督復帰による成果と思われる。8/17卓球男子団体(水谷、丹羽、吉村の3選手)は決勝戦で中国に惨敗したが、銀。水谷が第2戦を勝った。フリースタイルレスリング女子48kg級で登坂絵莉選手が、69kg級で土性沙羅選手が、58kg級で伊調馨選手が金を取った。伊調(32歳)の勝利はオリンピック個人種目4連覇という史上初の偉業であった。8/18女子レスリング53kg級吉田沙保里選手が決勝で敗れ銀。63kg級で川井梨紗子選手が金。バトミントン女子ダブルスでは高橋・松友組が金。女子シングルスは銅。8/19男子フリースタイル57kg級で樋口黎選手が銀。
- 陸上50km競歩で銅。400mリレー予選(山県亮太、飯塚翔太、桐生祥秀、ケンブリッジ飛鳥組)はアジア日本新記録で通過、翌19日の決勝ではさらに記録を縮めて銀メダルに輝いた。ほか陸上での決勝進出はやり投げ、新体操。五輪全メダル41個の新記録、うち金が12個、銀が8個、は立派だった。でもその裏で予選落ちが数多く報じられている。選手派遣基準をもっと厳しくし、たとえそれが派遣数zeroを意味しても、本当の精鋭だけにすべきだ。男女のマラソンを含む長距離はあの成績では参加の意味があるのだろうか。
- 閉会式の安倍さん、小池さんにはもうちょっと笑顔と政治的パーフォーマンスが欲しかった。小池さんは五輪の標語に「透明性」を付け加えた。会場には空席が目立つ場合があった。施設には再利用のために観客席を仮設スタンドにした大会場(テニス)も見かけられた。予算は大幅圧縮でロンドンの1/4に抑えられたと聞く。ロンドン五輪の倍の警備だったと云うが、選手の被害は少なかったものの、スラム街での犯罪は相変わらずであった。パラリンピックの観客席はまだ12%ほどしか売れておらず、大会経費難のため大幅な簡素化が行われるという。各国への旅費等の援助がカットされるため、出席が危ぶまれる国もあるという。リオ五輪にも私は懐疑的(「七月の概要(2016)」)だったが、リオ・パラリンピックにはもっと懐疑的である。国際パラリンピック委員会IPCは、ドーピングの国家関与を理由にロシアの参加を拒否した。
- ドーピングにより失格事件を起こした国は、キルギス(重量挙げ)、ブラジル(自転車)、中国(競泳)、インド(レスリング)、ポーランド(重量挙げ)、ブルガリア(陸上)。米国は偽強盗事件を起こし謝罪した。
- イチローが米大リーグ安打通算3000本を達成した。高校野球夏の大会は作新学院が制した。
- かって稲尾、中西とともに西鉄黄金時代のトリオの一角を担った豊田氏が死去した。文楽人形使いの人間国宝の吉田文雀氏死去。
('16/08/31)