
- 私は中学以来の虫屋で、蝶を専門にしている。といっても本当に熱中したのは中学2年生と3年生の頃である。学校の生物班にはまってしまい、先輩連に連れられてあちこちへ昆虫採取に行った。今は採取は止めて蝶々ウオッチングとしゃれ込んでいる。私には貴重な、心に潤いを与えてくれる趣味である。ただ旧制最後の中学生だったので後輩は学校解散まで全く入学してこなかった。だから先輩から学んだものを後輩に伝える機会はついに来なかった。その点は今でも残念に思っている。
- 旅行に出ると蝶に直ぐ目が行く。沖縄には図鑑か標本でしか見なかった蝶が自然の中で飛んでいる。バスから降りたわずかな時間に出会う蝶だからそう種類は多くないが、一番鮮明な印象はシロオビアゲハが止まったときであった。オナガかジャコウか判らない後翅が細長いアゲハも見た。あとの二種は本州にも普通にいるはずの蝶だが、私には初めてであった。
- 琉宮城という観光客相手のレストランに併設されて蝶園があった。オオゴマダラがわんさとおって悠々と花に集まる。四国の土小屋から石鎚山にいたるルートで私は一度アサギマダラを手づかみにした覚えがあるが、このマダラもまったくののんびり屋である。赤い花が大好きで丁度花盛りのブーゲンビリヤに群がるが、赤い帽子を被るとそれに集まる。これがその蝶園の見せ物である。おばさん連の人気を惹き付けている。
- 蝶園にいるのは飼育されている蝶である。しかしこの蝶園を取り囲む林では、一部は蝶園を逃げ出した奴と云うが、ツマベニチョウが大きな飛翔を見せてくれる。なかなか敏捷で滑空が早い。シロチョウ科とは思えぬ飛び方で止まって羽を広げると前翅の先端の紅色が鮮やかである。イシガケチョウは蝶園の飼育箱の中で見た。そとにも群を作って飛んでいるというのでしばらく眺めていたが現れなかった。
- ロバとたいして変わらない小さい琉球馬、昔は砂糖黍を絞った水牛、毒蛇のハブ、海岸に出れば無数の白あるいは薄い青の珊瑚、気根の下りたマングローブ、タコノキ、椰子に芭蕉はそう多くは見なかった。松食い虫の被害が出ているという琉球松。パイナップルは酸性の土地でないとだめだそうで中部より北だそうだ。南に行くほど動植物相は豊かになる。そして私の育った環境とはたしかに違った内容である。日本も広いんだと思った。
('97/10/29)