十一月の概要(2014)

米国中間選挙で共和党が勝ち、両院で共和党が過半を占める事態になった。民主党オバマ大統領の後半任期期間における政治の変化が注目される。
中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の覚書調印式に、オーストラリア、インドネシア、韓国は出席しなかった。米国と日本が主導する世界銀行(WB)やアジア開発銀行(ADB)に対抗する性格が強い。資本金は500億ドルと予想される。うち50%を中国が負担する予定だ。参加予想国はASEANや中東諸国およびインドであった。AIIBに引き続いて、世界銀行と国際通貨基金(IMF)の代替を目指すBRICs開発銀行の具体化が議論されている。
先月は小笠原諸島近辺であったが、今月に入り伊豆諸島近辺の排他的経済水域EEZ、時には領海にも中国漁船(約205隻)が集合し、サンゴ密漁を行っていることが確認された。台風で一旦は避難したが、通過後再び大挙して元の密漁位置に戻った。海上保安庁はこの大々的な無法行為の取締に何を躊躇しているのか。中国政府の呼び戻しで隻数は減ったが、今度は鹿児島沖で拿捕漁船が出た。中国向け中継サーバーの捜査が警視庁、京都、鹿児島など19道府県警の手で行われた。中国からのサイバー攻撃やネットバンキングの不正送金に悪用されている疑いが濃い。中国人経営者らの取り調べが始まっている。成田空港覚醒剤密輸の統計が出た。中国からは前年比8倍強。全体の4割。中国人の悪事が突出してマスメディアの種になる。対馬の寺院から仏像と経典を盗んだ韓国人が検挙された。2年前の盗難仏像の韓国からの返還はいまだ実現していない。先方の反日嫌日は彼らの歴史観から来る観念的なものだが、日本人の反感嫌悪感は、彼らから現在受ける実質被害と対応の傲慢さから生じている。
APEC首脳会議で安倍首相と習主席の会談が2年半ぶりに行われた。未来志向の日本に対し相変わらずの歴史重視の中国であった。新聞写真は互いに笑顔のポーズであったが、TV画面では他の首脳へ振りまく愛想笑いとは正反対に、習さんは安倍さんには終始仏頂面だった。あの皇帝もどきの姿勢は、それこそ「中華思想の歴史に学んだ」傲慢非礼外交姿勢である。正しい学び方だとは決して思わない。米中首脳会議では温暖化対策や軍の信頼醸成につき話し合われた。自衛隊に対し再々行われマスメディアを賑わせた、軍艦への照準波照射や軍用機への異常接近の好戦的態度が、不測の事態をもたらす危険を、首脳レベルの話し合いでないと避けられぬ相手である。
首脳会議は、中国主導のアジア太平洋自由貿易圏(ETAAP)の実現に向かうと云う宣言を採択して閉幕した。TPPと重なる自由貿易圏構想が、まだTPPが実現しない先に打ち出された。TPPのネックになっている日米交渉は、自由貿易推進派の共和党が議員の過半数を占めたことと相まって、前進すると考えられる。
22日、M6.7の長野北部地震が新潟−神戸ひずみ集中帯(新潟地震、阪神大震災、中越地震、中越沖地震など多発)の一部、糸魚川−静岡構造線に沿った神城断層の深さ5kmの位置で起こった。41名の重軽傷者を出したが、幸い死者は出なかった。
川内原発再稼働が年明けにも可能になった。川内市長、市議会に引き続き県知事、県議会が了承した。
10/31日銀が大型追加金融緩和を打ち出した。政府も追従的追加予算に踏み切る模様。国債の購入を年間50兆円から80兆円に増やすことが柱になっている。経済指標が軒並みに低迷し、物価上昇も予想(年2%)ほどに上がらない。かつ消費税アップ決定期限(解散決定前1年半延期に決まった)が迫っている。このような背景から景気回復ムード再点火のための緩和だが、経済界にはサプライズで、円相場は直ちに112円台と6年ぶりの円安となり、日経平均株価は一時850円も上昇した。今回緩和に対する政策委員の票は4:3で、反対の3票は民間経済界委員からである。世界の金融界も一斉に反応し、NYは200$ほど、独仏は2%強株価を上げた。結果の良し悪しにかかわらず、私は日本経済を一六勝負に賭ける黒田総裁のやり方には大反対である。
年金運用の公的機関GPIFが安全な国内債券中心運用から国内外株式への大幅シフトを決めた。資産は従来は国債中心に債権60%だったがそれを35%まで落とし、かわって株式保有分を内外半々ずつ全50%に引き上げる。GPIFは資産132兆円の世界最大の投資機関である。投機的運用失敗の場合の補填処理を、年金受領者がどのように被るのか決めておく必要がある。
政府諮問有識者会議が、現状のような人口減少傾向が続く限り、'40年には成長率がマイナスになると推定した。閣僚の中には地方衰退防止に向けて、政府機関の地方への分割、東京一極是正をリップサービス的に発言しているものがいる。いずれももう10年も20年も昔から判っていたことだ。もっぱら目先の刹那的政策にばかり熱を上げて、民族の将来への施策を怠ってきた。政権担当の保守系政治家、目先の摩擦にばかり目を奪われてきたマスメディアの責任は重い。
景気浮上の足踏み状態が続く中、消費税2%増税の1年半延期の是非を問う形で、安倍首相は衆院を解散12/14選挙を実施する。既定路線をもう一度承認させる選挙という。財政再建が待ったなしの段階に来ているのに、いささか選挙費用700億円がもったいないと感じさせる唐突な決断だ。前回解散前の党首討論における民主自民の約束・議員数削減はついに果たされなかった。最高裁は26日に'12年の衆院選挙に引き続き、'13年の参院議員数格差に対して違憲状態という判決を出した。違憲が判っていても是正しないのは、国会議員特に絶対多数である自民公明の与党議員の、憲法より自分の選挙区利益を優先する姿勢である。
7-9月度の実質GDPが年率換算で-1.6%となった。日経平均株価は-517円を記録した。4半期統計では凸凹もある。しかし相次ぐマイナス成長報告は、首相の肯定的発言にもかかわらず、アベノミクス失敗を意味するように思う。そもそも人口減少、高齢化の中に成長率2%と云うのははじめから無理で、成長率0%が関の山ではないのだろうか。大企業の好決算も、再投資は海外に流れ、不安定な非正規雇用者は増えても正規雇用者増には直結しないし、利益の雇用者への還元は遅々として進まない。消費税先行と円安による物価上昇が消費者の財布を引き締めている。GDPに占める消費の割合は6割という。日銀の緩和に追従する他国の中央銀行は出てこなかった。アメリカは逆に引き締めに掛かっている。黒田総裁は失敗に油を注いだのではないか。
沖縄県知事選挙で前那覇市長の翁長雄志氏が自民公明推薦の現職知事に10万の大差を付けて当選した。同じ保守系ながら、現職が普天間基地の辺野古移設に賛成なのに対し、翁長雄志氏は反対、県外移設の主張であった。当選はよいが、鳩山氏が首相の座を降りなければならなかった問題である、翁長雄志氏は国の問題だとお題目を唱えるだけで、秘策はないと見る。日本全体の対中国防衛問題についても翁長雄志氏は何も触れていない。国民はそれぞれに国家の安全と発展のために責務を負って行動している。沖縄県民は地政学的に彼らだけにしかできないことを求められている。
ユネスコで26日「日本の手漉和紙技術」の世界無形文化遺産登録が正式に決まった。「石州半紙(せきしゅうばんし)」(島根県浜田市)、「本美濃紙(ほんみのし)」(岐阜県美濃市)、「細川紙(ほそかわし)」(埼玉県小川町、東秩父村)の技術である。
文化勲章のノーベル物理学賞中村教授が、研究を許した日亜化学工業に、初めて感謝の言葉を口にした。日亜対中村の特許紛争の枠から外れて、中村氏は、アメリカで研究者冷遇が日本企業の体質であるかのような発言を繰り返していた。日亜の(元)社員のツイッターは、中村氏が破格の年収を得ていたと暴露していた。
NHK:「体感!グレートネイチャー トルネードアレー アメリカ竜巻多発地帯を行く」(11/1)は竜巻発生現象に取り組む科学の最前線をレポートした。アメリカ政府は年間50億円を使う研究所を運営して解明に努めている。巨大竜巻は、周辺に発生する無数の小さな渦や竜巻を飲み込みながら生長する、という解析結果のCGが印象的であった。異常気象のエルニーニョ、ラニーニャ現象との関連にまで話が及ぶ。そのほか数々のNHKの科学番組を見た。これらには他の民間メディアが足元にも及ばぬ質量感がある。
欧州宇宙機関の探索機が、火星と木星の間にある「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」の核に子機を着陸させた。ただし着地時の予期せぬバウンドにより、太陽電池による充電は不能に陥っている模様。探査機の彗星着陸は史上初。行ったきりで、「はやぶさ」のように採取サンプルと共に帰還する計画はない。
群馬大病院で同一医師による肝臓腹腔鏡手術で8名が死亡していた。高難度手術を執刀する際、内規で定められた事前審査の申請をしていなかった。普通なら一度死亡事故を起こしたら、2回目以降は慎重な上に慎重になるものだ。患者への事前説明も危険性を認識させるようなものではなかったらしい。群馬大病院は、患者を医師の腕を磨くためのモルモット的存在と思っているのではないか。県がんセンター(千葉市)でも腹腔鏡手術を受けたがん患者が術後に相次いで死亡している。第三者検証委員会はその11名について調査している。
トヨタが水素燃料電池車の発売を発表した。200万円ほどの政府補助金により520万円で売られる。窮極のエコカーと新聞は書く。走行中の炭酸ガス発生量はzeroに間違いがないが、車体製造や水素製造に炭酸ガスを出す。車体製造時の炭酸ガスは車製造コストに比例するだろうから、結構多いだろう。エコかどうかは車体廃棄処分に至るまでのトータルで見なければならない。
テニスの錦織圭選手が、パリマスターズのベスト4に進出。年間上位8人による世界最強決定戦ATPツアーファイナル(ロンドン)の出場権を獲得した(日本人初)。そのATPでは4名総当たり戦B組を2位で通過(アジア人初)し、ランク1位のジョコビッチと準決勝を戦い2:1で敗退した。フィギュアスケートのグランプリシリーズ第2戦スケートカナダの男子シングルに無良崇人選手が優勝した。総得点は255点ちょっとだった。第4戦ロシア杯の女子シングルでは本郷理華選手が178点で優勝した。日米野球では侍ジャパンがMLBオールスターに3連勝し、今年の勝ち越し(24年ぶり)を決めた。第3戦では則本選手を軸とする投手陣がノーヒットノーランに押さえ込んだ。大相撲九州場所で白鵬が大鵬と並ぶ32回目の優勝を飾った。
映画俳優・高倉健が83歳で他界した。「動乱」「駅 Station」「居酒屋兆冶」「あ・うん」「鉄道員(ぽっぽや)」「夜叉」など205作に出演した。男っぽさを寡黙に演じた。共演者を引き立たせることができる名優であった。

('14/11/27)