九月の概要(2014)
- 安倍首相と来日中のインド・モディ首相は、会談後共同声明に署名した。今後5年間で日本がインドに官民で約3.5兆円の投融資をし、直接投資額や進出企業数を倍増させる目標を明記した。日本政府は交通インフラや工業団地の整備などを後押しする。外務・防衛閣僚級協議2プラス2創設を念頭に置いた対話強化など安全保障分野で連携を深める姿勢も打ちだした。
- 安倍首相がパングラディシュを訪問、日本の非常任理事国入りへの賛成を得た。7日にはスリランカ大統領を訪問、会談し、シーレーン確保を念頭に、巡視船供与、海上自衛隊とスリランカ海軍の共同訓練などを話し合った。パングラディシュと同様に最大6000億円/4−5年の政府援助も行う。破産状態に近い財政なのに、次々と膨大な援助を約束する。身の程をわきまえねばならぬ。
- 香港の行政長官選挙の民主化を要求するデモが続いていて、金融街の機能停止が危惧されだした。中国の改正案では、民主派からの立候補は事実上は不可能になる。
- ロシア空挺兵10名とウクライナ兵62名の捕虜交換が行われた。ロシア正規軍の介入投入が「非公式」に行われるという奇妙な超大国の姿勢が明るみに出、西側はロシア制裁を一層進めることになる。ウクライナはNATO加盟に向けて立法処置を講じるようだ。NATOは4千人規模の緊急即応部隊の創設を進める。危機に際し、「2日以内」(ラスムセン事務総長)に展開できる能力を持つことを目標にする。9/3ロシア軍制服兵士が10ヶ所に亘って展開していると発表された。
- スコットランド独立に関する住民投票が明日行われる。9/17時点での各報道機関の報告を総合すれば、賛否拮抗といってよいようだ。イギリス人は大人だ、私は結局は独立しないと見る。イングランド側を慌てさせたことで目的を果たしたと思う。開票の結果は反対が10%以上も賛成を上回った。
- 米国のイスラム国に空爆に仏が加わり、英も同調の見込みとなった。
- TPP交渉は米国の農業畜産組合背景の強硬姿勢がガンになって妥結に進みそうでなくなっている。米大統領に、米議会が妥結権限を与えぬ限り、TPPは空中分解しそうな雰囲気になっている。私はその畏れが充分あると、当Webサイトの「TPP亡国論」('12)、「日独文化比較論」('13)で述べている。
- 東京を中心に116名(9/13現在)のデング熱患者が発生した。代々木公園でデングウィルス媒介のヒトスジシマカに刺されたのが始まりだが、近隣の明治神宮、新宿中央公園あたりにも蚊が拡散しているらしい。公園で赤外線捕獲器に捕らえられた蚊の映像が放映された。意外に多くの蚊が生息している。その中の複数の蚊からデングウィルスが検出された。代々木公園、新宿御苑は閉鎖になった。
- 内閣改造で、注目の石破氏は新設する地方創生担当相に収まり、幹事長に前総裁の谷垣氏が就任する。小渕優子氏が弱冠40歳で、経済産業相と云う大任を背負う。彼女は将来性が買われているようだ。石破氏には日本の二極化、三極化をまずは進めてもらいたい。NHKオンデマンドで「ろーかる直送便 金とく 「命つなぐ川へ〜岐阜・石徹白(いとしろ)の旅〜」」(8/28)を見た。著名な釣り天国に仕上げた地元漁業組合の熱意を見た。政府の地方支援も熱意を見極めた重点配分でなければ、単なる自民党選挙対策のバラマキと受け取られる。
- 内閣改造を機に世論調査が行われた。支持率急上昇という読売、その前と変わらないという毎日、中間的なNHKとそれぞれの結果を発表した。数値も大きく異なる。まだ仕事を始めたばかりの改造内閣の人気投票などあまり意味がないが、読売と毎日の対称的な結果は、「マスメディア」の調査が、調査元の隠れた意図の下に行われているのではないかと疑わせる。果たして、特に調査先のサンプル抽出が国民という母集団から見て無作為といえるものか、数理統計学上の誤差は何%か、など比較検討できるといいのにと思う。以前にも同様の疑念を抱かされたことがある。
- 4−6月度GDP(年率換算)はマイナス7.1%であった。アベノミクスの景気のいいかけ声とは裏腹に、景気浮上の勢いは何か弱々しい。8%から10%への消費税率アップの是非について慎重意見が持ち上がっている。円安が進み、月末で109円/$になった。
- 福島県佐藤現知事が3選不出馬を表明した。中間貯蔵施設設置に対し法外な交付金(政府最初の3倍)を引き出すなど、県民のためには活躍したようだが、TVに映る政府への不遜なものの言い方は、復興税をまんべんに背負っている我々にとって、ゆかいな人物ではなかった。
- 9/10の毎日の指摘では、東日本大震災の住居復興状況がはかばかしくない。神戸・淡路大震災では同じ3年4ヶ月目には仮設住宅に住む住民は全戸の1/3に減少し、5年後には全戸撤去になった。東日本大震災ではまだ8割が残っており、5年後の全撤去は不可能だろう。仮設の自治会組織も、引退引っ越しで抜ける会長や幹部の後継者が無く、自然崩壊して行くところが出ている。同じ日の読売夕刊は、宮城県岩沼市の集団移転が着々と前進している様子を伝えた。集落の絆を守り続ける姿勢があるという。住民の意欲と結束への意志が明暗を分けている。ただただ「お上」がしてくれるはずと待っていては何事も進まない。
- 9/27御嶽山が低温火砕流を伴う水蒸気噴火を起こし、登山者多数に被害が出た。29日時点で心肺停止状態24名、死者12名になった。指定警戒活火山47の中に入ってはいたが、予告のない噴火であった。噴火はこれ以上大規模化しない模様。
- 朝日新聞社長が9/11記者会見し、原発事故に於いて「所員の9割が所長命令に違反して撤退した」との記事を撤回し、謝罪した。韓国慰安婦問題に引き続き2度目の重大誤報である。どちらも国家の品位を傷つける重大な「犯罪的」行為であった。それまでも朝日新聞は、政府とか大企業とか大組織とか、とにかく国民を牽引する立場にたいして、「思い込みの激しい」否定的批判を繰り返した。発行部数が読売に次ぐ大新聞であるだけに、その害毒は計りしてない。慰安婦については第三者委で検証すると云うが、その委員には「朝日新聞」村からではなく、対立批判メディアからの人選でなければ、意味がない。
- 昭和天皇実録が宮内庁より公開された。12000ページあまりの記録集で、第1級の歴史資料と言えるだろう。読売は天皇の平和主義と苦悩を強調した。太平洋戦争開戦の大詔を出した天皇であることが嘘のような書きぶりだった。戦争責任のトップにあることは誰も疑わぬ事実であるのに。
- 今年の司法試験合格者の発表があった。注目の合格率はまた下がって23%弱となった。成績順に京大、東大が50%以上、一橋、慶応、阪大が40%台、早稲田(最多合格)、中央、千葉大、神戸大が30%台だった。予備試験組が66.8%の好成績で、2千人弱の合格者の10数%を占める。法科大学院制度が理想とかけ離れた存在になっている、勉強が足りない、あるいは試験制度自身が旧態依然としていると云うことか。前月の概要に述べたように、司法の判断に国民からの解離が指摘されるようになっているから、新制度の充実を望みたい。
- NHKオンデマンドで「時論公論 子どもの貧困をなくすために」(8/30)を見た。厚生労働省が7月に発表した子どもの貧困率はますます増加し、過去最悪の16.3%だという。ことに一人親の子どもは2人に1人以上がこの部類に入る。先進国として恥ずべき状態と思う。今までも本HPで折に触れ指摘してきたが、基本は儲けの配分が資本側に厚く被雇用者側に薄い、ことに低額所得者に低いことだ。日本企業の大型アメリカ企業に対するM&A劇を見ても資本が儲けを蓄えていることがわかる。安倍自民政府はかえって補助を減らすなど、少子化対策というかけ声とは正反対の財政政策をとっている。
- 今年のラスカー賞基礎医学部門に、細胞が機能を損なわれたタンパク質を蓄積せずに「品質」を保つ仕組みを解き明かした森和俊・京大教授(56)ら2氏が選らばれた。この賞は山中教授もノーベル賞の3年前に受賞した。アメリカのもっとも権威ある医学賞で、今まで7名の日本人が受賞、全受賞者の2割がさらにノーベル賞を取っている。森教授は'09年にカナダの「ガードナー国際賞」を取っている(主に読売より)。
- 9/12理研の高橋政代プロジェクトリーダーと先端医療センター病院(神戸市)とのチームは、iPS網膜細胞膜の難病「加齢黄斑変性」患者への移植手術に成功した。本難病患者は全国で70万人を数える。治療法としの成否は4年ほどの経過観察でわかる。今回の移植は安全性確認に重点を置いており、視力の大幅な回復は見込めないが、症状の進行を止められる可能性があるという。iPS技術の人体応用は世界初めてという点はある。しかし読売などの報道ぶりは今の研究段階にしてはまさにフィーバー的で、微に入り細に亘って記事にしていた。チームも好意的に紹介されていた。
- STAP細胞に関する猛烈なパッシングで、チームに参加して間もなかったES細胞の世界的頭脳・笹井氏を、自決に追い込んだ後ろめたさが、マスメディアにはあるのだろう。笹井氏責任論の改革委員長の岸輝雄・東大名誉教授(八月の概要(2014)Uに記載)はどんな評価をするのか見ものだ。そもそも自分が指導教官である学生のデータならともかく、対等あるいはそれに近い共同研究者のデータを、裁判官のようにいちいち吟味するなどあり得ない。私も過去に研究者であったからそれがわかる。逆に言えば、東大ではそれをやっていたと、彼は主張しているように思えるが、信じ難い話だ。何のために論文発表の場があるかを理解していない。岸さんは科学に対する方角違いのパッシングが有害であると覚ったであろう。そのためにいっときではあるにせよ、高橋氏の研究にブレーキを掛けたことを反省せよ。
- モントリオール(カナダ)世界映画祭で、「ふしぎな岬の物語」が審査員特別グランプリ(グランプリに次ぐ賞)とエキュメニカル審査員賞の2冠に輝いた。主演とプロデュースの吉永小百合にとって、海外映画祭初タイトルとなった。
- 全米オープンテニス男子シングルスで、錦織圭選手(世界ランク10位)が、日本人選手としては96年ぶりに準決勝に進んだ。9/6の準決勝では世界ランク1位のジョコビッチ(セルビア)を倒して決勝へ進んだ。決勝は3:0でクロアチアのマリン・チリッチ選手に敗れた。プロ野球日本ハムの入団2年目の大谷翔平選手は、9/13の時点で、投手として11勝、打者として本塁打10本をあげ、前人未踏の2刀流という新境地に到達した。ウズベキスタンで開かれているW杯レスリング11日の女子53kg級で吉田沙保里選手が、58kg級では伊調馨選手が優勝した。吉田選手は、世界選手権で12回目、オリンピックと合わせて15大会連続の優勝、伊調馨選手も12回目の優勝だった。共に新クラスでの出場で、30歳を超えての快挙だった。オリンピック仁川アジア大会の金メダル成績は、28日現在、中国111、韓国45、日本34。3国でほぼ独占状態である。プロ野球セ・リーグでは巨人がV3を遂げた。大相撲では白鵬が千代の富士と並ぶ31回目の優勝に輝いた。13勝2敗で殊勲賞と敢闘賞をダブル受賞した新入幕の逸ノ城(モンゴル)が衆目を集めた。
- 「李香蘭」の山口淑子が94歳で他界した。歌手としては「支那の夜」「夜来香」「蘇州夜曲」「何日君再來」などの今に歌い継がれる曲がある。女優としても有名。敗戦後「売国奴」として中国の軍事裁判に掛けられたが、日本の戸籍謄本で危うく難を逃れた。参議院議員を3期務めた。社民党元党首・土井たか子氏が20日、肺炎のため兵庫県内の病院で死去した。85歳であった。衆議院議員を連続12期務めた。'05年落選により政界から引退。
('14/9/30)