五月の概要(2014)
- 5/29安倍首相は、北朝鮮が拉致の全面調査を約束したと発表した。全面調査の信頼性の担保が問題である。日本は独自制裁の一部を解除する。
- 訪欧中の安倍首相は5/6ブリュッセルのNATO本部で中国の軍拡を名指しで批判した。安倍首相の発言は、good timingであった。安倍首相はアメリカとのTPP交渉進展を背景に、EUとのEPAの'15年妥結を目指すと発表した。
- 5/7南シナ海でベトナムと中国の警備艇が衝突し、ベトナムは放水し突進する中国警備艇と損傷を受けたベトナム船のビデオを流した。中国が海底石油掘削を強行したのが直接の原因。その後も中国の実力行使は納まらず、ベトナム船に被害が続出している。ベトナムで反中のデモが過激化し、台湾、日本の企業まで火の粉を浴びた。存外進出企業すべてへの嫌悪感を、反中を機会に爆発させたのかも知れない。フィリッピンは中国漁船を拿捕。中国は直ちに警備艇を派遣。日本は中国を非難。尖閣諸島付近と同じく、南シナ海でも中国の一方的な領有権主張と実力行動で、周辺国との間に緊張と摩擦が高まっている。
- 習主席訪問中のウイグル自治区でウイグル民の自爆騒ぎがあった。政府側はテロと断定しているが、ウィグル民衆の移民漢族による抑圧への抵抗運動と捉える方が穏当なようだ。経済実権、地下資源利用、司法行政権などでウィグル族は排除されている。上海で「アジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)」(中国版大東亜共栄圏構想?の国際会議)の閉幕翌日に、ウルムチで爆弾事件が生じ、31名の死者を出した。イスラム系ウイグル族の漢族支配に対する反発の一環と捉えられている。
- 昨年のくれ、中国「百度」社製の日本語入力ソフトBaidu IMEが、入力の日本語を無断で「百度」のサーバーに送信していることが分かった(当Webサイト「十二月の大要」)。外務省、大学等の重要資料が筒抜けであった。5/4の読売によると、この百度が日本のソフト会社のサーバーのデータ抜き取りの大量アクセスを行った。元社員とのインタービューによる、盗用当たり前の「社風」が紹介されていた。中国人による、あるいは彼らが取り仕切る犯罪あるいは犯罪まがいの無法行為の報道は、増加する一方である。米国司法当局は中国軍人5名をサイバー窃盗で起訴した。当然かも知れぬが、インターネットで「技術盗用」を検索すると、中国関係が数多く出てくる。日本関係では新幹線技術の被害だ。次いで多いのが韓国への疑惑である。米国は韓国を、兵器技術盗用疑惑で、特別監視対象国にしている。
- インド総選挙(下院)で右派の最大野党インド人民党が与党・国民会議派に10年ぶりで勝った。過半を制する圧勝であった。首相就任予定のモディ氏は、親日派と伝えられた。
- エジプトの大統領選挙で、前国防相シシ氏の圧勝が伝えられた。
- タイ憲法裁判所は首相の高官人事干渉を不当とした。そのためタイ首相は失職したが、国の混迷が深まる一方にならないか危惧されている。反政府側、政府側のデモの衝突があった。5/20軍は戒厳令を発布した。集会までは規制していない。5/22タイ軍はクーデターを発表、全権を掌握した。
- 韓国ソウル地下鉄が追突し、240人の負傷者を出した。信号エラーが認識されていたのにもかかわらず、電車運行に反映させなかったのが原因という。先月のフェリー沈没(300人の犠牲)に引き続き大事故が韓国で続く。フェリーは驚くほどの過積載で、重心が上がったことが主因と考えられている。どちらの事故も人災であるらしい。船長の乗客放置のままの退船といい、書店に出回る「○韓論」の、朝鮮文化の本質に関する指摘は本当かも知れないと思わせる。
- ウクライナ東部地区で親露派により政府軍ヘリが撃墜された。地対空ミサイルによるとされている。これを民衆運動とするには強い違和感がある。はじめからロシアにより周到に用意された武装勢力という印象が強い。5/4の新聞は南部のオデッサで、親露派と暫定政府派が衝突し、死者を出し建物が炎上していると報じた。オデッサは、革命の嚆矢となった「戦艦ポチョムキン」がいた場所であり、ウクライナ海軍の基地である。親露派の伏兵攻撃でウクライナ兵7名死亡という報道があった。平定が進まないウクライナ軍の士気に疑問を感じさせる。
- 集団自衛権を巡る安倍内閣の姿勢がはっきりした。従来の政府の憲法解釈をより積極的方向に解釈し直すことで乗り切りたい意向である。尖閣諸島防衛は喫緊の課題であり、私は積極的平和主義に異議はないが、すでに確定していたかに見える憲法解釈を、ご都合により手直しするやり方には賛成できない。6月には国民投票法改正案が参院を通るとされている。なぜ国民の直接判断を敬遠するのか。アメリカの大統領選挙のような定期的直接政治参画の道が国民に開かれていると、国民の政治意識は高まり、民主主義がより強固に我が国に根付くと常々思う。その第1歩が集団自衛権にかかわる国民投票である。日本には憲法変更以外に直接国民が関与する政治問題はない。近年、国家と資本の解離、国境なき資本への国境のある国家の従属的立場が問題にされだしている(当Webサイト:「資本主義の終焉」('14))。その対策としても、この是正に対し早々に手を打つべきである。読売は解釈手直し論の社説や解説を何度も流した。毎日の論説は改憲必要論である。5/19の毎日の世論調査は憲法解釈変更反対が56%、自衛権行使反対が54%となっていた。行使反対とは如何なる意味か奇妙に思った。5/18の毎日は、創価学会が改憲必要論であると伝えた。
- 企業3月期決算が軒並みと云っていいほどに好転し、大手(自動車、商社、強電、弱電、造船重機、コンビニ・・・)の過去最高益達成の報が相次いでいる。上場1225社の税引き後利益の合計が19兆円を超えたが、これはリーマンショック('08年秋)前に迫る水準という。政府・自民党は法人税引き下げを熱心に検討しているが、その分を利益が上がっている今は、財政危機の回復に使うべきである。ただ国の'13年度経常収支は黒ながら8千億円弱と過去最少にまで下がった。2014年1-3月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、前期比年率換算で5.9%増となった。4月1日の消費税率引き上げを控えた駆け込み需要と設備投資の増加が理由として注目された。
- 厚労省の5/2の発表によると、有効求人倍率が、バブルがはじけて以来(0.42)の最高水準である1.07倍に達した。日銀は年2%のインフレ率達成に自信を示している。TPPの実質合意の内容が漏れ始めた。5/3の読売は豚肉関税50円/kg引き下げ(現行482円)、牛肉9%に引き下げ(現行38.5%)を一面トップで報じた。消費者にとっては朗報だ。同紙は政府の法人税「早期に20%台」への引き下げの方針も伝えた。消費税増額の経済への影響は限定的とする報道が多い。アメリカの金融緩和は絞られ始めた。アベノミクスは時期を間違えていないようだ。
- アベノミクス第3の矢にある労働規制の緩和に関する基礎データが、5/19の読売に出ていた。'70年代までは年間労働が2200時間を超えて、働きバチの非難を受けていたが、今は1765時間で、アメリカよりむしろ少なくなった。これは非正規社員効果で、正社員は2080時間と高い。独仏が1300時間台と低いのが目立つ。
- 日本維新の会(衆院53人、参院9人)の分党が決まった。野党再編優先の橋下氏と自主憲法制定優先の石原氏が、結いの党との合流で一致できなかったためという。
- 京大付属病院で夫婦間の生体肺移植が成功した。今回は右肺を左に移植した点で、世界初めての手術だった。
- 5/14の読売は、「日本の特許出願件数が漸減傾向にあり、'05年までは世界一であったが、今では中国、米国、日本の順となっている。中国は日本の2.5倍に急増している。米国は堅調に漸増しつつある。」と報じた。
- 熊本県で韓国からと思われる鳥インフルエンザが流行の兆しを見せたが、かっての宮崎県の教訓を生かした迅速初動により、押さえ込むことが出来た。
- 2040年には全国1800市区町村の半分で存続が難しくなるとの人口予測がでた。出産適齢の「20〜39歳」の女性の人口が、40年には全国約半分の市区町村で5割以上減る。こうした自治体は消滅のおそれがある。秋田県は25市町村のうち大潟村を除くすべての自治体が人口構成で見ると存続が難しくなる。大潟村が全国屈指の大農地域である点に注目したい。今までの小手先だけの、明らかに世界に対し競争力を失っている、中小農の保護維持政策が、消費者に負担を掛けるだけで、少しも日本の将来に貢献していないことが明らかになったとも云える。今までの政権は人口政策を「呪文」として唱えるだけで、実効のある方策は何ら実施しなかった。老大国視していたことのある英国ですら、合計特殊出生率('10年)は1.98という。日本は1.39だ。出産育児は生命の義務である。援助はせねばならないが、子ども回避の理由に生活子育て環境の不備を唱えることは、本末転倒の甘えた発想だ。
- 5/21大飯原発再稼働不許可の判決が福井地裁で出た。原発再稼働は高度に総合工学的問題であり、原子力規制委で検討中である。法律には専門家だが、工学についてはド素人の裁判官が判断すべき問題でない。近年このような思い上がった?判決をする例が増えた。特許審判のように特別の司法組織を各理系分野について設置するか、裁判員制度にして裁判員として専門知識豊かな人材を選ぶ方式にすべきだ。また同じ日に横浜地裁では、厚木空港の騒音問題に対し、自衛隊の活動を大幅に制限する判決を出した。国防よりも個人の騒音苦情を優先する判決には納得できない。国防がらみの専門裁判所も別途に設けた方がいい。東日本大震災での大川小学校生徒の大量死は痛ましい事件であった。先生方も大半(11人中10人)が亡くなられた。一部父兄がそれを公の判断ミスと考えて、国の賠償を請求した。(10人の)死者に鞭打つ類に思える。地裁の判断を注視したい。
- NHK SP「エネルギーの奔流」第1回、第2回を見た。'50年には世界のエネルギー消費量は倍増する。枯渇の危機、環境の危機を改めて総括した。ブラジル沖の大海底油田、途方もない大埋蔵量のアメリカ、カナダのオイルサンド法石油など明るい話題はある。モンゴルに露天掘りの大石炭鉱山があるなど知らなかった。しかし新興国の急成長を満たすエネルギー源は不足。インド12億人の劣悪な電力事情、安い石炭による発電で成長を測る中国、インドネシアの例が出た。世界の半分36億トンを消費する中国はスモッグ環境から逃れるために、消費制限で、全エネルギー量の65%に石炭を押さえようとしている。原子力は放射性廃棄物の行き先がない。脱原子力で再生可能エネルギー転換のドイツでは電力単価が隣国の倍になり、企業は石炭火力や原子力発電の国へ逃避するから、トータルとして何の解決にも繋がらない。単純な反原子力論者に十分吟味して欲しい内容であった。炭酸ガスで、平均気温が4−5℃(次世紀)も上昇してからでは遅い。
- NHK SP「東日本大震災防潮堤 400キロ〜命と暮らしを守れるか〜」を見た。国費1兆円を次の災害対策に東北沿岸に投入する。宮城県知事の何が何でも大防潮堤という思想には反感を覚えた。宮城県民の税だけで作るとすれば決してこんな馬鹿なやり方はしないだろう。私は次は東海地方に大災害が起こるのは確実だから、国の1兆円はその防備対策費とし、東北地方はゆっくり経済的な方式で作るべきだと思う。
- 日本相撲協会の前理事長を務めた元放駒親方が死去した。不祥事が続出し危機にあった相撲界の立て直しに貢献した。
('14/5/31)