オーシャンドリーム号
- 私は、内陸(京都)育ちのためばかりではないだろうが、幼い頃から軍艦や汽船に関心が強かった。最初に汽船に乗ったのが集団疎開の復路であった。集団疎開とは戦中に少年少女を爆撃による死傷から防ぐために、学校単位で田舎へ疎開させる国家プロジェクトである。往路は陸路だった。戦争が激しくなってからの疎開では、海路では船ごと全員?死亡という事件が本当にあったのだ。戦争に負けて親元に戻る復路では、海路を汽船で通れた。ところどころに爆撃で破壊され座礁した船が見られた。その次の乗船はたしか琵琶湖汽船だったと思う。いろんな汽船に乗りまた見学した。一番最近では横浜まで出掛けたダイヤモンド・プリンセス見学だ(本Webサイト「ダイヤモンド・プリンセス見学会」('13)に記載)。軍艦は「海フェスタよこはま」('08年、本Webサイトに同名の記事あり)での自衛艦々内見学会で見た。
- 引退で時間に余裕が出てから、クルーズ船の旅を愉しむようになった。最初のクルーズから数えてもう14年になる。ほとんどミドルクル−ズまでである。船会社の宣伝文句じゃないが、一生に一度は世界一周をやってみたいとは思う。世界一周を行う船の中にひときわ変わった船がある。ピースボートだ。本Webサイトに「ピースボート」('012)がある。実際にこの船で世界一周を経験した古市氏の著書の紹介と感想だ。現衆院議員・辻元清美氏が中心となって、アジア諸国と日本の交流の活性化を目的としたNGO「ピースボート」を設立した。そんな生い立ちから始まり、100日間ほどの船内共同生活を社会学的に解析した結果としての"「承認の共同体」幻想"についての物語で、本船見学後にもう一度そのWebサイトを眺めてみたが、著者はなかなかの洞察力をお持ちだと思った。今このNGOが運営する船がオーシャン・ドリーム号で、珍しくも千葉港に来て一般見学会をやるというので早速出掛けた。
- 千葉みなと駅からバスが出ていてポートタワーで一旦下車し、入船手続きの後、首に乗船許可票をぶら下げ、再びバスで港に出、繋船中の船に入る。ピースボートの強みなのだろう、ガイド役にたくさんのボランティアが当たっていた。一度は世界一周した経験がある人たちだろう。風の強い日で、外では帽子を押さえ押さえ歩いた。吹きっ曝しの11Fオーシャンビューエリアには上がらなかった。
- 古市氏は客層は2層に大別できると書いている。私は多分その普通に外国へ身体を運んで貰うために、「静かに」「宿泊ホテル的に」客船を利用する方になるだろう。高齢者が多く、上級船室を選ぶ。古市氏の云うもう1層は、学園祭的活用に期待を持つ人々である。未知の世界に新たなネットワークを構築し、その中の1つの核になってワイワイとやる。だいたいが青年で、安い船室を選ぶ。だからまずは最も関心のある10Fの船室を見学する。そこはペア(2人)バルコニーと云って、この船の最高ランクだ。来年3月出航予定の第83回クルーズでは390万円/人の値段が付いていた。早期割引で356万円になる。104日のクルーズである。世界一周では日付変更線を1度通過するから、地軸回転方向の航海では泊数としては102日になる。
- 早期割引料金のとき3.5万円/人/泊になる。日本最高のラグジュアリー船・飛鳥Uだと最低ランクのKステート船室で、世界一周の早期割引が4万円/人/泊である。部屋の広さはオーシャンドリーム号がベランダ込みで約26平方m(部屋だけなら22平方mぐらいか)、飛鳥Uはベランダ無しの18.6平方mである。広さからだけならオーシャンドリーム号の船室は、飛鳥U同等クラスの3/4ほどの値段である。調度品の品揃えはほぼ同じだ。オーシャンドリーム号の他の船室はシャワーだが、ここだけはバスタブになっている。便器は真っ新で良くは見なかったが、日本人の生活環境としては今や必須のウォッシュレットになっているように見えた。ここはキャビン・ステュワデス(ステュワード)が部屋の清掃とベッドメーキングはやってくれるそうだ。部屋そのものの品質、船全体の住環境などに相当する格差が、残りの1/4と云うことであろう。日本にはもう1船比較対象がある。ばしふっく・びいなすだ。'15年に何年ぶりかで世界一周をやる。バスタブのあるデラックスルーム(23.5平方m)が早期割引料金で5.05万円/人/泊で、飛鳥UKステートに面積換算すると、同じ4万円/人/泊である。
- レストラン、喫茶室、バー、エンターテインメント・ホール、スポーツ設備の空間、娯楽室、売店、図書室、会議などの多目的室などを見て回る。飛鳥Uに比べて、豪華さはないし、通路がせまくいっぱいに施設が占領しているから、ごちゃごちゃ感は否めないが、公共施設は全部揃っていると思った。天井が低くて、なにか圧迫感を伴う。なんだか安いマンションという印象だ。ショーや映画の鑑賞に影響しそうだ。子ども相手のコーナーがあってプールまで備えているのは感心だ。ラウンジがダンスフロアらしいが、えらく狭苦しい。船の第1印象はエントランス・ホールで決まるが、この船にはそれに相当する空間はないようだった。
- 日本人にとってお風呂は大切だ。大浴場での裸の付き合いは文化の1つである。外国船ではシャワーとプールとジャグジーである。パナマ船籍のこの船もご多分に漏れない。水浴び好きな国民が作ると、こんな構造になる。日本発着のクルーズ船になったダイヤモンド・プリンセスは大改造をして大浴場(有料! 2千円ぐらいだった)を作ったという。ただしプール等はそのままらしい。たくさんのお水をあっちへ運びこっちへ運び、その上部屋代はめっぽうに安い船になると云う。どうも外国船はよく分からん。
- クルーズ予約状況が出ていた。残り僅少のクラスが多かった。相談している人には老齢者が多かった。一番安い部屋はフレンドリー・パジェットという。窓無しで約12平方mの2段の4人部屋だ。129万円/人/泊。ピ−スボートには最安値が99万円という時代があったが、さすがにもうそんな値段は出していない。昔寝台列車をときおり使った。上段に床を取ったときは、特に下段の乗客に気を遣った。気の合う友人と旅行しても3−4日もすれば、相手が鼻持ちならぬ嫌みな人におぼえることがある。ましてや102日間も、プライバシー限定の共同生活ができるだろうかと思った。中間にカーテンを挟む2人部屋がある。昔の宿屋では襖1枚隔てて寝たのだから、これなら相手次第では我慢できるのではないか。
- 昨年のクルーズにたまたまピースボートによる世界一周クルーズ経験者が乗っていた(本Webサイト:「アジア・オータムクルーズU」('013))。ピースボート乗客の平均年齢はクルーズ船よりはずっと低いそうだ。私にはないが、若者相手の講座を主催できるほどに自信のある趣味を持っておれば、あるいはピースボートを老齢でも幅広く楽しめるのかも知れない。
- 1時間強の見学だった。この船の見学で、見たいカテゴリーの船はだいたい全部見終えた。次は造船だ。今「造船の技術」という本を読みかけている。
('13/11/20)