十月の大要
- 米国議会は、ねじれによる上院と下院の対立から、新会計年度の予算を成立させることが出来ず、職員80万人(全200万人)が一時帰休に入った。議会対応のため大統領はインドネシアにおけるTPP首脳会合の出席を取り止めた。その首脳会合では大筋合意が出来ず、年内妥結の確認に終わった。TPPに関しては、本Webサイトには「TPP賛成論」、「絶望の日本農業」、「TPP亡国論」、「水資源と水技術」、「TPP反対論」などがあるが、理想が高いだけ妥結は難しく、その内に空中分解になる、よくてあと1−2年は必要と云う感覚が出ている。10/9の読売は、米国と新興国の対立が深刻化している事情を解説した。米国債の債務不履行が近づき、国際金融不安が現実味を帯びてきた。アメリカの世界の機関車というプライドはどこへ行ったのか。米国民の矮小化を感じる。日本は米国債111兆円(全体の20%)を保有している。16日債務不履行回避の法案が通ったが、共和党は賛成87票、反対144票と分裂状態になった。法案は暫定で年明けに危機が再燃するであろう。
- 日米両政府は3日、外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を東京都内で開き、日米防衛協力の指針(ガイドライン)を'14年末までに改定することで合意した。中国の領土野心(尖閣諸島)やサイバー攻撃への対処、沖縄県の負担軽減を前進させる。
- インドの大型サイクロンが被害をもたらした。以前の経験により政府は90万人を予め避難させたおかげで、前回1万に近かった死者が21名に納まった。16日に関東を台風26号が襲った。10年に1度という955hPaの大型だったが、千葉沖通過だったので、関東は大被害にはいたらなかった。ただし伊豆大島では土砂崩れが町を襲い、10/17現在22名が死亡、27名が行方不明である。
- OECDの国際成人力調査で日本は「読解力」「数的思考力」の平均得点がトップだった。ただ最上位層の成績は芳しくなかった。昔の日本軍は、兵卒から尉官までは優秀だが、佐官から将官へと上に行くに従い米軍に劣ると云われたが、現在も同じことが云えるらしい。10/16の読売に「町のおばちゃんの民度の高さに感心するが、企業トップの水準は?だ」と言う外国人学生の感想が載っていた。
- ITS(高度道路交通システム)世界会議で自動車の自動運転技術が公開された。工学的にはほとんど完成に近いと思われる発表もあり、インフラ整備次第ではロボット自動車システムの実現が近いと思わせた。
- 2日3日、中国の習近平国家主席とインドネシアのユドヨノ大統領はジャカルタで会談し、150億ドル(日本とはすでに120億ドルの協定がある。)の通貨スワップ再開(停止中だった)協定、両国企業が総額300億ドル規模の経済協力の文書に調印。東南アジア最大市場のインドネシアと中国の接近が鮮明になっている。他方、領海問題のあるフィリッピンとの首脳会議には、日本に対する態度同様に、中国は冷淡である。
- 中国北京天安門前でウィグル族による自爆テロが発生した。
- 10/6のNHK SP「中国激動 空前の農民大移住」は、都市民と農民の間に広がる格差を是正するために、中国政権が実行しつつある壮大な実験を紹介した。実験地区の重慶は北海道ほどの広さがあり、農民2千万、都市民1千万だが、その比率を逆転しようというものだ。農民には耕作権があるが、都市民のような福祉:年金(老夫妻で1.6万円と紹介された。)と医療保険を受けられない。共産党は耕作権を放棄させて都市民に組み入れようとする。そのために壮大な高層マンションを建設し無償で入居させ、農地には工業団地を造成し工場誘致をする。現実には成長率鈍化の影響が新規立地には強く影響して、新都市民の雇用口を作れない、ことに中高年は、働き口を求めて、沿海地方へ昔のように出稼ぎに行かざるを得ない。すでに地下銀行問題で紹介されたことがある中国地方政府の金詰まりが、行方に暗雲を呼び込んでいる。人工の計画経済政策の行方に、世界の目が注がれている。
- 「水銀に関する水俣条約」が10/9−11に熊本県で開かれた国連会議で採択された。最大排出国・中国や従来消極姿勢であった米国が賛成し、両国が批准すれば規制の効果が飛躍的に高まる。中国より飛来の水銀が富士山頂で観測されるようになった。北京のスモッグ映像が頻繁に紹介される。9/29の北京のPM2.5濃度は、6段階の汚染指数で最悪レベルの「深刻な汚染」だと発表された。その微粒子が3日には日本に到達している。10/21には旧満州都会のスモッグが伝えられた。
- 10/1の毎日は、高速道路を跨ぐ架道橋の1/4に当たる1183本が点検不備で、安全が確保されていないと報じた。所轄自治体の技術員と予算の不足による。公共事業について回る問題だ。地方を旅すると、車の少ない高速道路、人影のない一般高級道路などざらにお目に掛かれる。「九月の大要」で触れた瀬戸内海3大橋もその中にあるが、バラマキによる箱物ほどメンテに回ってくるお金も人もないと言えるのではないか。
- 10/1政府は来年4月の消費増税(5%→8%)を決めた。毎日は、年収500万円片働き4人家族で年67千円の負担と報じた。計画の2年後10%では実質可処分所得が403万円となると云う。10/5のNHK SP「ドキュメント消費増税 安倍政権 2か月の攻防」は増税による景気の腰折れ対策、5兆円投資と復興特別法人税10%の1年前倒し廃止を方針化するまでの事情を特集した。
- みずほ銀行が系列会社を通じて暴力団に融資をしていた問題で揺れている。元頭取、現会長、頭取も問題を把握していた。サラリーマン重役の事なかれ主義が、事態を継続させたと考えられる。会長辞任。阪急阪神ホテルズがレストランメニューの偽装事件を起こし、社長が引責辞任した。
- 福岡の整形外科医院が火災を起こし、入院患者7人を含む9人が死んだ。防火扉が作動しなかった。30年間放置状態であった。防火扉は建築規準法準拠で自治体の管掌であり、消防署点検項目ではなかったと云うが、動けぬ入院患者を抱える病院の責任者が防火に関しては全く無知であった。出火の原因がショートというのもお粗末きわまる。防火扉は旧型で、増床時の義務である新型への取り替えも行わず、違法状態のままであった。
- ヒッグス粒子予言の英、ベルギーの学者2人にノーベル物理学賞が決まった。医学生理学賞は「細胞内で物質の輸送や貯蔵を担う「小胞」の働きの研究」に、化学賞は「複雑な化学反応のコンピューターモデルの開発」に、いずれも米国大学教授3名ずつに受賞が決まった。化学賞テーマの発展に重要な貢献をした7名の中に、京大・諸熊博士の名が上がっていると10/10の読売が載せた。文学賞はカナダの小説家、平和賞は化学兵器禁止機関(OPCW、本部オランダ・ハーグ)に授与される。OPCWはシリア内戦下での廃棄処分に活躍中で、日本政府は予算の1割を供与し、5名を派遣している。経済学賞は米国大学の3教授に贈られた。日本から経済学賞だけが出ない理由について、10/22の読売に、マルクス経済学偏重であった歴史的ハンディ、世界経済学界とのネットワーク不足などを上げた記事が出ていた。私は「民主党政権失敗の検証」の中に、文系優遇社会への安住が遠因と書いた。5人に文化勲章が授与される。文化功労者に15人が選ばれた。私の存じ上げの人としては、文化勲章の男優・高倉健氏と電子工学の岩崎俊一氏、文化功労者の上村淳之・日本画伯と天才チンパンジー・アイを育てた松沢哲郎氏および医化学・分子免疫学の本庶佑氏で、このWebサイトを検索すると出てくる。
- NHK SP「病の起源 第3集 うつ病 〜防衛本能がもたらす宿命〜」は鬱を進化史から説明した。脳生理学的には扁桃体の興奮の持続と暴走に関連が深い。肉食魚と同一水槽に飼われた小魚の鬱状態は根深い本能であることを示し、はぐれチンパンジーの鬱状態は社会生活がもたらす安心を意味する。狩猟民族の無鬱状態は、平等不平等が鬱に強い影響力を持つ証拠である。彼らは獲物を平等に分配する。文明社会でのきつい所得格差と対照的だ。
- 次のNHK SP「病の起源 第4集 心臓病 〜高性能ポンプの落とし穴〜」は、爬虫類の心臓と哺乳類のそれとの比較から、後者が心臓の筋肉を強力にし、その筋肉に血管を張り巡らせたことで、高い運動能力を手に入れ、繁栄を勝ち取ったところから話が始まる。人類は、直立歩行による心臓負担の増大、一方では脳の巨大化をもたらした、細胞からのN-グリコリルノイラミン酸(Gc)の喪失と、原始の時代にはなかったほどの大量の肉食を原因とする、コレステロールの心臓血管への沈着(Gcを隔離するため)というハンディを背負ってしまったと解説した。
- NHKオンデマンド:「体感!グレートネイチャー 巨人伝説の謎を追え〜イギリス・ブリテン諸島〜」は、およそ6500万年前、超大陸分裂によりユーラシア大陸の最前線となったイギリス北部のスコットランドとその沿岸に並ぶ諸島の、断崖絶壁(柱状節理)や奇岩(ローソク石になった砂岩積層)を見せた。前者は空気冷却の速度に数10年掛かってその姿になった。もう少し冷却の早い上層部には無定形に固まった部分がある。自然では固まると体積縮小を起こす物質は三方亀裂が起こり六角になる傾向がある。砂岩層は超大陸時代に大きな河が、水流の速さを変えながら砂を堆積していったことを示す。イギリス南部西岸の、4億年昔からほぼ今と同じ平野を流れるイギリス最長の河・セバーン川では、満月の日に川の水が60kmも逆流する海嘯(かいしょう)現象(アマゾン河ではポロロッカ)が起きる。河口のブリストル湾がラッパ型であるため、湾内でも干満の差が大きな場所では16mにもなる。日本最大の有明海が6mだからその大きさが解る。干満の差が河をさかのぼり幅が狭まると大きな海嘯になる。イギリスのサーフィン地帯という。
- 伊勢神宮20年1度の式年遷宮のクライマックス「遷御」の儀が行われた。内宮は2日、外宮は5日。総費用は550億円以上。今年5月に執り行われた出雲大社60年目の遷宮は80億円だったという。臨時祭主、大宮司は旧皇族、元摂関家から選ばれ、天皇代理の出席があった。皇室の儀式である。10/2のNHK新日本風土記「伊勢」(再放送)は、幅広く伊勢神宮とその周辺環境風土を紹介した。
- 楽天・田中投手が10/1に23連勝を飾った。10/8にも勝ち、24連勝無敗1セーブの輝かしい記録を作った。ヤクルトのバレンタインが60号本塁打を打ち、記録を更新した。楽天はリーグに優勝し、CSでも勝って日本シリーズに進んだ。セ・リーグは巨人。アントワープにおける体操W杯で内村航平選手が男子個人総合史上初の4連覇を遂げた。初出場の加藤凌平選手も2位に入った。白井健三選手は男子床運動で金メダルを得た。新技の「後方伸身宙返り4回ひねり」に成功し、「シライ」と命名された。ほかにも2技にシライの名が贈られた。男子あん馬では亀山耕平選手が金を得た。平行棒は内村選手が金。フィギュアスケートGP第1戦のアメリカ大会で、シングル男子は町田樹選手、女子は浅田真央選手が優勝した。共にショートプログラムは良かったが、フリーには失敗が出た。ソチ五輪優勝にはあと10−20点加算の必要がある。
- '64東京五輪のバレーボール「東洋の魔女」主将、中村(旧姓河西)昌枝さんが死去した。漫画「アンパンマン」のやなせたかし氏が逝った。野球の神様・川上哲治氏が93歳で死んだ。
('13/10/31)