六月の大要
- トルコ主要都市部における反政府反イスラム主義世俗主義復帰へのデモが収まらない。政府が警官隊による集会強制排除に乗り出してから、対立が戦闘的になってきた。中東圏安定勢力の第2のエジプト化を恐れる。6/30の新聞はエジプト暴動の拡大を伝えた。同日の読売の解説記事:「エジプト凋落の1年」という題で、ムスリム同胞団基盤の現政権の素人ぶりが混乱を招いているとした。
- イラン大統領に保守穏健派のロハニ師が1回で過半数を取り当選した。資格検査で改革派全員が立候補を取り消された中での当選であった。現政権の強硬路線が外国からの締め付けを受けて経済的に破綻に近い姿となったことへの民衆の反発である。だがイランの政治体制は宗教指導者ハメネイ師に最終決定権限を与えている。議会も強硬路線派で占めている。周辺との協調路線に転換できるかどうか、疑問視する解説が多い。
- 横浜で開かれた第5回アフリカ開発会議で、安倍首相は5ヶ年官民総計3.2兆円(内ODAは1.4兆円)の支援を発表した。中国のアフリカへの投資が悪評紛々(現地人を雇用しない、労働者を連れてくる、資源を輸出させ、加工品を買わせるだけ、欧米人よりあくどいなど)なのに対応して、量よりも質というアフリカ「コ・マネージャー」論を唱え、将来人材育成に「安倍イニシアティブ」を打ち出した。次いで治安対策に5ヶ年1000億円を援助すると発表した。アルジェの日揮社員襲撃事件を踏まえて、民の援助進出にたいし安全が条件であることを示したものだ。晩餐会には京都の料亭から庖丁人を呼んで、和風料理を宣伝した。アフリカからは精神論と支援の具体性を歓迎されよう、しかしこの膨大な援助の財源をどこから捻出するのか。国家財政健全化に水を差す、身の程をわきまえぬ外交姿勢ではないか。
- 6/5アベノミクス第3の矢の成長戦略が打ち出された。しかし6/13には日経平均株価は13000円を割った。同日の為替相場はじりじり上がって、ドル95円を切りそうである。政府からは経済目標数字はいろいろ出たが、対応政策に具体性が乏しかった。それを見越して、投機マネーははじめから売り抜けるつもりであったのかも知れない。第3の矢の中で教育制度改革と称して大学1次試験の改革を持ち出した。複数回数受験可能にすると云う。手を付けやすいものだから、内閣は交替するたびに教育制度変革を取り上げる。変革の度にようやく根付こうとしている学校文化とか伝統が、それで毀されて伝わらなくなるマイナスを考えるべきだ。私は敗戦で旧制と新制をやったから、その負の意味がよく分かる。教育については誰でも一家言あって、大改革できるように思うものだ。国家の将来にかかわることだ。憲法改正と同じくらいの慎重さを教育改革には持たねばならない。
- 北アイルランドにおけるG8で各国首脳はアベノミクスを歓迎した。危険な賭を進んでやってくれる国があったら誰でも歓迎するだろう。彼らは財政健全化の注文も忘れなかった。
- 読売新聞の解説記事「視点・選挙制度2」は人口比例を取り上げた。司法の違憲判断に対する物言いである。人口比例を厳密にやれば、都会票の比重が大きくなって、地方の意見が軽くなるなどと云う議論を引用している。奇妙な論理だ。人口比例から外れた選挙制度の民主主義国は存在する。だが彼らは長い民主主義の歴史からそれでやってゆく方法を自ら編み出した。我らのような敗戦で押しつけられた受け身の民主主義ではないのだ。基本の基本を100年は守ろう。
- 「視点・選挙制度3」は完全比例のデメリットを突いた。全国1区などとしたら、群小政党乱立で、決められない政治になる。それなら票の格差を完全に排除したのち、第1党にボーナス議席を与えるとか、選挙結果が分散したらある割合以上の候補者による決選投票にするとか、方法は幾つもあり、他国で実施されている例がある。読売は現行法に執心のようだが、五月の大要で述べた毎日の指摘、民主党の方が総獲得投票数が多かったのに、議席数では自民と大差がついて敗れた事実は、どう説明するのか。
- 「視点・選挙制度4」は二院制改善を話題にした。ねじれ国会で決定できない政治の元凶は参議院が強すぎる点である。参院元来のあるべき姿、長期的視野に立つ高い見識を求めるには、衆院と同じような議員選別法ではダメだ。1票格差が衆院よりもなお悪い現状(5.0)はもっとも憂慮すべき問題だ。「視点・選挙制度5(最終)」は、議員に選挙制度改革を望むのは野暮だと断定した。自分の利害損得に拘って国家の将来など眼中にない。関連記事に議員の経費比較が出た。日本はダントツに1人あたりの経費が高い。アメリカの上院は米国および世界を牽引する存在だが、その議員経費はゼロである。名誉職に徹して始めて国家を論じられるのかもし得ない。
- 参院選の前哨戦を意味する23日の都議選で、自民が圧勝し、第2党となった公明と合わせ過半数を超した。選挙前の第1党であった民主は第4党に転落、共産が倍増して第3党になった。参院は首相問責を可決し、4重要法案は廃案で国会閉会になり、7月の参院選挙に突入した。
- NHK SP「密着 エネルギー争奪戦」は原発停止によるLNG輸入急増で、年間8兆円の貿易赤字を出す要因になったエネルギー将来問題を総括した。100万Btuあたり$16の輸入単価は$10〜12に下がる可能性が出ている。アメリカのLNGは原価が$4という。アメリカのシェール革命でだぶつくLNGが、アメリカ→中東→ヨーロッパ→ロシアの経路で玉突き的にロシアを苦境に立たせた。ロシアは国家予算の1/2をLNG輸出に頼っている。オーストラリア、アフリカでもLNG開発が始まり、最速では'16年にオートラリアの輸出が始まる。日本、インド、韓国らの輸入国との駆け引き続く。
- 世界文化遺産「富士山−信仰の対象と芸術の源泉」(三保松原含み)の登録が26日に行われた。
- NHKクローズアップ現代が「国家の“サイバー戦争”〜情報流出の真相〜」を取り上げた。最近、我が国の重要機関からサイバー攻撃による情報流出が相次いでいる。ウィルスの60%に中国語(解析結果にChinese,simplified=簡体字と打ち出されていた。簡体字は中国本土、シンガポールで使用)の痕跡が見つかった。一方、アメリカでは先月、国防総省の年次報告書の中で中国軍がサイバー攻撃に関与していると指摘。中国政府が強く反発し、対立が激しくなっている。中国国内のハッカー・グループへのインタビューが新鮮だった。注文に応じてどこのデータにでも侵入してみせると云った。6/7の米中首脳会議でオバマ大統領は習主席に対策を要求した。元CIA職員がアメリカ側のサイバー攻撃の実態を暴露し、それを材料に中国は反撃に転じた。
- 厚労省は「子宮頸がんワクチン」の接種を副作用検証不足を理由に薦めないことになった。日本脳炎に次いで2例目という。年間2700人の死亡の大半が助かるのに、痛みの副作用を恐れての結果だ。原子力規制についても云えることだが、多大のメリットがあるのにもかかわらず、危険の微少の確率を理由にノーを唱える。科学技術政策全てにこんなオドオドした傾向が出ている。せめてネガティブ面への対策の重要性を訴えながらも、推進する姿勢を持って欲しい。
- 米最高裁は乳がんや卵巣がんの自然DNAに対する特許を認めない判決を下した。ただ改変DNAの特許は認めている。DNAを「いじくって」取った特許がヒトの生命活動に影響を及ぼし始めている。米最高裁の判断は、資本が生命を支配する方向に対する歯止めの一つとして歓迎していい。
- 6/17のNHKクローズアップ現代は「二酸化炭素が資源に! 夢の人工光合成」という題であった。水を水素と酸素に接触分解し、水素と炭酸ガスからメタンや軽分子量のアルコールや酸を生み出す。有機金属酵素触媒による人工光合成である。日本は世界をリードし、多くの研究成果を出してきた。一方、世界各国も人工光合成の研究に力を入れ始め、追い上げが急だ。中でもアメリカは、オバマ大統領の演説で明らかになったように、クリーンエネルギー政策の柱として巨額を投じて研究所を作り、第一線の研究者を集めて、人工光合成の研究に本腰を入れている。
- 読売6/23の「地球を読む」に野依先生が国立大学を論じていた。10年間で研究開発費は1.05倍しか伸びず、米独英の1.4−1.6倍、韓国の2.34倍、中国の4.35倍とは比較にならぬ低さである。科学論文数が2位から5位に下がり、論文被引用数も4位から7位に下がった。世界の大学100傑に入るのは僅かに東大(27位)と京大(54位)の2校だけという。後継者すら育たぬ農業にあれほどのバラマキをやり、高い関税障壁を守る政府が、なぜ将来必ずリターンのある研究への投資を渋るのか。自民党は口を開けば教育改革を唱え組織いじりを云うのにと思う。
- 理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の高橋政代プロジェクトリーダーらの加齢黄斑変性という目の病気のiPS技術による移植治療にたいし、厚労省の審査委から臨床試験の許可が出た。山中教授発表後6年目であった。ガン化遺伝子の移植前不活性化が問題になった。政府は今後10年間に再生医療技術開発に1100億円を投じると云っている。
- 日本ハムの新人・大谷翔平選手の2刀流が注目されている。6/2の時点で、打者として打率0.348、投手として2戦1勝、負けなしである。6/13ソフトバンクが交流戦に優勝した。'05年から始まった交流戦の優勝チームは昨年を除き全てパ・リーグのチームである。18日に終了した交流戦は60:40でパ・リーグ側の圧勝だった。毎年パ・リーグ圧勝だからセ・リーグはマイナーリーグだと格付けを落とさねばならぬ。埼玉スタジアムでの「日−豪」戦を引き分け、日本は来年のW杯サッカー・ブラジル大会出場権を得た。イランが敗れたのでB1組1位での出場になる。豪チームの紳士的な対戦態度は、汚い国際試合を特にアジア地区でよく見かけるので、すがすがしかった。ブラジルにおけるフェデレーション・カップ第1戦ではブラジルに3:0で敗れた。大人と子供の試合と酷評された。あと対イタリア、対メキシコ戦にも敗れ全敗で予選を終わった。
- 長門勇が死去した。読売の編集手帳に昨年来の訃報として左右田一平、遠藤太津朗も上がっていた。各氏ともことに時代劇ではお馴染みで、出演しているとなんだか劇の筋が判ると云うほどの名脇役であった。
('13/06/30)