八月の梗概

シリア首相がアサド政権を離脱しヨルダンに亡命した。国連総会は、拘束力はないが、市民攻撃に対するシリア政府非難決議を行い、中ロの拒否権発動で実効の挙がらない安保理をも俎上に載せた。8/21日本人女性ジャーナリストが政権側の狙撃により死亡。残された映像と録音には、武装集団の先行者が「日本人」と指し示す場面が出た。
韓国大統領が竹島に上陸した。内政が行き詰まると、歴史を取り出して日本に牙をむくのが、韓国政界の常套手段になっている。北の瀬戸際外交と奧では通じるものがある。日本は国連への提訴を提案、韓国は拒否、単独提案を検討中。領有の公的記録が日本にある。韓国にはそれがないから応じないのだろうが、国際的アピールはいいことだ。首相は大統領に国連提訴を内容とする親書を出した。「堂々と受けてほしい」とコメントした。韓国は親書を送り返してきた。開戦直前でもやらない非礼で、世界史始まって以来の出来事ではないか。首相は「不法占拠」と明言した。自民党政権下では一度も強い態度に出たことが無く、先送りを続けてきた。野田首相の一歩前進の姿勢を歓迎する。
8/15この大統領は天皇訪韓には謝罪を条件とすると発言したと報じられた。今までは韓国側が無条件で友好促進のための招待を優先していた案件だ。すでに昭和天皇は崩御され、敗戦後67年を経過している。いい加減に手段としての怨念から離脱してもらいたい。経済援助、技術援助などでの過去何年もの間の過多な贈り物が仇になったというような印象を、日本国民に与えてはならぬ。大統領改選はあと半年だから、当面は韓国とは損をしない程度の上辺だけの付き合いでいい。一方北朝鮮との会談再開が決まった。拉致遺骨送還などがさしあたりの話題だ。
尖閣列島に中国旗、台湾旗を掲げた香港の反日団体が上陸し逮捕された。中国政府は日本政府が警告しているのだから阻止できたはずである。日本の武力不行使を見越して、再々事を起こす態度にはいらだちと反中国感情を覚える。14名は強制送還された。沖縄県民は弱腰を非難するが、基地軍備増強反対とは整合性のない身勝手と映る。これを契機にいつものように中国国内諸都市では反日デモが続く。プラカードには、近隣国に対する言葉とは思えぬ罵倒的侮辱的尊大言語が並ぶ。今日の中国の発展に果たした日本の貢献を思って見よと云いたい。都知事が尖閣諸島に関して国や沖縄県を飛び越した発言と行動を繰り返す。(都民も含めて?)国民は東京都知事に領土問題を預けた覚えは全くない。迷惑至極である。ぶれない野田首相に任せるべきだ。8/28の新聞に北京で駐中国大使の車が襲われ、車の国旗が奪われたと出た。インターネットには英雄的行為と賞賛しきりという。彼らは世界から「中」国と見られたい誇り高い国民だろうが、とてもじゃない鼻つまみの国際感覚である。
ユーロ圏全体の4−6月期GDPがマイナス成長を見せた。我が国はプラスである。8/15の毎日に欧州危機の解説が始まった。今回はスペイン経済だ。無駄な公共投資、多すぎる公務員と強い労働組合などギリシャ病がここにも蔓延している。8/28の読売に立ち直ったラトビアを報道していた。公務員を削減し、給与を引き下げ、付加価値税を増額していた。
8/31の読売は、16ヶ国の包括的経済機構(RCEP)の11月交渉入りを伝えた。ACEAN、日中韓、豪州、ニュージランド、インドの16ヶ国、34億人、20兆ドルの巨大貿易経済圏となるはず。TPPの進捗が思うに任せぬ状態の中で、緩い規範であるはずのRCEPが先行する可能性すら感じられる。依然反TPPが多い日本で、RCEPはいかに受け止められるか、大型経済圏に入らずに貿易立国などあり得ない。
8/28の新聞は大学新卒の23%に安定職がないと報じた。ただでさえ世界は不況なのに、「脱原発」とか「環境の理想化」を唱えて、産業の海外流出を加速する。それが若者の正規雇用を奪っていることに気がつかねばならぬ。「脱」も「環境」も理想としてはいいが、世界から突出すると有害なのだ。
8/10消費増税を柱とする一体改革法が成立した。民自公3党協調によりようやく政治が動いた。判りきった方向なのに、国会議員が認識するまでずいぶんと時間がかかった。まだ参議院には2割の反対投票があった。読売は社説に「財政健全化への歴史的な第一歩だ、首相の「国益優先」を支持する」と題した社説を掲げた。私も同感である。だが8/29参院で首相問責案可決、会期を残して法案山積のまま休会状態に突入した。何のために国会があるのか、これが良識の府と聞いて呆れる。ことに自民党は賛成したはずの消費税増税を問責の理由とする7会派案に賛成したのだから、もう正気の沙汰と思えない。公明党は欠席。秋衆院総選挙の線が強くなった。おそらく絶対多数のない小党分立の結果に終わるだろう。政治は何も決められぬ不安定状態になる。すべて1党圧勝を嫌いねじれ国会を選択した国民の責任である。だがそれでもやれたはずなのに、折角の決める政治のムードを自民が毀してしまった。
財務省は地方公務員給与の減俸を要請した。東北大震災後の国家公務員減俸で地方が高止まりしている。地方交付税の大きさからいっても当然である。スペイン、ギリシャのように最優良雇用先が公務員であってはならない。
8/9の読売に脱原発運動に関し「レッテル貼りの危うさ」を説いた記事があった。私の世代は「非国民」「赤」呼ばわりの苦い経験がある。公開討論会での事業側の発言の締め出し、政府委員会人事への「原子力ムラ住民」「御用学者」の排除要求など、「脱」でなければ全て「悪」とでも言いたげな風潮は、高学歴社会と思えぬ極端さだ。マスコミにポピュリズム的同調の兆しが濃いのも苦々しい。せめて韓国並み(35%)の原発割合を保ちたい。次期米大統領選挙共和党候補ロムニー氏は、日本の将来性を低く評価しているという記事が読売に出た。
8/12の読売は、経団連の調査として、脱原発は日本の雇用縮小をもたらすと答えた経営者が96%に及ぶと報道した。我が国産業の衰退は特に若者の就職先を縮小して行く。失業社会の危険性は真っ先に犯罪件数に出てくる。泥棒強盗などニュースにもならない社会が望みか。8/9の読売に「脱」の大物として紹介された音楽家・坂本龍一氏は国が衰退しても海外で食えるだろう。他の自由人もそうだ。でも日本人で海外でも食えるのは一握りである。事故と犠牲を乗り越えて我々は今日の繁栄を獲得した。福島の経験を今後の宝にしようという発想が、「脱」派にはなぜ生まれないのか。多元的判断で「脱」を冷静に監視しよう。脱ポピュリズムが国家100年の計の基本である。
8/27の毎日1面トップにメガソーラー計画が出ていた。塩漬け工業団地などを活用して太陽発電を行う。だが合計発電能力はわずか17万kwあまりだ。書いてはないがこれは最大で、夜間とか曇り雨の日にはゼロに近いはずだ。冬もたいして発電できない。原発は1基が100万kwほど。団地造成失敗で負担の大きい地方には朗報だが、そのツケを電力消費者に負わせる。何しろ原発の4倍もコストがかかるのだから。やはり原発維持増強が基本政策でなければならぬ。
8/29国の有識者会議が将来あり得べき南海トラフ巨大地震(M=9.0仮定)の被害想定を発表した。最大被害は冬の深夜に起こった場合で、32万人の死者を想定している。多くの犠牲を伴った経験と科学の進歩でここまで定量化できるようになった。原発事故についてもプラス思考を続けねば嘘だ。
8/2の新聞はiPS技術により難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療の道筋が見えてきたと報じた。本HPに最近「重力とは何か」を上梓した。その中のホーキング放射はホーキング博士の画期的研究成果だが、彼はALS患者であることも有名で、この難病を人々に記憶させる切欠になっている。
イギリス・ファンブロー空港で国際航空ショー2012が開かれた。三菱航空機開発中の中型旅客ジェット機MRJ('13試験飛行、'15運用開始予定)は、トータル230機の発注を受け採算ラインの350−400機に近づいた。YS-11以来の国産旅客機で、1機34億円、ハブ空港と地方空港を結ぶregional jetとして最適。この機種にはアメリカとブラジルに大型会社があるが、彼らと比較してMRJは燃費など抜群にいいという。工場所在地・名古屋の周辺はトヨタの城下町であり、他重工各社の工場もある。精密機械の航空機産業の立地として最適だ。テレビ東京の「日経スペシャル 未来世紀ジパング ?沸騰現場の経済学?」の報告。
昨年11月打ち上げのアメリカ火星探索機キュリオシティが8/6着地に成功した。最後は母船から空中でワイヤーに吊して地上へ降ろすやり方で、ぶっつけ本番であったという。900kgの6輪車で原子力電池により今後2年間は活動を続ける。次々にデータを送信している。生命探索も目的に入っている。高い技術力に世界が驚いた。
8/26読売の「地球を読む」は野依良治氏の「科学技術革新 国益導く研究 総力戦で」という題の主張であった。氏は、何人もの我が国ノーベル賞学者の中で、きわだって政治的視線の高い人である。我が国の科学論文の被引用数トップ10%のシェアが近年低落(7位)しているという指摘と、代わって中国が4位に躍進したとあった。論文数を別途調べると、'08年で日本は5位、中国が2位だ。まずは質、次いで量も競争から落ちだしている。中国科学院・工程院院士大会には国家主席や首相が出席し、国家の意思としての科学技術振興を鼓舞する。スローガンだけではなく、投資は年22%、研究員数は12%伸びた。毎年の米国での博士号取得者数は4000名以上になる。年々留学生減少が報じられる日本と対照的に、中韓両国からの増加が目覚ましいことは、すでにしばしば報じられているとおりだ。欧米学生の勉強はすごい。法科でも学生の2/3は卒業が危ないという話を聞いたばかりだ。ことに大学院では、「研究奴隷」的境遇を覚悟せねばならぬ。今の日本の若者はそれに戦々恐々なのだろうか。世界の経済成長の50−70%がイノベーションによっているという。イノベーションに賭ける姿勢が無くなったとき、それは2流国、3流国指向になったことを示す。日本はもうそれに近くなっている。
ロンドン五輪の体操男子個人総合で内村が金を得た。個人床は銀であった。男子柔道は金無しで終わった。東京五輪で競技種目となって以来の出来事であった。8/4の新聞は凋落の原因を問うた。私には相撲同様競技人口激減に尽きると思われる。バドミントン女子ダブルス決勝を見た。リードされるとタイミングずらしに時間を取る相手中国ペアに対し、始終にこやかで攻撃的な藤井・岩垣ペアはすがすがしい戦いぶりであった。結果は銀。対ドイツ準決勝フェンシング男子フルーレ団体はきわどい勝負だった。あまりにも早くてTV観戦には向かない競技である。決勝でイタリアに敗れ銀。ボクシング男子ミドル級で村田が金を取った。陸上競走種目は短距離から遠距離まで今や完全にアフリカ出身者優位の世界になった。その中で男子マラソン6位となった中本の粘りは立派であった。コースの日の丸が地元のユニオンジャックに次いで多かった。
水泳400mメドレーは男子が銀、女子が銅であった。「北島を手ぶらでは帰せない」というチームメンバーのインタビューでの発言が新聞にも載った。卓球女子準決勝対シンガポール(世界ランク第3位)戦は快勝であった。福原、石川、平野の3選手は表情豊かに団結力を示した。福原が今までほとんど勝てなかった相手を緒戦で倒したのが大きかった。決勝を中国と戦い破れて銀。卓球における中国出身者の世界進出は目覚ましかった。アジアはもとより欧米選手にも中国名がづらりと並んだ。女子サッカー準決勝の対フランス戦(2:1で勝利)を見た。その前の準々決勝の対ブラジル戦でも感じたが、なでしこチームはフェアプレイに徹した戦いぶりで、対戦相手の半分ないし1/3ほどの反則しか取られていない。決勝の対米戦は惜しかった。男子サッカー準々決勝対エジプト戦は勝った。荒っぽい反則の多い相手で、永井が得点シュートしたあと後方よりぶつかって怪我させたのがいた。準決勝、対韓の3位決定戦とも敗れメダルに届かなかった。レスリング女子フリースタイル48kg級で小原、63kg級で伊調、55kg級で吉田が金を取った。小原は最初で最後の出場という。今までは今回引退の伊調(姉)に隠れて出場できなかった。伊調(妹)、吉田は五輪3連覇。男子66kg級では米満が金。バレーボール女子が対韓戦に勝って銅を得た。
最終時点で、メダル獲得総数は38となり、歴代最多の成績になった。ただし金は7と北京より少なかった。同様の金銀銅のアンバランスは、他ではオーストラリアぐらいで、上位国はほとんどが金の数の方が銀や銅よりも多い。かっては我が国もそうだった。もう言わなくなったが、根性の問題ではないのか。メダル数/選手団員数比もきわめて悪い。中国やロシアの1/3から半分ぐらいだったろう。経済大国の幻想は過ぎた。参加に意義があるなどと云っていた時代は終わった。スポーツにも厳しい目が必要だ。メダリスト71人の銀座パレードでは50万人が出迎えた。
女子ゴルフ米プロツアーで宮里美香が初めて勝った。W杯女子野球で日本が優勝した。
女優・津島恵子が86歳、胃がんで死去した。「七人の侍」の村娘・志乃役を覚えている。「男はつらいよ・寅次郎真実一路」でもちょい役で出ていた。文化功労者の京大名誉教授、上山春平氏がパーキンソン病で死去。新京都学派と言われた哲学者であった。宝塚の大女優・春日野八千代が96歳で死去。名脇役・内藤武敏は86歳で死去。NHK金曜時代劇「清左衛門残実録」での、「鬼の喜兵衛」の風格ある老武士ぶりは忘れられない。

('12/08/31)