第5世代戦闘機F-35
- 青木謙知:「第5世代戦闘機F-35の凄さに迫る!〜垂直着陸、HMD、多用途性などF-22に次ぐステルス戦闘機の全容〜」、サイエンス・アイ新書、'11を読む。中国海軍に空母が配置された。中国の軍事力は日に日に日本にとって脅威になってくる。平和国家の国民だからこそ、兵備については怠りなく勉強しておくべきだと思っている。沖縄の米軍基地にV-22オスプレイが配備されることとなって、現地では一騒動になった。その写真はヘリコプターと固定翼型飛行機のアイノコ的構造を示していた。垂直離着陸、ホバーリング、低空飛行とヘリコプターには優れた能力があるが、何しろ速度が遅く飛行距離も短い。オスプレイはプロペラ方向を自由に変えられる固定翼輸送機で、ヘリの欠点を破った画期的な技術製品だという。戦闘機の話は面白い。超音速流体力学とか、ターボファンエンジン、電子光学装置など学んだことのない工学が出てくる。
- 副題に出ているF-22は数年前に実戦配置についたアメリカ最新鋭戦闘機だ。空対空戦闘能力に力点を置いたステルス戦闘機という。F-22は輸出を一切しない高級だが高価につく戦闘機であるのに対し、F-35は、共同開発(日本は入っていない)と輸出による国際規模の防衛力を念頭に開発された、空対地戦闘能力に重点のある戦闘機という。F-22は双発だが、F-35は単発だ。だからちょっとエンジン1個の大きさはF-22を上回る。エンジンの納入は2メーカーになっている。もっともトラブルが多い部品だからだろう、危険分散している。
- 開発最終段階の飛行試験機の最後のものはついこの間テスト飛行に入った。この戦闘機は経済性の追求で空軍、海兵隊、海軍のそれぞれの要求性能に、さらにイギリス空軍海軍のそれまでを加えた仕様を、基本母体を用途別に手を加えて改変するだけで創り上げようとする多目的型である。やっかいなのは海兵隊用で、垂直着陸とホバリングが必要だ。V-22とは逆に固定翼機からヘリへのアプローチを要求している。コクピット直後にリフトファンを付けその後ろに大きな空気取り入れ口を開閉させる。メインエンジンの排気管をそのときだけ下にひん曲げて、リフトファンと両方で揚力を得る。実際には主翼に抽出空気の吹き出し口があって、全体の揚力の10数%を受け持っている。リフトファンの駆動は同じエンジンだ。水平最大速度はマッハ1.6で、そう特別高速ではない。F-35は2.25という。空軍用は航続距離が2200kmを越す。
- 電子光学設備に長足の進歩が見られる。コックピットのパネルやスイッチは最先端のテレビやスマートフォンの画面と操作法を、さらに進歩させたような仕組みらしい。表示はニーズ次第、お好みに応じて配置も大きさも種類も自在に選択でき、操縦も戦闘もタッチパネル式にやれる部分がかなり多いらしい。伝統の操縦桿とスロットル・レバーはついているが、零戦時代のように急旋回には空力の大変な力がもろに腕に掛かるような品物でなく、あとは自動制御システムにお任せで、いわばゲーム機感覚で戦闘機を動かせる。レーダーや赤外線センサーから得られる情報は、センサー融合で中央のコンピューターが総合判断してくれる。自機のデータだけではなく、編隊の他機のデータも取り入れられるし、哨戒機や衛星のデータ、部隊本部からの地上海上の情報も取り入れられるらしい。敵味方の判別が出来、後方からの敵に前向きのミサイルを発射すると、ミサイルは方向転換して後ろの敵に立ち向かう。
- ヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD)がなくなり、ヘルメット装着式表示装置になったとある。実物を見たことはないから想像だが、頭に固定されたヘルメット前方に仮想のスクリーンを置き、ただし、HPで使う透過GIFのように、透明にして窓の外がそのまま見えるようになったものらしい。スクリーンには必要データが映し出される。戦闘中にいちいち固定パネルを振り返らず、頸を曲げて敵影を裸眼で見ながら、操縦できるというもののようだ。
- ステルス性維持のために兵器倉に武器を隠す構造にしてある。その必要がないときは主翼や胴体に外装する。空対空、空対地、空対艦などのミサイル、爆弾各種。悪名高きクラスター爆弾もある。短距離型から長距離型までいろいろ。F-35の航続距離の半分ほどもある飛行をするミサイルもある。発射されたときに設定を受け、あるいは発射されてから当分誘導されながら、接近すると自前のセンサーとコンピュータで索敵追尾爆破するという高級兵器揃いだそうだ。センサーにはミリ波レーダー、画像赤外線カメラ、セミアクティブ・レーザーが3点セットになっている。精密誘導爆弾だって、推進エンジンがないだけで高々度から発射されると、滑空しつつ100km先の目標にまで到達するという。かっての真珠湾攻撃では9軍神の特殊潜行艇はハワイ近くまでを親潜水艦で運ばれ、そこからは自らの判断で目標艦に近づき攻撃した。「軍神」の代わりを電子光学機器が行う。爆薬の進歩もめざましくそれを複合的に用いる。2.5m厚のトーチカかて貫通されて吹っ飛ぶ。わざと方向違いに進行させ、敵が油断していると、ぐるっと曲がって真っ正面にやってくるといった芸当もお茶の子らしい。そんなときはGPSや慣性航法装置(INS)が誘導に活躍する。
- F-35は開発実証段階から自由主義圏諸国の支持を受けてきた。イスラエル、トルコが含まれている。我が国も検討中となっている。ライバル機には、英独伊スペイン共同開発のユーロファイター・タイフーンや仏独自のダッソーラファール、スエーデン独自のサーブJAS39グリペンがある。ロシアにはMIG、スホーイ。後者にはマレーシア、ベトナム、アルジェリアに輸出された機種がある。注目の中国国産戦闘機は成都という名の3機種が紹介されているが、機密のベールに包まれた部分が多くて、細部にわたる比較検討はできないようだ。パキスタンに輸出されたものがある。
('11/08/13)