七月の摘要

タイ総選挙で、タクシン元首相の妹インラック氏のタイ貢献党が過半数を制した。政権交代でタイ初めての女性首相が誕生する。
7/9南スーダンが独立した。スーダン内戦で150−200万人の死者を出した末であった。北スーダンがアラブ系イスラム教徒が支配するのに対し、南はアフリカ系キリスト教徒が支配的である。
7/13アフガンからの米軍撤収が始まった。首都カブールの高級ホテル占拠、大統領弟の暗殺などタリバンは勢力の誇示行動を行っている。
ノルウェー首都オスロ官邸街で爆弾テロ発生。そののち保養地で自動小銃乱射により計死者90名。極右国粋主義者の単独犯行らしい。移民におおらかな国柄だが、人口の11%を占めるに及び、だんだん国民の目が厳しくなってきた背景があるようだ。
7/4の新聞によると、菅内閣支持率がさらに低下した。読売では24%、毎日では19%になった。
政府・与党は「税と社会保障の一体改革案」の財源処置として、'10年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げることを決定した。党の意向から「経済好転」条件が付され、又当初の'15年度までの時間設定も曖昧にされた。マスメディアは消費税増税止むなしの民論を伝えているのに、いまだに党内の消費税アレルギーは財政改善の目を曇らせている。
電力制限令第1日目の東電最大需要は4170kw/5560kw=75%で、最高気温が30日より0.3℃高い33.9℃であったのにも関わらず、4.8%下回った。優れて理解力の高い国民性を如実に物語る。新聞に国民一流、政治家三流と出た。国民はねじれ国会を選んだ。ねじれ国会では誰が政権を担当しても反対勢力との調整のために遅々としてしか歩めないだろう。新聞屋が望むリーダーシップなんて絵に描いた餅だ。三流呼ばわりは国民を罵倒する言葉である。
7/3の毎日に先進諸国における発送電分離事情を要約してあった。年間停電時間が日本の14分に対し、アメリカは417分という。欧米では年数10回の停電はザラだが、日本では1桁とも書かれていた。停電頻発のリスクを負いながら、反大企業の電力を指向するか。停電頻発は産業維持に悪影響必至である。ドイツの年間停電時間は17分と日本に次いで少ないが、kwhあたりの家庭用電気代金は日本の23セントに対し30セントと高い。ただし産業用は安く抑えている。自然エネルギー転換に伴うコスト増加は家庭で受け持ち、産業への悪影響は回避しているとも云えよう。原発事故では「安全神話」が崩れたとマスメディアは騒いだ。技術の成果を何のリスクもなく享受できると思っていたとしたら驚くべき脳天気ぶりだ。発送電分離についても予めメリット/デメリットのバランスをよく見極めなければならない。
7/2福島第1原発で循環冷却への完全移行が行われ、汚染水増加が食い止められることになった。事故原発処分の第1ハードルがクリアできたと言える。フランス原子力大手アレバ社のGE批判冊子「フクシマ・ノート」が米国関係機関に出回った。7/4の毎日は事故を契機とするフランスの官民挙げての原発商戦ぶりをレビューした。「事故=廃止」などと云う単純な構図の頭の持ち主ばかりでは、生き馬の目を抜く世界の競争の中で、日本は生きて行けない。毎日の世論調査では廃止が半分を超えた。7/19政府と東電は福島第一原発事故収束工程表のステップ1がほぼ予定通り達成できたとし、「1月冷温停止」のステップ2に移行すると発表した。新聞には一行も出てこないが、放射能危険の中での現地技術者・労働者の奮闘に感謝せねばならない。
7/6政府は原発に関し、欧州連合(EU)加盟国が6月から実施している安全裕度の評価(ストレステスト)を、国内の54基すべてで実施すると発表した。玄海原発の再開については地元とのコンセンサスが成立したばかりだが、自治体首長は一斉に反発し、これまでまとめに尽力していた海江田経産相は首相とのすれ違いに対し辞任をにおわせた。この新方針で再開はさらに遅れる模様。
玄海原発再開に関する公聴会で推進側の九電が系列内に賛成メールを指導したとして、マスメディアが騒ぎ立て、政府に社長が謝罪した。社長は辞任する模様。その後佐賀知事の「経済界の声を」という発言がきっかけだと判った。反対側も表には出ていないが呼びかけあって反対メールを出していることだろうし、賛成側が動員をかけて何が悪いのだろう。動員されても最後は自分の意志で送るメールだ。マスメディアの議論は、メールを送った人間を、意志のない操りロボットとして扱っている。メール数で再開が決まるわけではない。マスメディアの事件あれかしの尊大さが鼻につく。
7/14の朝刊は菅首相の「脱原発」表明を伝えた(2日後「脱原発は私的な見解」と訂正した)。企業の協力と市民の節電が可能にすると云う。企業の協力とは自家発拠出を云うらしいが、余熱廃熱利用発電はプロセスに組み込まれているし、あるとすれば保安用だが、万一停電対策の電力を供出させられては安全操業に差し支える。それに常時発電用ではないから、その準備例えば予備機増強、取り替え部品準備増強、常時運転要員確保、重軽油手配、重軽油タンクの準備など発電所の形を整えるところから始めねばなるまい。「埋蔵電力」ではない。市民の節電は今でも熱中症を出すほどに協力しているのに、それを常態にしようという発言は非常識だ。
7/26の毎日に、電力会社の揚水発電量が内輪に見積もりすぎではないかと、首相が納得していないという記事が出た。揚水発電は発電エネルギー効率を3割ほど悪くする反環境設備である。脱原発の辻褄合わせに、苦闘中の電力会社をさらにいびっているように見える。
原発中止は失業率2割への道である。2割は経済左前のかの先進国並という意味だ。28日日本エネルギー研究所は全原発停止により'12年のGDPは最大20兆円のマイナスとなり、20万人の失業増加になるという試算を発表したと読売が伝えた。20兆円を超すという災害復旧費などどこからも出なくなるのを恐れる。
7/26の読売に、トルコが日本に与えた原発導入優先交渉権を月末に打ち切ると出た。事故で安全にいっそう強くなったはずの日本技術なのに、日本の政治のトップが及び腰だから、トルコも再考せざるを得なくなったのだろう。浅はかな考えを軽々しく口にすると、落ち目傾向をさらに加速する。
福島牛の出荷停止命令が出た。放射性セシウムが肉から検出されている。政府の指導にもかかわらず農家は屋外保管の稲わらを飼料にしていた。早速補償の問題が出ているが、消費者(主たる税金負担者)としては指導に従わなかった不注意分まで担う気持ちはない。この不注意肉牛が全国で1400頭に及ぶと21日の読売に出た。他県も次々に出荷停止になっている。
NHK TVニュース番組で被災地の支援自衛隊の撤退を映し出していた。今回災害でもっとも活躍した組織が自衛隊であることは国民すべてが承知している。現与党には旧社会党系の自衛隊設置反対派がいるが、いまだに過去の呪縛に囚われているのであろうか。それはさておき災害発生後4ヶ月を超すのに、いまだに2万何千人の国軍を支援に遺していることに疑問を感じる。いつ隙を突かれるか判らぬのに、国防の本務に支障を来しているではないか。支援内容に呆れる。食事の支度、その配布、風呂の準備など全く生活の一部で、まるで老人ホームの職員のような作業だ。材料に設備は支援された。なぜ自分でやれないのか。岩手県知事の支援終了に対する発言は曖昧模糊としていた。厳しい発言を自衛隊側から云って欲しそうであった。町村の支援継続の主張の理由に、自衛隊が犯罪抑止力になっている、大型浴場の世話を担って貰っているなど、まるで自治放棄に近い発言が続いた。被災民のかなりは古里復興をもう諦めているのではないかとさえ思えた。
7/16読売トップに脱原発検証1.として「再生エネ 現状は1%」「天気頼み 出力不安定」の記事だ出た。2面には「発電コストの把握不可欠」と題して、自然エネルギーのコスト高を数字で説明していた。データが古いが、おそらく現有発電所のコストは10円/kwhほどだろう。太陽光発電では50円に近い。風力は原発1基に対応する平地が山手線内部ほどの面積が必要で、既設の風力発電機は稼働率が至って悪いことを記載していた。地熱発電は唯一現実的だが、初期投資の高さと有望掘削候補地の大半が国立公園内という問題がある。
検証2.では日本企業誘致に力を入れる韓国の企業優遇策を伝えていた。電力料金は日本の半額だ。ドイツでは再生可能エネルギーによるコスト上昇分を、電力消費の特に大きな企業には上乗せしない方法をとっている。こんな世界競争の中で、15%の節電、自家発の供出など企業負担ばかりを言い立てる現政権は、日本の衰退をどのように食い止めるのか。検証3.では、鳩山前首相が世界に公約した対'90年の'20年温室ガス25%減が、原発増設が前提になっている点をついた。脱原発では逆に24%増となる。国際公約反故化の道を進むつもりか。それにしても2代にわたって日本は脳天気な首相を戴いたものだ。
7/25国会で2次補正予算が成立した。規模2兆円に及ぶ大震災・原発事故対策費である。財源の特例公債法案は見通し不明のままである。
福井県議会が核燃料税を可決した。県内14基の原発による5年間税収は600億円と算定される。今回停止中も課税されることになり、その分が300億円(内数)になる。原発立地により地元は産業、雇用とも潤っている。その上に、他県民(福井は北陸電力)から新たな電力消費税を取るような処置だ。18日、政府は関電管内の企業・家庭に節電を要請することを決めた。このままでは6%不足という。特に日本海側では、原発再稼働がさし当たって危険というわけではない。地震震源地地図上でも福井は安全である(本HP:「東日本大地震の予知」)。福井県民はどんな反応をするか。政府は、電力消費者の忍耐と負担だけではなく、福井県民に国難への協力を訴えるべきである。
平野達夫参議院議員(岩手)が復興・防災相に就任した。前復興相の松本氏は現地視察で暴言を吐き責任を取った。就任期間がわずか9日間だった。「暴言」はしかし現地の国民の援助に対する当然視、義務視への反発が覗いている。我々は何とか助けてやりたいと思っているが、それが当たり前だろと開き直られては鼻白む。3県知事の発言にはときおりそれを感じる。
台風6号が紀州南端をかすめて東方に去った。記録的な豪雨を各地に遺した。進行が遅く雨が降り続いたことが大きい。月末には新潟・福島に記録的な豪雨があり、信濃川、阿賀野川流域の堤防数カ所が決壊し、22万人弱に避難指令、避難勧告が出された。
ANA向けボーイング787が飛行場適合性調査のため初来日した。青木謙知:「ボーイング787はいかにつくられたか」、サイエンス・アイ新書、'09には、'07年初号機公開同年夏引き渡し開始予定とあるから、4年遅れだった。機体軽量化に日本の重工業3会社が参加したことで、我が国では有名になった。TV紹介では、省エネの結果、中型機ながら、羽田からアメリカ東部までを無給油で飛行できるとしていた。
中国高速鉄道に追突事故があり、200名からの死傷者を出した。直接の原因は落雷による制御設備(中国製)故障とされている。日本、ドイツ、カナダ、フランスなどから導入技術に自国開発という技術を組み合わせて、壮大なシステムを構築している。停止中の列車に後続列車が突っ込むなど、多重自動安全システムの日本の新幹線では起こり得ない。日本では開業以来47年間列車事故による死傷はない。東日本大震災でも安全装置は完璧に働いた。これに反して中国では列車事故が続発している。国家イベントに合わせた突貫工事と何よりも安全軽視が背景にある。噂の技術模倣が、その技術本来の精神をないがしろにし、技術改悪になっている心配もある。鉄道は1日半で運行を再開した。先頭列車運転制御部は粉砕され土中に埋められた。車両の制御機器と電子システムの検証は闇に葬られた。証拠隠滅とインターネットで騒がれている。中国政府は政府発表以外の情報を独自調査し報道することを禁じた。5日後首相が現地を訪れ原因解明、安全重視、遺族への補償を宣言した。
サッカー女子ワールドカップ・ドイツ大会で13日、日本はスウェーデンを3:1で下し、初の決勝進出を決めた。17日アメリカと2:2で引き分けたのち、PK戦を3:1で制し、初の優勝に輝いた。MVPと得点王を主将の沢穂希選手が取った。最終戦の最優秀選手にGKの海堀あゆみ選手が選ばれた。対戦相手は平均身長で10cmは上回る。体重差は10kgほどだったろう。肉弾戦に近いサッカーで、小柄軽量のハンディをはねのけたのであるから驚嘆に値する。19日の読売はこの優勝に対する各国マスメディアの反応を載せた。中国も絶賛したが、インタビュー記事には「日本人は嫌いだが」という枕詞が入ったままであったらしい。帰国後の選手紹介で、彼女らが経済的には全く恵まれぬ立場であることがわかり、問題になっている。日本帰国選手の16人中プロとして認められているのはわずか5名で、あとはアマ扱いという。中にはアルバイトとか臨時雇いで食いつなぐ選手もいるらしい。
W杯水泳北京大会で「水泳日本」はついに1個の金メダルも取れなかった。魁皇関が7/14通算1046勝の新記録を樹立した。1047勝まで記録を伸ばし、10日目に引退を発表した。それまでの記録は千代の富士の1045勝。
「日本沈没」を書いたSF作家・小松左京氏が死んだ。奇しくも東日本大震災と同じ3/11に日本列島の巨大地殻変動が発表されたことになっているという。俳優・原田芳雄が逝った。NHKテレビドラマ「茂七の事件簿 ふしぎ草紙」で、屋台のおやじになって客演した姿を記憶している。家族を犠牲にした硬骨の元武士の、蔭のある後ろ姿が印象的であった。名優だった。
(今月の写真)タイマツバナ

('11/08/01)