気象学入門

古川武彦、大木勇人:「気象学入門〜原理からわかる雲・雨・風・天気図〜」、講談社BLUE BACKS、'11を読む。だいぶ昔に光田寧編著:「気象のはなしT、U」、技報堂出版、'88を読んでいる。23年の間にどれほどの進歩があったのか、比較しながら読んでみたい。炭酸ガス増加による温暖化、太陽黒点減少と寒冷化、チリ南部のプジェウエ火山大噴火による火山灰の寒冷化助長などが、現在の大きな気象変化要因として取り沙汰されている。それらへの言及にも注意しよう。本書には参考文献もあるし索引も付いている。良心的な著作のようだ。だが参考文献には出版年が入れてない。理系人にしては不可思議な引用だ。「気象のはなし」は本書の参考文献になかった。
「気象のはなし」には次は専門書でとある。だから大学教養課程を履修した程度の人が対象らしい。本書の最初の章は「雲のしくみ」という題だが、ほぼ半分のページ数を気体の学習に当てている。「はじめに」を読むと、中学校の理科を身につけておればわかる程度に書いたとある。その分は孫に語るときの方法論と心得て読むこととする。地上で暖められてわき上がった空気の塊・サーマルは東京ドーム数個分の大きさで、上昇が止まった雲は周囲の空気との温度差や湿度差のためにどんどん消えてゆく、雲一つの寿命は数十分と短い。こんな知識は私には斬新だ。
長い間私は100m上空では0.4℃下がると信じてきた。高校地学の影響だったかな。でも本書によると断熱膨張だけだったら乾燥空気なら1℃、湿った空気では0.4-0.6℃とあり、現実には、平均して0.65℃下がるとある。この記事を読んだ方は1年後に私に何度下がるかと聞いて欲しい。たぶん0.4℃と云うだろう。老齢になると新しい記憶は長持ちしない。そう思うと残念である。観察したことはないが、積乱雲が上空に向かって伸びるのは11kmまでで、それ以上は水平に生長する。11kmが対流圏の限界だ。成層圏に入ると逆に上層ほど高温になる。理由はオゾンを主とする紫外線吸収で、上層ほど吸熱量が高くなる。中間圏ではオゾン量が低下して温度が下がりさらに上の熱圏では、窒素や酸素の分子あるいは原子の高エネルギー吸光スペクトル帯がものをいって、たいそう暑くなる。気象には対流圏以上は関係がないであろう。
雨粒の半径は1-2mm、霧だと0.1、雲ではせいぜい0.01。物質移動で考えると雲から雨が出来るまでに雲が消散してしまう。だからあり得ない。雲から雨を降らせるプロセスは簡単ではない。過冷却、過飽和、凝結核、氷晶核がキーワードである。夏でも高度3千mになると0℃だ。だが過冷却状態が9千mあたりまで続くので、雨雲の大半は上空でも気-固-液混相である。人工降雨で名高いヨウ化銀はイオン性も働くし、結晶の類似性も働く、くっつけた氷分子を離さない。大事なのはいったん出来た氷の微結晶が周囲の分子で壊されないことだ。黄砂や土壌粒子、あるいは海上の食塩粒子などはその条件に合っている。固液共存の時、過冷却水より氷の方が飽和蒸気圧が低いことは、氷晶の独占的成長に役立つ。氷晶は落下しながら、雲粒を雪だるま式に抱え込み、融ければ雨に、そのままでは雪となって地上に降り注ぐ。乱層雲では、乱流圏最上奥部に近い巻雲から氷晶が降ってきて、同様の過程を経て雨や雪が降り落ちる。
今は梅雨。TVに落雷位置が示される。平地ではしとしとと降っていても、山地では雷が鳴っていることが多い。そんなときは衛星放送は無力だ。画面が切れてしまう。衛星の電波が通らないのは、雷雲が強い電界を空一面に作っているからだ。この雲は成熟期にある。電界は上昇気流と下降気流の摩擦電気により生成する。水は良導体でも連続体を作る空気は不良導体だから、摩擦電気は雷が落ちるまでは空中に漂う。摩擦電気と書いたが実際は氷晶、あられの衝突による水素イオン、水酸化イオンの移動だとある。電圧は億V単位だと聞いたことがある。
平均的な地球エネルギー収支が図示されている。大気から地表への放射が太陽放射とトントンだ。大気放射の主役は水蒸気や雲だ。二酸化炭素が地球温暖化の元凶だと云っても、水分子の放射に正のフィードバックとなるお手伝いをするだけなのである。今年の夏至は6/22、過ぎたばかりだ。太陽放射と地球放射のピークのずれのために盛夏は8月にずれ込む。私の悩みは熱帯夜。乾燥地帯だったら昼夜の最大温度差が30℃にもなるというのに、我が国では5℃ほどにしかならない日が続く。湿度のせいだ。
コリオリの力を厳密に式表現しようとすると大変だ。私はたしか大学3回生の時の力学Tで教わった。地表座標は静止座標に対して円周運動をしながら自身も回転する。だから地表から見た運動は、北半球では常に運動方向に対して右直角方向に力が働くように見える。お陰で台風も鳴門の渦潮も反時計回りだ。渦巻かぬ限り大洋には圧力の傾斜はない。黒潮が時計回りの理由を本HPの「海の何でも小事典」に載せている。運動流体にはコリオリの力以外に3つの力が働く。気圧傾度力、摩擦力、遠心力。摩擦力は流体を中心に引き込む力だ。中心に集まった風は行き場がないから上昇流となる。台風の目の壁雲だ。だが1000mも上空では摩擦力がないから風はただの旋回流だ。
地球規模の風を考えるときは、「気柱のセオリー」が有効だ。空気が暖められると、地上で気圧が下がり上空で気圧が上がる。「対流圏界面は暖かい赤道付近では高いが寒い極地では低い。気柱とは実質は対流圏内の空気である。」と考えれば理解できるセオリーである。もう一つ。地球規模の空気の移動には、角運動量保存の法則を念頭に置く必要がある。それだけ覚えると、偏西風とか貿易風、ジェット気流、亜熱帯高圧帯に赤道低圧帯それから寒帯前線など何とか飲み込める。
ちょっと記事が長くなりそうなので、以下は「気象学入門U」に示す。

('11/06/27)