五箇山定期観光バス
- 当日はあいにくの雨だった。JR富山駅北口、Portram駅の隣が観光バス停留所になっている。10時過ぎに行ったがゴルフ場行きのバスばかりで、聞いても要を得ない。あとで女子プロゴルフのコンペが行われていたと知った。ややあって2台来た。1台は私の五箇山定期観光バス、他はやはり定期の立山の室堂に向かうバス。五箇山行きにはそれでも5名が乗ったが、室堂行きには2名だった。五箇山行きは前日から始まったが、前日には予約が全くなく運休したと聞いた。
- 高速道は使わず庄川に沿って一般道を走る。市中からずっと渋滞など無く、関東からの私にはうらやましい環境だ。ガイドさんがいろいろ教えてくれる。農村は集落を作らず散居形式だという。家の周囲に防雪防風用の杉などが植わっている。庄川の管理は関西電力で、ダムの建設は早い時期から行われた。道路が完備するまでは舟運と細い山道の牛に頼る陸運しかなく、五箇山あたりは典型的な陸の孤島であった。冬の積雪は多い年では深さ4-5mにもなるとあとで知った。途中の大牧温泉は小牧ダム湖を船で往復するしかない場所なので、秘境という設定がしやすいためか、TVドラマの舞台によく出てくる。合掌造りの家屋は庄川一帯に広く分布していたが、ダムとともに急速に失われていった。予定通り五箇山相倉集落に正午に到着、1時間半の見学が始まった。
- 白川郷が50何軒か、相倉集落が20何軒かの合掌造り民家を保存している。白川郷には新規建造のレストランの進出などがあるが、相倉では環境の管理状態がよく、食事施設も合掌造りのままの2軒だけになっている。まずは腹ごしらえとほぼ集落中央のまつやに入った。歓迎国鉄観光休憩所という看板が出ている。山菜ざるそばを注文する。山菜で分かるものは蕗、竹の子、ゼンマイ、ワラビそれから豆腐になめ茸か何かのキノコぐらい。なかなかうまかった。でも貴重な30分を消費してしまい幾分焦る。民宿はかなりの数になる。瓦屋根に建て代わった家が集落の1/4ほどを占めているが、茅葺きの民家とよく調和している。相倉民俗館1号館2号館を観光客に解放している。白川郷の合掌民家は何所帯もが共同生活を送る大きな家屋という印象であったが、こちらのそれはどうも1家族用と思える小型家屋だ。受付で聞いてみたがよく分からない。
- 1号館の展示品では、晴れの行事に使うカンザシ、花嫁を飾るカンザシ、お歯黒壺、各種行燈、薬研などが興味を引いた。茅葺き共同作業体制維持に祭りや行事が活用される。2Fでは釘を使わぬ梁構造を見ることが出来た。4回脱皮する蚕の飼い方を蚕棚の横のパネルに説明してある、蚕糞は後述の塩硝土作りに利用される。木製歯車が付いた製糸機械など、明治以降の生計を支えた養蚕製糸業関連道具の展示もあった。
- 2号館には江戸期に盛んであった和紙と塩硝の生産に関する展示が主だった。どちらも藩御用達の品で年貢米に相当していた。和紙漉き道具と和紙加工品。矢筒とか草履、それに紙子羽織に帯は珍しかった。塩硝は硝酸カリを指すらしい。金沢大の先生の論文にPotassium Nitrateと出ている。塩硝土作りは堆肥作りにそっくりである。糞から送り込まれた腐敗菌が繁殖して不要な有機成分を浄化し、塩硝土を硝化バクテリアの活動に好適な温度に保つ。硝化バクテリアは有機物質中の窒素分を硝酸根にしてくれる。硝酸根濃度が高くなったところで、水抽出し、再結晶を繰り返せば純度の高い塩硝になる。五箇山産は江戸期には高品質で有名だったという。とはいえ現代の化学薬品に比べれば不純物が多いようで、見本は薄黒かった。加賀藩はこれを黒色火薬原料として用いている。畑作地帯のため雑穀が主食で、米は冠婚葬祭のときにのみ食べる貴重品であった。病人運搬用の背板があった。運ぶ方も運ばれる方もたいそう辛かったであろう。民俗館の生活用品は破損が少なく、昨日まで実際に使われていたかのように思える品が多かった。
- 空き地や庭の隅に咲く草花の中にトラノオ、ハンゲショウ、ノコギリソウなどを見かけた。前2者は今までに野に咲く状態で見たことはないし、ノコギリソウは釧路、利尻島で見て以来である(本HP「盛夏の釧路」「夏の利尻島」)。樹木では車窓からだがネムノキの桃色の花が目に付いた。またオニグルミらしい木をあちこちで見た。富山のお土産にクルミを包んだ羽二重餅を選んだ理由になった。
- 次は井波彫刻総合会館。30分足らずで到着。井波彫刻は瑞泉寺建立あるいは再建に携わった京都の仏師の流れをくむ。瑞泉寺は、本願寺上人の直系を代々の住持とした由緒ある大寺である。私は寡聞にして双方の存在を知らなかった。欄間の彫刻品とか神仏像を中心とした木刻が並ぶ。たまには抽象的作品も見られる。彫刻師が一人実演している。駐車場から会館入り口までの道の両側には大型作品が並ぶ。竜、風神、お雛様。庭にもずらっと作品がある。いずれも木刻だ。なかなか壮観であった。駐車場付近には彫刻師が実演しながら製品を売っている。神棚や仏壇のようなものもあった。価格は旅行の途中に買えるような値ではない。予定通り16時頃に富山駅北口に到着し解散した。
('10/07/10)